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サナダムシ(条虫症)
中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

サナダムシ(条虫症)の概要

サナダムシは寄生虫の一種です。
成虫は頭部、頸部、そして体部に分かれており、体はきしめんのように平たい形です。
雌(めす)と雄(おす)の両方の生殖器を持っているため、1匹で卵を作ることができ、感染すると人体内で繁殖する可能性があります。

サナダムシに感染した状態を「条虫症」といいます。
サナダムシが寄生する食べ物を摂取したり、不衛生な水や汚染された手から感染することが多いです。
特に生魚や生肉が感染源となり、裂頭条虫や有鈎条虫などの種類があります。

国立感染症研究所によると、2007年から2017年3月までの11年間で、確定診断された条虫症の症例は114例になります。
さらに、学術誌の症例報告数を加えると439例となり、年間の報告数は平均約40例です。
(出典:国立感染症研究所「わが国における条虫症の発生状況」

現在はほとんど見られなくなった寄生虫ですが、日本では魚の生食である刺身を食べる文化があるため、全国各地で根強く残っています。

感染すると、腹痛や下痢、体重減少などの症状が現れることもありますが、無症状で何年も過ごす方も多いです。
ただし有鈎条虫に感染すると重篤な疾患を引き起こす恐れがあるため、注意が必要です。

診断は糞便検査や血液検査、画像診断で行い、治療には駆虫薬が用いられます。
予防には生食を避け、衛生管理を徹底することが重要です。

サナダムシ(条虫症)の原因

サナダムシへの感染は、サナダムシが寄生している食べ物を摂取することで発生します。
食品を介さずに、不衛生な水や汚染された手に付着したサナダムシが口に入ることで感染することもあります。

サナダムシは主に魚を食べて感染するグループと肉を食べて感染するグループに分かれます

魚を食べて感染するグループ

魚を食べて感染するのは裂頭条虫と呼ばれており、最も発生頻度が高いのは日本海裂頭条虫です。
感染源となりうる魚には、サクラマス、シロザケ、カラフトマス、ベニザケなどがあります。

条虫 感染源
日本海裂頭条虫 サクラマス、シロザケ、カラフトマス、ベニザケ(北米)
広節裂頭条虫 パーチやカワカマスなどの淡水魚、ニジマス、ギンザケ(南米)
イルカ裂頭条虫 淡水魚であるが不明
太平洋裂頭条虫 淡水魚であるが日本では不明。南米ではスズキたタラの仲間

肉を食べて感染するグループ

肉を食べて感染するのは牛肉では無鉤条虫、豚肉では有鈎条虫と呼ばれています。
日本では、ほぼ輸入品による発症です。

条虫 感染源
無鉤条虫 牛肉
アジア条虫 豚レバー
有鈎条虫 豚肉

サナダムシ(条虫症)の前兆や初期症状について

サナダムシの感染は裂頭条虫、無鉤条虫であればほとんど症状がありません。
なぜなら、寄生しても腸内で活発に活動することはないためです。

人によっては腹痛や下痢、体重減少などの症状が発生します。
突然白くて長い虫が排泄物と一緒に出てくることで気が付くこともあります。

有鈎条虫の感染は囊虫症と言われ、作られた幼虫の袋が筋肉や皮膚の下であれば腫瘍ができるだけで重症化することはありません。
ただし、腸内でふ化した幼虫が腸を突き破り血管を通って全身に移動し、幼虫の袋が脳や脊髄、眼球、心臓などの主要な臓器に作られた場合は、意識障害や麻痺、失明等の重篤な障害を引き起こします。

囊虫症の潜伏期間はさまざまで、感染者でも何年も症状がないこともあります。

人々と放し飼いのブタが近接したところで暮らす地域では、てんかんの原因のうち有鉤条虫によるものが約30~70%を占めることもあります。

サナダムシ(条虫症)の検査・診断

腹部の不快感や排便時の違和感で受診した場合、医師の問診にて、過去1カ月程度の食歴を聴取します。
特に魚や肉の生食の食歴がある場合、サナダムシ感染が疑われ、以下の検査に移ります。

糞便検査

サナダムシの感染は排便時に虫体の一部が排泄され、その虫体を観察することですぐに診断ができます。
見た目に虫体がなくても、糞便中に虫卵や虫体の断片(片節)が含まれているかを顕微鏡で観察し、診断が可能です。

血液検査

サナダムシを含む一般的な寄生虫感染では血液検査で好酸球の上昇を認めます。
ただし、サナダムシの種類によっては上昇しない可能性もあり、確定診断にはなりません。

画像診断

サナダムシの感染で囊虫症が疑われる場合、CTやMRIなどの画像診断法を用いて、体内の条虫の存在を確認する方法もあります。

サナダムシ(条虫症)の治療

サナダムシの感染が分かった場合、駆虫薬を使用した治療を行います。
駆虫薬はプラジクアンテルを使用することが多く、一般的には1日1〜2回程度服用することが多いです。

下剤を使用して、条虫の排出を促す治療を行うこともあります。
また、嚢虫症による体内の転移があり障害をきたしている場合は、外科的な手術が検討されます。

サナダムシ(条虫症)になりやすい人、予防の方法

日本国内では、魚類や肉類の生食をできるだけ避けましょう。特に、豚肉や豚のレバーは十分に加熱されたものを口にするようにしてください。

生食の場合は乳白色の細長い虫体を見つけたら取り除くか、56℃以上に加熱処理を行ってください。または、マイナス20℃で24時間以上冷凍して処理をおこないます。

汚染された食品を食べるだけでなく、汚染された水や指を口に入れたりして、サナダムシの卵を飲み込んでしまう可能性もあります。
特に海外では、途上国を中心に寄生虫症が大きな問題となっている地域があります。衛生状態のよくない地域に行くときは、生水や生ものに注意しましょう。
特に嚢虫症は、人の糞便を豚が食べる可能性のある地域(アフリカ、アジア、ラテンアメリカの発展途上国など)ではより警戒してください。

日常生活では調理器具の洗浄の徹底、手洗いなどの衛生管理を怠らないことが大切です。


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