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アイカルディ症候群
田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

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鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

アイカルディ症候群の概要

アイカルディ症候群は先天性の奇形症候群です。10万人に1人の割合で出生する非常にまれな疾患で、現時点では原因は解明されていません。

出典:小児慢性特定疾患情報センター「アイカルディ症候群」

女児に多く発生することから、染色体上にある遺伝子が関連しているのではないかと考えられています。

アイカルディ症候群の主な症状は脳の一部である脳梁(のうりょう)の欠損、てんかん発作、網脈絡膜症(もうみゃくらくまくしょう)の3つであり、重度の精神発達遅延をともないます。

症状の進行は少ないとされていますが、てんかん発作は難治性で、歩行や会話ができるケースは少ないと報告されています。

現在、アイカルディ症候群の根本的な治療法は確立されていないため、抗てんかん薬の使用など、対症療法がおこなわれます。

アイカルディ症候群の原因

アイカルディ症候群の原因は、X染色体や常染色体上にある遺伝子の変異が関連しているとされていますが、はっきりしたことは分かっていません。

染色体上にある遺伝子変異の可能性が示唆される理由は、アイカルディ症候群は女児に多い疾患であるためです。

そもそも女性は2本のX染色体を持っており、そのうちの1本のX染色体に異常があったとしても、もう1本のX染色体によりある程度の機能を補うことができます。

一方で男性はX染色体が1本しかないため、その1本に遺伝子的な異常があると致命的な影響を受けやすく、出生自体が難しいため女児に多く発生するのではないかと考えられています。

また、脳は胎児期の早い段階から発達しますが、アイカルディ症候群の場合、重要な発達段階で遺伝子に異常が生じるため脳梁の形成が正常に進まなくなります。

なお、アイカルディ症候群は基本的に遺伝しないと言われています。多くの場合、遺伝子の突然変異として発生するとされているため、家族歴がない場合でも発症する可能性があります。

アイカルディ症候群の研究は進められていますが、原因が完全には解明されていないのが現状です。

アイカルディ症候群の前兆や初期症状について

アイカルディ症候群ではてんかん発作や精神発達遅滞、網脈絡膜症や小眼球、肋骨の欠損や脊柱側弯(せきちゅうそくわん)など、知的・運動の両側面においてさまざまな症状が現れます。

これらの症状は脳梁をはじめとする大脳の形成異常によるものが多く、身体の中枢的な機能を担う脳が正常に発達しないため起こるのです。

特徴的な症状はてんかん発作で、乳児早期に出現し始めます。アイカルディ症候群におけるてんかん発作は、頭を前屈させたり手足を瞬間的に縮めたりするような動作(スパズム発作)がみられることが多いです。

アイカルディ症候群の症状は個人によって程度が異なり、軽度から重度な症状まで幅広いです。また、すべての症状が同時に現れるわけではなく、年齢を重ねるとともに出始めることもあります。

首のすわりが遅い、寝返りがうまくできない、おもちゃを掴めないといった運動発達の遅れ、表情の変化が乏しい、喃語(なんご)が出ないなどの精神発達の遅れとして症状がみられることもあります。

アイカルディ症候群の検査・診断

アイカルディ症候群の診断は、主に画像検査と臨床症状を組み合わせておこないます。

なかでも重要な検査は脳のMRI検査で、脳梁の欠損や形成不全を確認できます。他の疾患と判別するために、てんかんの原因となりうる構造的な異常の有無も調べます。

アイカルディ症候群では特徴的な脳波のパターンがみられることから、脳波検査をおこなう場合もあります。脳波検査とは頭部に電極を付けて脳の電気的な活動をみる検査です。

診断の過程では、理学療法士や作業療法士による運動機能の評価、言語聴覚士による言語発達の評価などを実施する場合もあります。

医師のみでなく多くの医療スタッフによる総合的な評価により発達状況を把握し、必要な支援につなげます。

アイカルディ症候群の治療

アイカルディ症候群の治療は確立されていないため、対症療法をおこないます。

治療の中心はてんかん発作のコントロールで、抗てんかん薬による薬物療法をおこないます。使用する薬剤は、発作の頻度や年齢などを考慮して選択します。

アイカルディ症候群は多くの身体機能が障害されることから、胃食道逆流や誤嚥性肺炎、中耳炎や便秘などの症状を併発するケースがあるため、状況に応じた治療をその都度おこないます。

内科的な治療のみでなく、運動発達や言語発達、知的発達に対してもサポートが必要です。理学療法や言語聴覚療法など、各分野の医療スタッフが連携して治療に臨みます。

さらにアイカルディ症候群の患者家族への支援も重要です。家庭での療育方法についてアドバイスするとともに、利用可能な福祉サービスの情報提供や心理的なサポートも欠かせません。

これらの治療は一時的なものではなく、成長に合わせて継続的におこないます。定期的な診察で経過観察し、状況に応じて治療内容を調整していく必要があります。

アイカルディ症候群になりやすい人・予防の方法

アイカルディ症候群は遺伝子の変異によって起こる先天性疾患で、現在のところ生活習慣の改善や環境調整だけで予防できる病気ではありません。

また、基本的に遺伝する病気でないため、なりやすい人も分かっていません。

現時点では予防法は確立されていませんが、早期発見と適切な治療が、症状の改善や生活の質の向上に重要な役割を果たします。

そのため、出生後の健康診断をしっかりと受けることが重要です。とくに生後数カ月頃から気付きやすい発達の遅れや、てんかん発作などがみられた場合は、できるだけ早く医療機関に相談することが望ましいです。

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