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統合失調症
大迫 鑑顕

監修医師
大迫 鑑顕(医師)

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千葉大学医学部卒業 。千葉大学医学部附属病院精神神経科、袖ヶ浦さつき台病院心療内科・精神科、総合病院国保旭中央病院神経精神科、国際医療福祉大学医学部精神医学教室、成田病院精神科助教、千葉大学大学院医学研究院精神医学教室特任助教(兼任)、Bellvitge University Hospital(Barcelona, Spain)。主な研究領域は 精神医学(摂食障害、せん妄)。

統合失調症の概要

統合失調症(とうごうしっちょうしょう)は、現実とのつながりが失われる精神疾患で、幻覚や妄想、現実離れした思考や行動、感情表現の減少、意欲の低下などの症状が現れます。この病気は、性別により前後しますが、10代後半から30代にかけて発症することが多く、100人に1人がかかるとされています。統合失調症は、適切な治療を受けることで症状をコントロールし、日常生活を送ることが可能です。

統合失調症の原因

統合失調症の正確な原因はまだ解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。

遺伝的要因

統合失調症の発症の要因の一つとして、遺伝的な要因が関与していると考えられていますが、決定的なことは判明しておりません。

環境的要因

ストレスやトラウマ、社会的孤立、家庭内の問題などの環境要因が統合失調症の発症に影響を与えることがあります。特に、幼少期の虐待や親との離別、大きな生活の変化などがリスク要因となる可能性があります。

生物学的要因

脳内の神経伝達物質、特にドーパミンの調節障害が統合失調症の症状に関与していると考えられています。ドーパミンの調節障害が様々な統合失調症の症状に関与していると考えられています。

統合失調症の前兆や初期症状について

統合失調症の初期症状としては、以下のようなものが挙げられます。

幻覚
現実には存在しない声が聞こえる(幻聴)などの症状が現れます。これにより、患者さんは現実と非現実の区別がつきにくくなることがあります。
妄想
現実にはあり得ないことを信じ込んでしまう(被害妄想、誇大妄想など)症状が見られます。例えば、病状によって、自分が監視されている、特別な力を持っていると信じてしまうことがあります。
支離滅裂な思考や発言
話の内容がまとまらず、論理的な会話ができなくなることがあります。これにより、他人とのコミュニケーションが困難になります。
現実離れした行動
奇妙な行動や場面に不適切な言動が見られることがあります。例えば、突然大声を出す、意味のない動きを繰り返すなどです。
感情表現の減少
感情が乏しくなり、喜怒哀楽の表現が少なくなります。
意欲の低下
日常生活に対する興味や関心が失われてしまいます。これにより、仕事や学業、家庭生活に支障をきたすことがあります。

統合失調症の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、精神科です。統合失調症は精神科領域のな疾患であり、精神科で診断と治療が行われています。

統合失調症の検査・診断

統合失調症の診断は、主に患者さんの症状と病歴に基づいて行われます。具体的な検査としては、以下のものがあります。

診断基準

精神科臨床では、一般的にDSM-5(アメリカ精神医学会)やICD-10(世界保健機関(WHO))などの診断基準を用いて、診察、診断を行いますが、ここではDSM-5に示されている診断基準を紹介します。以下の特徴的な症状のうち2つ以上が6カ月以上続いている場合、統合失調症と診断されます。

  • 妄想
  • 幻覚
  • 支離滅裂な発言
  • 支離滅裂な行動
  • 陰性症状(感情表現の減少、意欲の低下など)

これらの症状が仕事、学業、または社会的な機能に著しく悪影響を与えていることが条件となります。

臨床検査

統合失調症の診断には、ほかの病気を除外するための臨床検査が行われます。これには、以下の検査が含まれます。

血液検査
内科的な疾患や物質使用障害等を除外するために行います。
画像検査
CTやMRIを用いて脳の器質的な異常の有無を確認します。これにより、様々な脳神経系の疾患の可能性を除外します。
心理検査
患者さんの認知機能や精神状態を評価するために行います。これにより、統合失調症の症状の重症度や生活への影響の程度を把握します。

統合失調症の治療

統合失調症の治療は、主に以下の方法で行われます。

薬物療法

薬物療法は、統合失調症の治療の中心となっています。主に以下の薬剤が使用されます。

抗精神病薬
統合失調症治療で中心的に使用される薬剤です。ドーパミンの分泌を調節し、様々な統合失調症の症状の改善を目指します。抗精神病薬は、主に定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の2種類がありますが、近年は比較的副作用の少ない非定型抗精神病薬が主に使用されています。

その他にも、病状に応じて以下のような薬剤が併用されることもあります。

抗不安薬、抗うつ薬、気分安定薬
強い不安感や緊張感、また、憂うつな気分やハイテンションなのの気分の波を和らげるために使用されます。
睡眠薬
睡眠のリズムを調整し、よく眠れるようにするために使用されます。

精神科リハビリテーション

精神科リハビリテーションは、患者さんが社会生活を取り戻すための支援を行います。これには、以下の方法が含まれます。

心理社会療法
カウンセリングやグループセラピーを通じて、患者さんのストレス対処能力を高めます。
生活技能訓練
日常生活に必要なスキルを学び、社会復帰を目指します。
職業リハビリテーション
就労支援を行い、職場での適応をサポートします。

休養と環境調整

統合失調症の治療には、十分な休養と環境調整が重要です。急性期には特に休息が必要であり、病状が重い場合は入院治療が必要になることもあります。家族や周囲の人々が協力して、治療に専念できる環境を整えることが大切です。

統合失調症になりやすい人・予防の方法

統合失調症になりやすい人の特徴

統合失調症になりやすい人には、以下のような特徴があります。

  • 遺伝的要因
  • 性格傾向:内向的で感受性が高く、ストレスに対する耐性が低い人が統合失調症になりやすい傾向があります。
  • 環境要因:幼少期の虐待や親との離別、大きな生活の変化などがリスク要因となります。

予防の方法

統合失調症の予防には、以下の方法が有効です。

ストレス管理
リラクゼーション技法や趣味を通じてストレスを軽減することが重要です。これにより、日常のストレスに対する耐性が高まり、統合失調症のリスクが減少します。
健康的な生活習慣
規則正しい生活、適度な運動、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。これにより、身体の健康が保たれ、精神的な安定が得られます。
早期の医療介入
不安やストレスを感じたら、早めに専門家に相談することが重要です。早期の診断と治療が統合失調症の予防と管理に効果的です。
心理教育
統合失調症についての正しい知識を持ち、症状や対処法を理解することが予防につながります。家族や周囲の人々も含めて、病気についての理解を深めることが大切です。

統合失調症は適切な治療と予防策を講じることで、症状をコントロールし、日常生活を取り戻すことが可能です。早期の診断と治療が重要ですので、症状に気づいたら専門家に相談することをおすすめします。

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