

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
尖圭コンジローマの概要
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス・HPV)に性行為およびそれに近い行為で感染し発症する感染症です。世界中に分布している感染症で、性行為をしたことがある方は誰でも感染する可能性があります。
尖圭コンジローマは、感染症法の5類定点把握対象疾患です。感染者がでた場合、地方自治体が定めた性感染症定点医療機関の医師により感染症法に基づいて届け出が必要です。
ヒトパピローマウイルスは80種類以上あります。そのなかでも6型・11型などの低リスク型や16型・18型・31型などの高リスク型などが尖圭コンジローマの原因ウイルスとなります。高リスク型は、悪性に移行する可能性があるとされているので注意しながら経過観察することが必要です。
ヒトパピローマウイルスの感染により生殖器やその周辺などにイボ状の小腫瘍(イボ)ができますが、感染したことに気付きにくい疾患です。放置するとイボが大きくなったり範囲が広がったりするので、早めに医療機関での受診をおすすめします。
尖圭コンジローマの原因
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス6型・11型などのウイルス感染が原因の疾患です。ヒトパピローマウイルスは、主に性行為やそれに近い行為で皮膚や粘膜表面の小さな傷口から感染します。
しかし、性行為やそれに近い行為に覚えがないのに感染する場合もあります。例えば稀に両親や医療従事者の手指からお子さんに感染する場合などです。また、妊娠中に感染していた場合は、分娩時に産道を通ることでお子さんに感染してしまう場合もあります。
さらに、性行為の形態がアナルセックスやオーラルセックスなど多様化しており、生殖器やその周辺以外の肛門内・肛門周辺・口内・咽頭などにイボができる場合もあります。口内にできた場合、口内炎と勘違いされる方もいますが口内炎と違い、痛みやかゆみはありません。
尖圭コンジローマの前兆や初期症状について
尖圭コンジローマの症状は感染後、数週間から3ヶ月そして長い場合は8ヶ月の潜伏期間を経て発症します。症状としては、淡紅色や褐色の先の尖った隆起性のイボが特徴で、乳頭状・鶏冠状・カリフラワー状と表現されるイボが発症します。この特徴的なイボを見つけることが早期発見のポイントです。
イボの発症部位として男性の場合は陰茎亀頭・冠状溝・包皮など、女性の場合は代償陰唇・膣前庭・子宮膣部などの性器周辺などに症状がでるのが一般的です。また、男女問わず肛門内や肛門周辺・尿道口・口内・咽頭にできる場合もあります。
初期は、自覚症状が少なく感染に気付かずにイボ状が徐々に大きくなり、違和感・帯下の増量・かゆみ・痛み・出血などの症状がでることもあるでしょう。また、似たようなイボができる別の疾患の場合もあります。
異変に気付いても生殖器およびその周辺の疾患に関して、医療機関で受診することに抵抗・ストレスを感じる方もいます。尖圭コンジローマのイボは、小腫瘍で良性の場合が少なくないです。例えば女性の場合、子宮頚部に感染し子宮頸癌の要因になる可能性もあると考えられています。
異変に気付いたら一人で悩んだり、ご自分で判断したりせず男性は泌尿器科や皮膚科へ、女性は婦人科で早めに受診してください。
尖圭コンジローマの検査・診断
尖圭コンジローマは、乳頭状・鶏冠状・カリフラワー状のように特徴的なイボのため一般的には問診と視診で診断します。問診では、ウイルス性性行為感染症のため性行為を行った人数などさまざまな性的嗜好などを聞かれる場合があります。回答に抵抗感を持たれる方もいますが、診断を行ううえで必要な事項です。
また、悪性病変でないかの確認が必要な場合は、病巣範囲を確定するためにPCR検査を行う場合もあります。PCR検査によりヒトパピローマウイルスのDNAを調べた結果、低リスク型の6型・11型であれば悪性化する可能性は低いです。高リスク型の16型・18型・31型であれば悪性化する可能性が高いので医師の指示のもと経過観察に注意が必要です。
また女性の場合は、コルポスコピー検査で子宮頸部・膣・外陰部を酢酸溶液で処理をし、コルポスコピーで観察して形態的に似ている子宮頸癌でないかを組織学的に確定診断します。
尖圭コンジローマ自体は、良性の小腫瘍なので気付かないまま自然治癒する場合もあります。そのため、軽く考えてしまう方もいますが悪性へ移行する場合もありますので医療機関でしっかり検査・診断を受けてください。
尖圭コンジローマの治療
尖圭コンジローマの治療法は大きく分けて外科的治療法と薬物療法の2つです。どちらの治療法でもイボが消失してから3ヶ月程度は、再発しないか経過観察が必要です。また、医療機関によっては外科的治療を行っていないなど治療方法の選択肢が変わりますので、治療方法の希望がある方は確認をしてから受診してください。
外科的治療法
イボの大きさ・数・場所などで治療法を選択します。外科的治療法にはメスによる切除・電気メスによる焼灼法・液体窒素による凍結法・CO2レーザー蒸散法があります。イボをメスやレーザーで切除する方法は早く治療をしたい方には有効です。しかし、イボを切除してもウイルスが体内に残るので経過観察が必要です。凍結法は、大きさなどにより1回から複数回行う場合もあります。また、CO2レーザー蒸散法は、周辺組織の損傷が少なく高い治療効果があり優れた治療法とされています。
薬物療法
薬物を直接患部に塗布する方法です。5-FU軟膏・ブレオマイシン・イミキモド5%クリームなどを塗布します。薬物療法には、使用期間・使用方法・副作用など注意事項があるので、医師や薬剤師の説明をしっかり受けてから使用を開始してください。
尖圭コンジローマになりやすい人・予防の方法
尖圭コンジローマは、ウイルス性性行為感染症です。やはり、性行為またはそれに近い行為を活発に行う方や複数の人と行う方は、尖圭コンジローマにかかるリスクが高まります。
また、ヒトパピローマウイルスは、皮膚や粘膜の小さな傷から感染するものです。そのため、外陰部にアトピー性皮膚炎・接触性皮膚炎などがある場合も感染リスクが高まります。
感染者数は性活動の活発な20代をピークに10代から30代の若い世代に多くみられ、感染者数は少ないですが高齢の方も感染がみられます。男女別にみると男性は2005年をピークに減少傾向にありましたが、2012年から再び増加傾向です。女性は2005年がピークで減少傾向にあります。
尖圭コンジローマは、代表的な性行為感染症ですが完全な予防法はありません。しかし、感染する確率を下げるためには、性行為およびそれに近い行為をする際にコンドームの使用は効果があります。また、HPVワクチンの予防接種も効果的です。
HPVワクチンの予防接種でヒトパピローマウイルス6型・11型に効果があるものは、組換え沈降4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(4価)と組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(9価)です。しかし、男性の接種が承認されているワクチンは4価のみとなります。
そして、尖圭コンジローマの再発・再感染の予防として、感染者本人が治療を終了してもパートナーがウイルスを保持している場合もあります。また、治療でウイルス自体を完全に取り除くことが難しいため潜伏している場合もあり、性行為など開始するタイミングには十分に考慮が必要です。
尖圭コンジローマは感染症なので再発予防のために、ウイルスに対抗する免疫力が高まればウイルスの活動が抑えられイボができにくくなると考えられます。免疫力を高めるためにバランスのとれた食事・運動・睡眠などの生活習慣を見直し、再発予防につなげることも大切です。
参考文献




