前立腺結石

監修医師：
前田 広太郎（医師）

前立腺結石の概要

前立腺結石は、前立腺に小さな石ができる病気です。前立腺肥大症の患者に対して経直腸的超音波検査が広く使用されるようになったことで、発見頻度は増加しています。前立腺結石の発生頻度、形成機序、良性・悪性前立腺疾患との関連性、臨床的意義については依然として不明な点が多いです。ほとんどが無症状で、超音波検査により偶発的に発見されることが多いですが、慢性前立腺炎に伴う前立腺結石では、慢性骨盤痛や排尿障害を引き起こすことも報告されています。前立腺結石が発見されても通常治療は不要ですが、排尿困難や慢性疼痛、感染などを引き起こす場合には、経尿道的内視鏡治療により除去する場合もあります。

前立腺結石の原因

前立腺結石は、原発性（内因性）結石と続発性（外因性）結石に分類されます。一般的には、前立腺結石とは原発性結石のことを示すことが多いです。前立腺結石は複数の小さな結石（0.5～5mm）であり、加齢に伴い増加し、主に50歳以上で発生します。前立腺結石の発生機序に関しては諸説あります。前立腺分泌物やアミロイド小体、前立腺の炎症が分泌管を閉塞させ、それにより前立腺からの分泌物が濃縮し、石灰化して結石が形成されるという説や、前立腺肥大が慢性的な前立腺炎を引き起こし結石形成を起こすといった説がありますが、はっきりとした原因はわかっていません。内因性の前立腺結石は、前立腺後葉の前方や側葉の大きな導管や腺房に存在します。導管内の結石は大きく、腺房内の結石は小さいのが特徴です。外因性前立腺結石は、膀胱結石や尿道結石が前立腺の中に嵌入するもので、尿の前立腺内への逆流によって形成されると考えられ、一般的にやや大きい傾向があります。神経因性膀胱や慢性尿路感染症に続発することが多いとされますが、正確な発生機序はわかっていません。前立腺結石の成分は多くがリン酸カルシウムで、続いて炭酸リン酸カルシウムが多い組成とされます。

前立腺結石の前兆や初期症状について

前立腺結石はそれ自体は多くの場合無症状です。前立腺肥大や慢性前立腺炎による前立腺結石は頻尿や残尿感といった下部尿路症状と関連する可能性があります。前立腺移行帯の尿道周囲領域に結石があると、下部尿路症状が悪化する可能性があり、巨大な前立腺結石によって尿閉を来した症例も報告されています。

前立腺結石の検査・診断

前立腺結石は主に、下部尿路症状の診断過程で、腹部超音波検査や経直腸的超音波検査によって発見されます。X線やCT検査で偶発的に前立腺結石が見つかることがあります。多くの場合、前立腺結石の発見自体が検査の目的ではないため、たとえ診断されたとしてもそれらは臨床的に意味を持たないことがほとんどです。

前立腺結石の治療

前立腺結石は正常な老化過程の一部であり、臨床的意義はほとんどないとされ基本的に治療を行いません。尿道内に突出した大きな前立腺結石が、尿閉などの重度の下部尿路症状を引き起こした場合、経尿道的内視鏡を用いて前立腺結石を摘出することもあります。慢性前立腺炎などの炎症性疾患が前立腺結石と併存する場合、抗菌薬治療と前立腺炎の治療を並行することで症状が改善する可能性があります。前立腺結石は持続的な炎症の原因となり、感染菌が定着する部位となるだけでなく、前立腺の分泌管を閉塞させ、抗菌薬などの治療に対する抵抗性を引き起こす原因となります。慢性細菌性前立腺炎患者64名に対する抗菌薬治療の効果を検討した報告では、結石のない患者では治癒率が63.6%、結石のある患者では35.7%であり、前立腺結石があると抗菌薬治療が効きにくいとされます。抗菌薬治療抵抗性の場合には手術により前立腺結石の除去を検討します。慢性骨盤痛症候群の患者における前立腺結石が炎症、細菌定着、および症状の持続と関連していることもあります。

前立腺結石になりやすい人・予防の方法

正確な頻度については不明で、有病率は7.4%〜40.7％と報告により差があります。前立腺肥大症患者の7割に前立腺結石を認めるとされ、前立腺肥大症や前立腺炎の患者では正常な前立腺を有する人よりも有病率が高いとされます。予防の方法は確立されていません。