

監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
目次 -INDEX-
アダムス・ストークス症候群の概要
アダムス・ストークス症候群は、心臓の拍動異常によって脳への血流が一時的に低下し、突然の意識消失やけいれんを引き起こす病気です。
心臓は全身に血液を送るポンプのような役割を果たしていますが、拍動に異常が生じると、脳に血液が十分に送られなくなります。その結果、めまいやふらつき、失神などの症状があらわれます。
アダムス・ストークス症候群は、適切な治療を受けずに放置すると、不整脈によって突然死につながる場合も少なくありません。そのため、症状があらわれた場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受ける必要があります。

アダムス・ストークス症候群の原因
アダムス・ストークス症候群の主な原因は不整脈です。不整脈によって心臓の拍動リズムが乱れると、血液をうまく送り出せなくなるため、脳への血流が低下します。不整脈は、脈が遅くなる徐脈(1分間の拍動が50回未満)と、脈が速くなる頻脈(1分間の拍動が101回以上)に大きく分けられます。
アダムス・ストークス症候群を引き起こす代表的な不整脈は「房室ブロック」「洞不全症候群」「心室細動」「心室頻拍」などが挙げられます。
これらの不整脈は、心臓の電気信号の伝達がうまくいかなくなるために発生します。心臓の病気や加齢のほかに、薬剤や電解質の異常なども不整脈の原因となる場合があります。
アダムス・ストークス症候群は、原因となる不整脈を検査で明らかにして、症状に合った治療を受けることが重要です。特に高齢者や心臓病を持つ患者さまは、これらの症状があらわれた場合、速やかに医療機関を受診して治療を受けてください。
アダムス・ストークス症候群の前兆や初期症状について
アダムス・ストークス症候群の初期症状は、原因となる不整脈の種類によって異なります。
徐脈による症状
徐脈によるアダムス・ストークス症候群の初期症状は、ゆっくりと進行するめまいやふらつきが特徴です。これらの症状は心拍数が減ることで、脳への血流が徐々に低下するために起こります。
具体的には、立ちくらみや倦怠感、動悸、視界のぼやけなどを感じることがあります。
これらの症状は、一時的なものもあり、見過ごされがちです。
しかし、治療をせずに放置すると、突然意識を失ったり、転倒してケガしたりします。最悪のケースでは、心停止を引き起こす危険性があります。
頻脈による症状
頻脈によるアダムス・ストークス症候群の初期症状は、突然の意識消失やけいれんが特徴です。血液を全身へ送り出す力が弱くなり、脳への血流が急激に低下することで生じます。
具体的な症状には、胸の痛みや呼吸困難、動悸、冷や汗、吐き気などがあります。
これらの症状は短時間で回復する場合もありますが、症状が続く場合は、救急車を呼ぶなどの対応が必要です。
アダムス・ストークス症候群の検査・診断
アダムス・ストークス症候群の検査は、心電図検査が中心となります。
心電図検査は、心臓の電気的な活動を記録する検査です。不整脈の種類や程度を把握するために、24時間ホルター心電図検査や運動負荷心電図検査などをおこなう場合もあります。
そのほか、血液検査や心臓超音波検査などをおこなう場合もあります。これらの検査によって、心臓の状態や不整脈の原因を詳しく調べます。
また、必要に応じて、心臓カテーテル検査や電気生理学的検査などをおこなう場合もあります。アダムス・ストークス症候群の診断は、これらの検査結果と患者さまの症状にもとづいておこなわれます。
アダムス・ストークス症候群の治療
アダムス・ストークス症候群の治療法は、原因となる不整脈の種類や重症度によって異なります。
薬物療法
不整脈の種類によっては、薬物療法で症状を改善できる場合があります。
不整脈の薬には、心臓の拍動リズムを整えたり、血流を改善したりする効果があります。しかし、薬物療法はあくまでも対症療法であるため、アダム・ストークス症候群を根治する治療法ではありません。
薬物療法をする場合は、重点的に病状の経過を観察するために、定期的な通院が必要となります。
ペースメーカー植え込み術
アダム・ストークス症候群の徐脈が原因の場合、ペースメーカー植え込み術がおこなわれる場合があります。
ペースメーカーは、心臓に電気信号を送る医療機器です。一般的には、左胸の皮下に機械を植え込み、心臓の拍動リズムを正常に保てるようにします。
近年では、リードレスペースメーカー(リード線を使用せずに、カプセル型の本体を心臓のなかに留置)が承認されています。治療の適応については症状や合併症などから、医師に相談して決めていくことが重要です。
植込み型除細動器
アダム・ストークス症候群の頻脈が原因の場合、植込み型除細動器がおこなわれる場合があります。
植込み型除細動器は、心臓に電気ショックを与える医療機器です。ペースメーカー植え込み術と同じように、左胸の皮下に機械を植え込み、心室細動や心室心拍などの危険な不整脈が発生した場合に、自動的に電気ショックを与えて心臓の動きを正常に戻します。
植込み型除細動器は、心臓突然死を予防するために有効な治療法です。
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションは、カテーテルという細い管を足の付け根などから心臓に挿入し、不整脈の原因となっている部分を焼灼する治療法です。頻脈性不整脈に対する根治療法としておこなわれます。
アダムス・ストークス症候群になりやすい人・予防の方法
アダムス・ストークス症候群は、心臓病を持つ人や高齢者に発症しやすいです。そのため、これらの人は、定期的な健康診断や心電図検査を受けるようにしてください。
特に、心臓病を持つ人は医師と相談しながら、バランスの取れた食事や適度な運動習慣、禁煙、節酒などを心がけることが大切です。
これらの生活習慣の改善は、心臓病の予防にもつながります。
関連する病気
- 頻脈性不整脈
- 徐脈性不整脈
参考文献




