

監修医師:
高宮 新之介(医師)
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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。
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頭血腫の概要
頭血腫とは、新生児の頭蓋骨と骨膜のあいだに血液が貯留することで生じる腫瘤を指します。出産時に産道を通過する際の圧迫や、吸引・鉗子分娩などによる機械的な力が原因で、骨膜が骨からわずかに剥がれ、その隙間に血液がたまることで発生します。 頭血腫は全体の1~2%程度の出生でみられると言われており、一般的には一時的な出血にとどまって自然治癒が期待できます。 頭血腫の特徴としては、骨膜下での出血であるため骨縫合を越えて広がることはなく、腫瘤が頭蓋骨の1つの骨領域に限局している点が挙げられます。 また、生後すぐよりも少し時間が経ってから隆起がはっきりしてくる場合が多く、初日はそれほど目立たなくても数日後に腫瘤が明らかになることがあります。 中身が血液であるため、触ると弾力や波動を感じることが多いのも特徴です。頭血腫の原因
頭血腫は大きく分けて分娩時の機械的圧力が要因となりますが、具体的なリスク要因として以下が挙げられます。- 産道を通過する際の頭部への圧力
- 吸引分娩や鉗子分娩などでの機械的な牽引や押圧
- 児の頭蓋骨がやわらかく、骨膜との間にずれが生じやすい状態
頭血腫の前兆や初期症状について
頭血腫は赤ちゃんが生まれた直後に目立たないことも多く、通常は生後数時間から2~3日目にかけて腫瘤がわかりやすくなる傾向があります。初期には以下のような症状や特徴がみられます。- 骨縫合を超えない円形または楕円形のふくらみ
- 触るとぷよぷよ、あるいは波動を感じる腫瘤
- 腫瘤部分の皮膚色には大きな変化がない(発赤や熱感は一般的に少ない)
- 初日はあまり目立たず、生後2~3日頃に最大となることがある
頭血腫の検査・診断
頭血腫の検査および診断は以下のとおりです。1)視診・触診
頭血腫は新生児の頭皮に限局性のふくらみとして確認されます。骨縫合を超えず、形がはっきりとしていることが多いです。触診では強く圧迫した際に痛がったり大きく変形したりはしにくい一方、弾力や波動があることが特徴です。2)超音波検査
必要に応じて行われる場合があります。外部から頭部にプローブを当てるだけで血腫の深さや範囲をある程度把握でき、骨膜との位置関係を評価可能です。頭蓋骨の骨折の有無を簡易的に確認することもできます。3)X線検査、CT、MRI
通常、小さな頭血腫の場合はこれらの検査は必須ではありませんが、腫瘤が大きかったり、骨折やほかの合併症(硬膜下出血など)が疑われる場合に実施することがあります。頭蓋骨骨折や髄液漏などがあるかどうか、より詳しく診断する目的で行われます。頭血腫の治療
頭血腫はほとんどの場合自然吸収されるため、積極的な治療は行わないことが一般的です。しかし、以下のような合併症の有無や経過によって対応が変わります。1)基本的な経過観察
大半の頭血腫は1~3ヶ月ほどかけて吸収され、腫瘤は消失します。吸収期に腫瘤が固くなったり、周囲が骨化したように感じられることがありますが、多くは最終的に吸収されてなくなります。腫瘤の大きさが急激に変化していないか、頭蓋骨骨折などの合併症状が疑われないか確認しつつ、定期的に受診して経過をみることが推奨されます。2)黄疸の遷延対策
頭血腫の血液が吸収される際にビリルビンが増加し、黄疸が強くなったり長引く場合があります。高ビリルビン血症が重度であれば、光線療法や交換輸血などの治療を行うケースもあります。定期的に血液検査を行い、ビリルビン値をチェックすることがあります。3)感染のリスク
頭血腫に対する穿刺や吸引は感染を引き起こすリスクがあるため、強く避けられています。まれに細菌感染が生じると、発赤や痛み、発熱などの症状が出ることがあり、この場合には抗菌薬治療や必要に応じた外科的処置が検討されます。- 日常のケアや診察時に腫瘤をむやみに圧迫しないよう注意します。
- 感染のサインが疑われる場合には早めに医療機関を受診して評価を受けることが大切です。
4)外科的処置
基本的には外科的ドレナージ(穿刺)は行いません。しかし、極めてまれに骨折を伴い腫瘤が異常に大きくなったり、細菌感染によって膿瘍形成が疑われる場合などには、専門医(小児外科や形成外科、脳神経外科など)による慎重な検討のうえ処置が行われることがあります。 穿刺吸引後の感染リスクは高いため、十分な消毒や術後ケアが必須となります。骨折が合併している際もほとんどは自然治癒を待つことが多いものの、頭蓋骨の陥没があるときなどは整復などの手術が検討されることがあります。頭血腫になりやすい人・予防の方法
頭血腫は、正常分娩でも一定の割合で発生する可能性があります。特に以下の場合に起こりやすいとされています。- 児の頭囲が大きい、または母体の産道が狭い
- 分娩時の吸引や鉗子による補助が行われた
- 分娩に時間がかかり、長時間にわたって頭部に負荷がかかった
関連する病気
- 脳内出血
- 硬膜下血腫
- 硬膜外血腫
- 骨折
- 新生児頭血腫
- 慢性硬膜下血腫
- アバラン症候群
参考文献
- 周産期医学Vol.49(増刊号),2019,337-338
- 小児科診療第86巻(増刊号),2023,904-905ChaterM,CamfieldP,CamfieldC,etal:Erb’spalsy―whoistoblameandwhatwillhappenPaediatrChildHealth9:556‒560,2004
- 小児科診療第86巻(増刊号),2023,904-905PiccioliniO,PorroM,CattaneoE,etal:Moebiussyndrome:clinicalfeatures,diagnosis,managementandearlyintervention.ItalJPediatr42:56,2016




