

監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
ギャロウェイ・モワト症候群の概要
ギャロウェイ・モワト症候群とは、腎臓と脳の神経(中枢神経)が障害され、「ネフローゼ症候群」やてんかん発作、脳・体の形態異常などを伴う先天性疾患です。
類似する疾患も含めると世界では100数例の発症報告があり、国内では2019年に13例が報告されています。
ギャロウェイ・モワト症候群は、遺伝子の異常によって腎臓や中枢神経が作られる過程に異常が生じることで発症すると考えられています。これまでに複数の原因遺伝子が報告されているものの、大半の症例では未だ原因遺伝子が特定されていません。
原因遺伝子によって異なる症状を示すこともあり、ギャロウェイ・モワト症候群は多様な病態を示す疾患の集まりと考えられています。
ギャロウェイ・モワト症候群は、両親が無症状で子どものみに発症する例が多く、1〜2割の患者は兄弟の発症も認められることがわかっています。
特徴的な症状として、腎臓の障害によってネフローゼ症候群によるむくみを認めたり、脳の形態異常による小頭症が現れたりすることがあります。中枢神経症状としては、てんかん発作や精神運動発達遅延などを認めることもあります。
ほかにも、手足や顔面、耳の奇形などを呈することもあり、おでこが狭く出っ張っていたり、人中(鼻の下から上唇までの溝)が長かったりするほか、鷲鼻(わしばな)、斜視などを認めるケースもあります。
症状は徐々に進行していき、腎機能が低下して腎不全を呈し、6歳前後で死亡するケースもあります。しかし、成人するまで大きな症状を認めずゆっくりと進行する事例もあります。
原因遺伝子の多くが特定されていないことなどから、今のところギャロウェイ・モワト症候群に対する有効な治療法は確立されていません。症状に対する対症療法が中心におこなわれ、ネフローゼ症候群やてんかん発作に対する食事療法と薬物療法、精神発達遅延に対するリハビリテーションなどが実施されます。
出典:公益財団法人難病医学研究財団 難病情報センター 「ギャロウェイ・モワト症候群(指定難病219)」
ギャロウェイ・モワト症候群の原因
ギャロウェイ・モワト症候群の明確な原因は不明ですが、遺伝子の異常(変異)によって腎臓や脳が作られる過程に異常をきたすことで発症する可能性が指摘されています。
原因となる遺伝子は「WDR73」「WDR4」「NUP133」「NUP107」などが確認されています。近年では、複数の因子から成り立つ「YRDC」「GON7」「KEOPS complex」の遺伝子変異なども報告されています。
しかし、ギャロウェイ・モワト症候群の原因遺伝子はほかにも多数存在すると考えられており、未だ多くの事例では原因遺伝子が特定されていません。
ギャロウェイ・モワト症候群の患者はほかの家族に発症例がないケースが多く、大部分が単独で発症し、1〜2割で兄弟間での発症が認められています。
また、原因となる遺伝子が「LAGE3」の場合には、男性のみに発症することがわかっています。
ギャロウェイ・モワト症候群の前兆や初期症状について
ギャロウェイ・モワト症候群の発症者は、生まれつき小頭症や耳、顔面、手足の形態異常などが認められます。発症者の顔面の特徴として、おでこが狭く出ていたり、耳が大きく低い位置にあったりするほか、鷲鼻、斜視などが挙げられます。さらに、眼球の動きや聴力障害、視力障害を伴うケースもあります。
また、発症者は腎臓と中枢神経の両方が障害され、双方に関わる臓器や神経に特徴的な症状を呈することもあります。
腎臓の症状としては、尿の中に大量の蛋白が漏れ出す「ネフローゼ症候群」を発症し、初期症状としてむくみを呈することがあります。
神経症状としては、てんかん発作や精神運動発達遅延などを認めることもあります。
このほか、重症の場合には筋肉の緊張が低下して呼吸や飲み込みの機能が障害され、呼吸困難、嚥下障害などを呈するケースもあります。
ギャロウェイ・モワト症候群の検査・診断
ギャロウェイ・モワト症候群の検査では、身体診察や血液検査、尿検査、頭部CT検査、MRI検査などがおこなわれます。
血液検査や尿検査では、尿中に漏れ出した蛋白の数値などを確認し、腎機能について評価します。
頭部CT検査やMRI検査は、脳の形態異常や神経障害などを確認するためにおこなわれます。
このほか、腎臓の合併症について詳しく調べるために、腎臓の組織を採取して顕微鏡で調べるケースもあります。
ギャロウェイ・モワト症候群の治療
ギャロウェイ・モワト症候群に対する有効な治療法は確立されていないため、一般的に症状に対する対症療法が中心におこなわれます。
ネフローゼ症候群を発症している場合には、腎臓を保護したりむくみを軽減させたりするために食事療法や、高圧薬、利尿薬などを用いた薬物療法がおこなわれます。
ネフローゼ症候群の病態が進行し、末期まで進展している場合には、低下した腎機能を肩代わりするため血液透析や腹膜透析、腎移植などの腎代替療法が考慮されます。
一方、てんかん発作などを認める場合には、抗てんかん薬を用いた薬物療法のほか、外科的手術が考慮されるケースもあります。
このほか、精神運動発達遅延などに対しては、リハビリテーションや療育などがおこなわれます。
ギャロウェイ・モワト症候群になりやすい人・予防の方法
ギャロウェイ・モワト症候群になりやすい人や予防の方法についてはわかっていません。
生まれつき体の形態異常を認める場合や、出生後発達の異常やてんかん発作などを認める場合には、早期発見・早期治療につなげるために、医療機関で適切な診断と治療を受けましょう。
参考文献




