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神宮 隆臣

監修医師
神宮 隆臣(医師)

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熊本大学医学部卒業。熊本赤十字病院脳神経内科医員、熊本大学病院脳神経内科特任助教などを歴任後、2023年より済生会熊本病院脳神経内科医長。脳卒中診療を中心とした神経救急疾患をメインに診療。脳神経内科疾患の正しい理解を広げるべく活動中。診療科目は脳神経内科、整形外科、一般内科。日本内科学会認定内科医、日本神経学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳血管内治療学会専門医、臨床研修指導医の資格を有す

顔面けいれんの概要

顔面けいれんは、顔面神経の支配を受けている顔面の筋肉自分の意思とは関係なく収縮する病気です。顔面神経とは12対ある脳神経の7番目の神経で、表情を作ることに関与しています。
顔面けいれんの原因の多くは、脳の血管が顔面神経を圧迫することで起こります。
血管による圧迫は脳幹から顔面神経が分岐した直後の部分で好発し、前下小脳動脈後下小脳動脈椎骨動脈が原因血管として挙げられます。

初期症状として、目の周りの筋肉頬の筋肉のけいれんがしばらく続きます。顔面けいれんは通常、顔の片側だけに起こり、緊張すると症状が悪化しやすくなる傾向です。
顔面けいれんは40〜50歳代で好発し、特に女性の発症率が高くなっています。
命に関わる病気ではありませんが、症状が気になる場合は治療が必要です。

顔面けいれんの原因

顔面けいれんは多くの場合、脳血管顔面神経を圧迫することで起こり、まれに多発性硬化症や脳腫瘍、頭蓋骨の大きさなどが原因となることもあります。

顔面神経は脳幹から出て頭蓋骨の小さな穴を通り顔の筋肉につながっています。脳神経には外からの刺激に対して神経を保護するための鞘(さや)があります。顔面神経も同じように鞘がありますが、神経が脳に入る直前では、鞘がなくなります。その部分で血管が接触して拍動することで、顔面けいれんが起きるとされています。
血管の拍動によって顔面神経が刺激されることで、拍動に合わせて顔面がピクピクと動いてしまうのです。

また、顔面神経の圧迫は、脳腫瘍、動脈瘤、血管奇形などによっても起こることがあります。

顔面けいれんの前兆や初期症状について

顔面けいれんの初期症状や前兆として多いのは、目の周りがぴくつきです。

目の周りの筋肉のけいれんから始まり、徐々に口角周辺にまでけいれんが広がることがあります。
初期は疲れ目や睡眠不足の際のまぶたのけいれんと似ていますが、次第に口元や顎の下まで動くようになります。

顔面けいれんは通常、顔の片側だけに起こります。また、ストレスや緊張によって症状が悪化するため注意が必要です。
目の周りのけいれんなどで悩まされた際には、脳神経内科もしくは脳神経外科を受診するようにしましょう。

顔面けいれんの検査・診断

顔面けいれんの診断には、問診や身体診察に加えて、MRI検査などの画像検査が用いられます。

問診

いつから、どのような症状が現れているのかを詳しく聞き取ります。さらに、症状が現れやすい状況や悪化させる要因などを確認します。

身体診察

顔面の動き感覚障害の有無などの確認が必要です。
また、鑑別方法として、顔面けいれんが出やすい状況にする場合があります。例えば、眼を強く閉じて開いてもらうとまぶたの下にけいれんが誘発されたり、口元を引き延ばすような顔をすると、まぶたにけいれんが出たりすることがあります。
顔面けいれんはほとんどは、視診による診察で特定されることが多い傾向です。

画像検査

CT検査

MRI検査で異常がはっきりしない場合や、骨の状態を詳しく調べる必要があると判断された時に適応となります。

MRI検査

脳の断層画像を撮影し、顔面神経を圧迫している血管がないかを確認します。特に、顔面神経根出口領域(REZ:root exit zone)と呼ばれる部分で血管の圧迫がないか調べます。調べるための検査は通常の脳ドックなどと違って特殊な撮像法です。まずは脳神経内科や脳神経外科を受診して、検査を受けましょう。

顔面けいれんの治療

顔面けいれんの治療法には、大きく分けて薬物療法、ボツリヌス治療、手術療法の3つがあります。どの治療法を選択するかは、症状の程度や年齢、希望などを考慮して決定されます。

薬物療法

顔面けいれんでは効果的な薬物はまだありません。顔面神経の興奮を抑制する作用のクロナゼパムやバクロフェンなどが処方されることがありますが、効果は限定的です。
抗てんかん薬であるカルバマゼピンが有効な場合もありますが、眠気やふらつきなどの副作用が出ることがあります。

ボツリヌス治療

ボツリヌス治療とは、顔面けいれんを起こしている筋肉にボツリヌス毒素を注射する治療法です。
ボツリヌス毒素は、筋肉の緊張をとり、収縮を抑制する作用があり、効果は3〜4ヶ月程度持続します。そのため、効果が切れると再度注射を受ける必要があります。

ボツリヌス治療は、顔面けいれんの治療において根治するための治療法ではなく、あくまで対症療法となります。
しかし、比較的安全性が高く体への負担が少ないこと、効果発現までの期間が短いという利点から治療の第一選択となることが多いです。

副作用として、注射部位の痛みや内出血、まぶたの垂れ下がりや口角の下垂などがあります。これらの症状は一時的なものであり、通常は数日〜数週間で改善します。

手術療法(微小血管減圧術)

手術療法は、顔面神経を圧迫している血管をが顔面神経を圧迫しないように少し移動させることで、顔面けいれんを根本的に治療する方法です。

この手術は神経血管減圧術と呼ばれ、耳の後ろを切開して行います。手術の効果は高く、約85〜90%の患者さんで症状の改善が認められます。

手術療法に関しては全身麻酔下で行われ、ほかの治療法よりも体への負担が大きいというデメリットがあるため注意が必要です。
また、術後のリスクとして、聴力障害や顔面神経麻痺などの合併症が起こる可能性があります。また、顔面けいれんが再発することもあります。

ボツリヌス治療で効果が得られない場合や、症状が強い場合に手術療法が検討されます。

顔面けいれんになりやすい人・予防の方法

顔面けいれんになりやすい人や予防法について以下に解説していきます。

顔面けいれんになりやすい人

顔面けいれんは40〜50代中年女性に好発し、緊張やストレス、会話、疲労、強い閉眼などの顔面の運動などで誘発されます。

また、顔面けいれんの発症は多くの場合、脳血管が顔面神経を圧迫することで起きるため、加齢に伴う動脈硬化などが影響していると考えられています。

顔面けいれんの予防方法

顔面けいれんを予防するには、動脈硬化が進行しないようにすることとストレスを溜めない生活習慣を心がけて生活するようにしましょう。

そのためには、バランスの取れた食生活、適度な運動、十分な睡眠など、健康的なライフスタイルを心がけるようにしましょう。
生活習慣病のあるかたは、治療を十分に受けることも重要です。

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