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伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

睡眠障害の概要

睡眠障害とは睡眠に問題が起きる病気の総称です。日中の眠気や不眠が1ヶ月以上続くときは、何らかの睡眠障害をきたしている可能性があるでしょう。

睡眠障害による休養不足は、心身に悪影響をもたらします。不眠や短時間睡眠が続くと、日中の強い眠気や注意力の低下などを引き起こし、仕事上のミスや居眠り運転などにつながる危険性があります。睡眠障害の種類は多岐にわたるため、適切な診断と治療が大切です。

睡眠障害の原因

睡眠障害をきたす代表的な病気について解説します。

不眠症

不眠症は、入眠障害(寝つきが悪い)、中途覚醒(眠りが浅く途中で目が覚める)などによって、倦怠感や集中力の低下などの不調が現れる症状です。不眠症の主な原因は、ストレス・こころや身体の病気・薬の副作用です。

不眠症は、うつ病や不安症などの症状として現れることが多く、精神疾患の悪化を防ぐためにも、早期の受診が重要です。

閉塞性睡眠時無呼吸

閉塞性睡眠時無呼吸の主な原因は、加齢による気道の筋力低下や肥満です。

閉塞性睡眠時無呼吸は、睡眠中に空気の通り道(気道)が何らかの理由で狭まり、呼吸がしにくくなったり、一時停止したりする病気です。夜間に呼吸の異常が出ることで深い睡眠が減ってしまい、日中の眠気や不眠などの症状が出現します。

睡眠関連運動障害

睡眠関連運動障害には、むずむず脚症候群や周期性四肢運動障害があります。いずれの疾患も、鉄不足によってドパミンが作られにくくなり、発症すると考えられています。

むずむず脚症候群は、安静時に手足の「むずむず」や「ざわざわ」などの不快感があり、手足を無意識に動かしてしまう状態です。眠気は感じているものの、手足の動きが気になって寝付けなくなる可能性があります。

周期性四肢運動障害は、手足の筋肉がピクつきを繰り返し、睡眠中に目が覚めてしまい、深い眠りが妨げられます。

過眠症

過眠症は、夜に十分に睡眠をとっているのに、日中に強い眠気が現れる病気です。過眠症は、ナルコレプシーや特発性過眠症などに分けられます。

ナルコレプシーの原因は、目を覚ます働きがあるタンパク質を、身体が作り出せなくなることです。また、特発性過眠症は、日中に原因不明の過度な眠気が起こっている状態です。

概日リズム睡眠覚醒障害

概日リズム睡眠覚醒障害は、寝起きのタイミングが社会生活とずれて、日中に強い眠気や倦怠感などが起こるものです。寝起きのタイミングがずれる原因は、次のとおりです。

  • 極端な早寝早起き
  • 極端な遅寝遅起き
  • 日勤や夜勤の交代勤務
  • 海外旅行による時差など

日中の眠気や集中力の低下によって、仕事や学業などの生活面に支障が出る可能性もあります。

睡眠障害の前兆や初期症状について

睡眠障害の症状には、睡眠時間の短縮・睡眠休養感の低下・日中の眠気や居眠りがあります。

睡眠時間の短縮

十分な睡眠時間を確保しているにも関わらず、眠っている時間が以前より著しく短くなる状態です。
睡眠時間の短縮が起こる睡眠障害には、不眠症が挙げられます。不眠が続くと、眠れないことへの不安や緊張が強くなり、ベッドで悶々とする時間が増えて苦痛を感じます。

睡眠休養感の低下

朝目覚めたときの休まった感覚が低い状態です。中途覚醒の増加や睡眠時間の短縮が原因で、十分な休養がとれていない可能性があります。睡眠休養感の低下が起こる睡眠障害は、不眠症・閉塞性睡眠時無呼吸・むずむず脚症候群などです。

日中の眠気や居眠りを起こしやすい睡眠障害

閉塞性睡眠時無呼吸や過眠症などがあります。日中に睡眠障害で起きる眠気は、慢性的に持続するケースが多い傾向です。一方、重症の閉塞性睡眠時無呼吸では、突然の居眠りが発生する例もあります。
睡眠障害の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、精神科、神経内科です。睡眠障害は精神的および身体的要因が関与するため、精神科や神経内科での診察が必要です。

睡眠障害の検査・診断

睡眠障害は、問診と睡眠の状態を観察する検査によって診断されます。問診は、心身の病気・服用している薬・生活習慣などを聞き取ります。

簡易ポリグラフ検査

睡眠時無呼吸症候群が疑われるときに実施する検査です。患者さんの自宅で、呼吸の状態と血液中の酸素濃度を測定します。

ホルターSpO2

腕時計型の記録装置で、動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定する検査です。睡眠時無呼吸症候群といった病気が原因で、身体に酸素を取り込む力が落ちていないかを調べます。

睡眠ポリグラフ検査(PSG)

入院して睡眠の状態を調べる検査です。呼吸状態や血液中の酸素濃度に加えて、筋電図や脳波なども測定し、無呼吸の状態や睡眠の質を調べます。睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害などの評価が目的です。

反復睡眠潜時測定検査(MSLT)

入院して昼間の眠気を評価する検査です。MSLTは主に過眠症の検査として使われ、日中に時間を決めて20分程度眠って、眠るまでの早さを記録し、眠気の強さを判定します。

それぞれの検査は、患者さんの症状に応じて選択されます。

睡眠障害の治療

治療法は睡眠障害の種類によって異なります。

不眠症は、うつ病や不安障害などの病気があれば、優先して治療をします。睡眠を促す生活習慣や睡眠環境を整えても不眠が改善しないときは、睡眠薬による薬物療法が適応です。抗うつ薬や精神安定剤なども、不眠の治療に使われる可能性があります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療

ダイエットや飲酒制限などの生活習慣改善や、睡眠薬の減薬や中止などです。重症度に応じて、マウスピース治療や持続陽圧呼吸療法(CPAP)が検討されます。CPAPは、マスクを装着して持続的に空気圧をかけ、気道の閉塞を和らげる治療法です。

過眠症

眠気を覚ます作用がある精神刺激薬を使った治療法があります。精神刺激薬の依存性の観点から、処方できる病院や医師は限られているのが現状です。

概日リズム睡眠障害は、規則正しい生活で睡眠と覚醒のリズムを整えます。治療効果が不十分なときは、光療法が検討されます。

医師と相談し、睡眠障害の症状に合った、適切な治療法を選びましょう。

睡眠障害になりやすい人・予防の方法

睡眠障害になりやすい人は、次のとおりです。

  • 太陽の光を浴びる習慣がない
  • スマートフォンやパソコンなどの電子機器を使い過ぎている
  • 運動をしていない
  • 朝食を欠食している
  • 夜食を摂っている
  • 嗜好品(カフェイン、アルコール、タバコ)の習慣がある

睡眠障害を予防するためには、生活習慣の改善が大切です。

日中に日光を浴びるようにすると、体内時計が調節されて入眠しやすくなります。寝室にはタブレット端末やスマートフォンを持ち込まず、照明を暗くして寝ると、よい睡眠につながるでしょう。また、就寝1~2時間前に入浴して身体を温めると、寝つきがよくなります。

適度な運動は、入眠が促進されたり、中途覚醒が起こりにくくなったりする点がメリットです。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、深い睡眠や睡眠時間を増やし、睡眠休養感を高めます。ダンベルを用いるような筋肉トレーニングも、睡眠の改善に効果があると考えられています。

朝食の欠食は体内時計を乱すため、しっかり摂るようにしましょう。就寝前の夜食や間食は体内時計に影響し、睡眠の質を低下させるため、控えるようにします。

カフェインの摂取量が1日400mg(コーヒー700cc程度)以上になると、夜眠りにくくなる可能性があります。カフェインの総摂取量を減らし、夕方以降はカフェインが含まれるコーヒーやお茶などは、控えるとよいでしょう。

アルコールは、中途覚醒を増やして眠りの質を下げるため、晩酌は控えめにして寝酒はしないようにします。タバコに含まれるニコチンは覚醒作用があるため、禁煙が推奨されます。

適切な睡眠環境や生活習慣をとり入れ、睡眠障害を予防しましょう。

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