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膠芽腫
勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

膠芽腫の概要

膠芽腫(こうがしゅ)はグリオブラストーマとも呼ばれ最も悪性度の高い脳腫瘍です。

脳腫瘍は発生する場所により、原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍に分けられます。脳の細胞や神経、脳を包む膜から発生するがんを原発性脳腫瘍といい、肺がんや乳がんなど他の臓器に発生したがんが脳に転移するがんを転移性脳腫瘍といいます。

原発性脳腫瘍は、さらに良性の脳腫瘍と悪性の脳腫瘍に分類され、悪性の脳腫瘍で代表的なものがグリオーマとも呼ばれる神経膠腫(しんけいこうしゅ)です。神経膠腫は悪性度(グレードⅠ〜Ⅳ)でさらに細かく分類され、神経膠腫の中でも最も悪性度が高いグレードⅣに分類されているのが膠芽腫です。膠芽腫は原発性脳腫瘍の9%、全神経膠腫の36%を占めています。

膠芽腫は腫瘍が急速に大きくなりやすいという特徴があり、頭痛、痙攣、性格の変化や認知症、運動麻痺などの症状があります。

治療は手術治療、放射線治療、化学療法などが行われますが、近年では電場により腫瘍細胞の分裂を阻害するTTF(Tumor Treatment Field)治療も認可されています。

膠芽腫は高齢者に多くみられ、初発時の年齢は半数以上が60歳以上です。全体の5年生存率は16.0%で、年齢が高くなるにつれ5年生存率も低く、予後が悪いことが報告されていますが、膠芽腫を対象とした治験は日々進められ、新たな治療法の開発も期待されています。

膠芽腫

膠芽腫の原因

膠芽腫が発生する原因は明らかになっていませんが、一般的に、神経膠腫は遺伝子異常の蓄積が原因だと考えられています。遺伝子異常は、自然な突然変異によるDNAの複製エラーによるもので、遺伝的な要因や環境の要因の関与は少ないと考えられています。

膠芽腫の前兆や初期症状について

膠芽腫は急速に腫瘍が大きくなる特徴があることから、腫瘍が見つかったときにはすでに重い神経症状が認められることが多いです。神経症状によって運動や感覚、思考、言語などのさまざまな機能が障害されます。

膠芽腫などの脳腫瘍では、頭痛や吐き気、手足の麻痺、歩行障害、しびれ、ふらつきなどの症状がはじめにみられることが多いです。膠芽腫は腫瘍が増大するスピードが速いため、早い場合は週単位で症状が悪化していくこともあります。

急に頭痛を感じるようになった場合や、今までとは異なる強い頭痛を感じるようになった場合、しびれや麻痺などを伴う頭痛がある場合はすぐに医療機関を受診しましょう。膠芽腫は初期症状をできるだけ早く発見し、治療につなげることが重要です。

膠芽腫の検査・診断

膠芽腫では主に以下のような検査により診断がおこなわれます。

神経学的検査

神経学的検査は運動機能や感覚機能、認知機能、言語機能など、脳の損傷に起因するような異常が生じていないか調べる検査です。意識状態の確認、けいれん、記憶障害、失語などの有無、視野や眼球運動、筋肉の運動、刺激に対する感覚の有無、起立や歩行などについてくわしい検査を行います。

CT検査、MRI検査

CT検査やMRI検査で頭部の画像検査を行い、腫瘍の位置や大きさ、血管との関係を確認します。CT検査はX線による検査で、MRI検査と比べて迅速にできるため、脳梗塞や脳出血などの緊急性の高い病気の可能性を除外するのにも有用です。MRI検査は磁気を使用した検査で、CT検査よりもくわしく脳の状態を確認できます。必要に応じて、造影剤を使用したCT血管撮影やMRI検査を行うこともあります。

画像検査により脳腫瘍の種類をある程度判断できる場合もありますが、脳腫瘍の分類は多岐にわたるため、脳腫瘍の種類を確定診断するためには、手術により摘出された腫瘍組織を病理検査で確認する必要があります。

病理検査

手術により摘出された腫瘍組織を顕微鏡で観察し、遺伝子の変異をくわしく調べる検査(遺伝子検査)などを行います。病理検査により、脳腫瘍の種類や悪性度を確定することが可能です。

膠芽腫の治療

手術治療と放射線治療、薬物療法を組み合わせた治療を行います。

腫瘍の場所によってはすべての腫瘍を摘出することが難しい場合もありますが、手術治療では、脳の機能を温存しながら可能な限り腫瘍を取り除きます。膠芽腫の場合は、神経症状を悪化させないよう、できる限り早急に腫瘍を摘出することが重要です。手術で可能な限り腫瘍を摘出した後は、放射線治療や薬物療法を行います。

放射線治療は放射線を腫瘍細胞に照射し、腫瘍細胞を殺傷する治療法です。正常な脳になるべく影響を及ぼさないよう、局所放射線を通常6週間かけて照射します。高齢の方は放射線治療によって認知機能が低下するリスクもあるため、全身状態や神経症状などに応じてご本人やご家族と相談しながら治療を進めていきます。

薬物療法では、テモゾロミドという抗がん薬や、腫瘍が新たな血管を増殖させるのを阻害するベバシズマブという薬剤などが使用されます。

膠芽腫の新たな治療法として期待されているのが電場によるTTF(Tumor Treatment Field)治療で、交流電場療法とも呼ばれます。TTF治療は治療機器を1日18時間以上装着し、交流電場を腫瘍に放射することで腫瘍細胞の分裂を停止させて、増殖を阻害する効果があります。

膠芽腫は初期治療の終了後、数ヵ月から1年以内に再発することが多いとされています。再発時の有効な治療法は確立されていませんが、手術や抗がん薬の変更、追加などが行われることが一般的です。膠芽腫は再発率も高く予後の悪い脳腫瘍ですが、臨床試験が日々進められ、今後の新たな治療法の開発が期待されています。

膠芽腫になりやすい人・予防の方法

膠芽腫など神経膠腫の原因となる遺伝子の異常は、突然変異によるものが多く、遺伝や環境の要因との関係性は少ないと考えられています。
膠芽腫の予防方法はありません。


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