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家族性アミロイドポリニューロパチー

家族性アミロイドポリニューロパチー
田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

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鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

家族性アミロイドポリニューロパチーの概要

家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP:Familial Amyloid Polyneuropathy)は、変異した「トランスサイレチン」というタンパク質が、神経や臓器に蓄積することで起こる遺伝性の病気です。近年では「遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシス」などと呼ばれることもあります。

主に手足のしびれや痛みなどの末梢神経の症状から始まり、次第に自律神経や、心臓や腎臓などの臓器にも影響がおよびます。

家族性アミロイドポリニューロパチーは常染色体優性遺伝で、片方の親から変異した遺伝子を受け継ぐと発症する可能性があります。ただし、変異遺伝子を受け継いだとしても100%発症するわけではありません。

早期発見・早期治療が重要で、近年は肝臓移植や新しい薬物療法により、進行を抑える治療が可能になってきています。

家族性アミロイドポリニューロパチーの原因

家族性アミロイドポリニューロパチーは、トランスサイレチンという血液中のタンパク質を作る遺伝子に変異が起きることで発症します。

正常なトランスサイレチンは主に肝臓で作られ、ビタミンAやホルモンの運搬に重要な役割を果たしています。しかし、遺伝子に変異があるとトランスサイレチンの構造が変化します。変異したタンパク質は体内で異常な形に変化し、アミロイドと呼ばれる線維状の物質となって神経や臓器に蓄積していきます。

アミロイドの蓄積は主に、末梢神経や自律神経、心臓、腎臓、目などで起こります。蓄積するにつれて、それらの組織の機能が少しずつ障害されます。

また、同じ変異遺伝子をもっていても、症状のあらわれ方や進行の速さには個人差があり、環境因子や他の遺伝的要因の影響を受けることも分かっています。

家族性アミロイドポリニューロパチーの前兆や初期症状について

家族性アミロイドポリニューロパチーの初期症状は、足の指や足の裏のしびれや痛み、感覚鈍麻(温かいものや冷たいものを感じにくくなる)などです。症状は徐々に足全体や手にも広がっていきます。また、筋力の低下も起こり、歩きにくくなったり、手で持った物を落としやすくなったりします。

自律神経の障害も特徴的な症状です。下痢や便秘、立ちくらみ、発汗異常、排尿障害などが現れます。性機能の低下や、食事の際の吐き気なども生じやすくなることがあります。

病気が進行すると、心臓や腎臓にもアミロイドが蓄積し、不整脈や心不全、腎機能の低下などが起こることがあります。目にも影響がおよび、硝子体混濁(しょうしたいこんだく)が起きて視界がぼやけたり、緑内障を発症したりすることもあります。

初期症状は日常生活でのささいな違和感としてあらわれることが多く、別の病気と間違われやすいことが特徴です。

家族性アミロイドポリニューロパチーの検査・診断

家族性アミロイドポリニューロパチーの診断は、問診による症状と家族歴の確認、遺伝子検査、生検、心臓や神経障害の検査などを組み合わせて行われます。症状に応じて腎機能検査や眼科検査なども行います。

問診

はじめに医師は、問診によって症状の詳しい経過や家族歴について確認します。手足のしびれや痛み、自律神経症状(起立性低血圧、消化器症状など)、心臓由来の症状(息切れ、むくみなど)、目の症状(視界のぼやけなど)について詳しく調べます。

遺伝子検査

遺伝子検査は確定診断として重要です。採取した血液からトランスサイレチン遺伝子の変異を調べることができます。遺伝子の変異を特定することで、診断の大きな手がかりとなります。

生検

アミロイドの沈着を直接確認するため、組織の一部を採取して調べる生検を行うことがあります。皮膚や消化管、心臓などの組織を採取し、特殊な染色を行ってアミロイドの有無を確認します。生検では、アミロイドがトランスサイレチンから作られているかどうかも調べることができます。

心臓の検査

心臓の状態を調べるために、超音波検査やMRI検査、核医学検査(シンチグラフィー)などの画像検査、心電図検査、血液検査などを行うことがあります。

神経機能の検査

神経の障害の程度を調べるため、神経を電気で刺激したときの反応を確認する「神経伝導検査」や寝転んでいる姿勢から立ったときの血圧や脈拍の変動を確かめる「自律神経機能検査」を行います。感覚障害を確かめる検査や筋力測定、腱反射(筋肉の腱を刺激して神経の反応を確かめる検査)なども行います。

家族性アミロイドポリニューロパチーの治療

家族性アミロイドポリニューロパチーの治療は、症状に応じて病気の進行を抑える治療と、症状を和らげる治療を組み合わせて行います。症状が進行する前から治療を開始することで、より良い治療効果が期待できます。

肝臓移植

肝臓移植は、根本的な治療法の一つです。変異したトランスサイレチンは主に肝臓で作られるため、肝臓を健康な臓器に置き換えることで、異常なタンパク質の産生を抑えることができます。肝臓移植をした後は、体の拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤の長期服用が必要です。

薬物療法

薬物療法では、主に「タファミジス」と「パチシラン」という薬剤が使われています。タファミジスは異常なタンパク質からアミロイドへの形成を防ぎ、神経や心臓などへの蓄積を抑える効果があります。パチシランは、異常なタンパク質を作り出すのを直接抑える働きがあります。

対症療法

神経の痛みやしびれに対しては、痛み止めの投与や神経障害性疼痛の治療薬が使用されます。心臓の機能障害に対しては、不整脈や心不全の治療薬、腎機能障害に対しては腎臓の機能を保護する薬が使用されます。

リハビリテーション

筋力低下や歩行障害に対して、運動療法などのリハビリテーションを行います。早期から開始することで、筋力や関節の機能をできるだけ維持し、日常生活動作の自立を目指します。日常生活動作を再獲得するために、装具や福祉用具の使用を検討することもあります。

家族性アミロイドポリニューロパチーになりやすい人・予防の方法

家族性アミロイドポリニューロパチーは遺伝性の病気で、親のどちらかが遺伝子異常を持っている場合、50%の確率で子どもへ遺伝子が受け継がれる可能性があります。

家族の中に発症者がいる方は、遺伝カウンセリングを受けることをおすすめします。遺伝カウンセリングでは、遺伝子検査の必要性などについて、専門家に詳しく相談できます。

遺伝子変異が見つかった場合は、定期的な検査を受けて症状の早期発見に努めることが重要です。

また、手足のしびれや痛みなど、気になる症状がある場合は、できるだけ早く専門医に相談しましょう。家族性アミロイドポリニューロパチーは早期発見と早期治療により、症状の進行を大幅に遅らせることが可能です。

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