

監修医師:
吉川 博昭(医師)
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医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。
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虚血性大腸炎の概要
虚血性大腸炎は、大腸への血流が減少、または遮断されることによって引き起こされる炎症性の疾患です。主に高齢者に多く見られ、特に基礎疾患を有する患者さんにおいて発症リスクが高いであろうとされています。急激な腹痛や血便を伴い、時には発熱や吐き気などの全身症状も現れます。 診断は、患者さんの症状や病歴の詳しい評価から始まり、血液検査、画像診断、内視鏡検査が行われます。血液検査では、炎症の兆候や貧血の有無を確認し、全身の炎症状態やほかの関連疾患の可能性を評価します。画像診断は腹部のX線検査やCTスキャンを用いて、大腸の状態を詳細に観察します。内視鏡検査では、大腸の内部を直接観察し、必要に応じて組織の一部を採取し病理検査を行います。 虚血性大腸炎の発症のメカニズムとしては、動脈硬化や血栓形成による血流障害、血圧低下や脱水症状による血流減少が挙げられます。診断の際には、臨床症状の確認とともに、内視鏡検査やCT検査などの画像診断が行われます。治療法は軽症例では保存的治療(絶食や点滴療法)で十分ですが、重症例や合併症を伴う場合には外科的治療が必要となることがあります。 虚血性大腸炎の予後は良好と考えられることが多いのですが、再発のリスクがあるため、発症後の定期的なフォローアップと生活習慣の改善が推奨されています。高血圧や糖尿病などの基礎疾患の管理も重要です。虚血性大腸炎の原因
虚血性大腸炎の主な原因は、大腸を供給する血管の狭窄や閉塞です。これには動脈硬化による血管の狭窄、血栓や塞栓による血管の閉塞が含まれます。高血圧や高コレステロール、喫煙、糖尿病といったリスク要因が動脈硬化を引き起こしやすくします。また、心臓病や血液の凝固障害を持つ方々もリスクが高いとされています。 さらに、手術や外傷、重篤な脱水状態、血圧低下、過度の運動なども一時的に血流を減少させる可能性があり、虚血性大腸炎を引き起こすことがあります。特に高齢者では血管の柔軟性が低下している傾向があるため、虚血性大腸炎のリスクが増加しやすいと考えられます。 これらの要因が複合的に作用して大腸の一部が虚血状態となり、結果として炎症や潰瘍が生じることがあります。適切な診断と治療が行われない場合、症状が悪化し重大な合併症を引き起こす可能性もあります。そのため、早期の医療機関への受診が重要です。虚血性大腸炎の前兆や初期症状について
虚血性大腸炎は、突然の強い腹痛が最初の兆候として現れることが多いです。腹痛は通常、下腹部や腹部の左側に集中し、その後に血便が見られることが一般的です。腹部の痛みや血便などの症状は急激に発生するため、日常生活に大きな影響を及ぼします。 しかし、腹痛や血便は虚血性大腸炎に特有のものではなく、大腸がん、大腸憩室炎、感染性胃腸炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)など、ほかの多くの大腸疾患でも見られる症状です。そのため、症状が現れた場合には、正確な診断が大変重要となります。 腹痛や血便が続く場合や症状が悪化する場合には、できるだけ早く医療機関を受診することが推奨されます。医師による適切な診断を受けることで、原因となる疾患を特定し、適切な治療法の選択ができます。早期の診断と治療は、症状の悪化を防ぎ、合併症のリスクを低減するために重要です。 これらの症状がみられた場合、消化器内科を受診して適切な検査・治療を受けることをおすすめします。虚血性大腸炎の検査・診断
虚血性大腸炎の診断は、患者さんの症状や病歴を詳しく評価することから始まります。突然の腹痛や血便といった典型的な症状が見られる場合、医師は虚血性大腸炎を含めた大腸の疾患などを疑いますが、診断を確定させるためにはさらなる検査が必要です。 血液検査: 血液検査では、炎症の兆候や貧血の有無を確認します。この血液検査により、全身の炎症状態やほかの関連疾患の可能性を評価します。例えば、白血球数の増加は炎症を示し、赤血球数の減少は貧血を示す可能性があります。検査の結果は、虚血性大腸炎の診断やほかの疾患の除外に役立ちます。 画像診断: 画像診断も重要な役割を果たします。腹部のX線検査やCTスキャンは、大腸の状態を詳細に観察し、腸管の狭窄や腸壁の異常を確認するために用いられます。これにより、虚血性大腸炎による腸壁の損傷や炎症の程度を把握できます。CTスキャンでは、虚血性大腸炎に特徴的な腸壁の厚みや腸管の拡張が確認されることがあります。 内視鏡検査: また、内視鏡検査も行われることもあります。大腸内視鏡は、直接大腸の内部を観察し、虚血性大腸炎による特徴的な変化を確認するために使用されます。内視鏡検査では、必要に応じて組織の一部を採取し、病理検査を行うことも可能です。病理検査により、虚血性大腸炎の確定診断が行われるとともに、ほかの大腸疾患との鑑別が可能になります。 これらの検査を組み合わせることで、医師は虚血性大腸炎の確定診断を行い、適切な治療方針を決定します。虚血性大腸炎の治療
虚血性大腸炎の治療は、主に保存的療法が中心となります。多くの場合、腸管を安静に保つための食事指導を行い、症状の軽減を目指します。それでも症状が強い場合には、腸を休ませるために絶食が必要となりますが、その間は水分や栄養補給のために点滴が行われるため、入院治療が一般的となります。 治療の初期段階では、腹痛や血便が落ち着くまで絶食が続けられます。症状が緩和された後は、少量のお粥などから食事を再開し、徐々に食事の形態を変えていきます。適切な治療を受ければ後遺症は見られないことが多いとされています。 しかし、虚血による腸管の障害が強い場合には、回復後に大腸が狭くなる狭窄が発生することがあります。狭窄が著しくなり便の通過が困難になる場合や、大量出血や腸管に穴が開くといった重症例では、手術が必要となることがあります。 入院中の治療では、輸液による水分、電解質、栄養素の補給が行われます。また、感染を予防するために抗菌薬が投与されることもあります。数日以内に食事が再開できるようになり、段階的に通常の食事に戻していきます。 瘢痕組織が形成された場合は、腸管の狭窄が進行することがあるため、その場合は手術による修復が必要となる可能性があります。虚血性大腸炎のなりやすい人・予防の方法
虚血性大腸炎は特定の生活習慣や健康状態が原因で発症リスクが高まることがあります。以下の特徴に当てはまる方は注意が必要とされています。また、虚血性大腸炎予防の具体的な方法についても紹介します。虚血性大腸炎になりやすい人の特徴
- 便秘がちの人 便秘は虚血性大腸炎の一因とされています。便秘による腸内圧の上昇が腸の血流を悪化させるためです。予防のためには、以下のような排便習慣の改善が重要です。 水分を多く摂る:1日に1.5〜2リットルの水を目安に摂取しましょう。 食物繊維を多く含む食事:野菜、果物、全粒穀物、豆類などを積極的に摂りましょう。 適度な運動:ウォーキングやストレッチなど、日常的に体を動かすことを心がけましょう。
- 動脈硬化のリスクがある人 動脈硬化は虚血性大腸炎の原因の一つです。以下のような生活習慣病がある方は特に注意が必要です。 糖尿病:血糖値の管理を徹底し、医師の指導に従いましょう。 高血圧:塩分の摂取を控え、血圧を適切に管理しましょう。 脂質異常症:コレステロールや中性脂肪の値をコントロールするために、バランスの取れた食事を心がけましょう。
- 高齢者 高齢になると血管の弾力性が低下し、動脈硬化が進みやすくなります。定期的な健康チェックを受け、適切な健康管理を行うことが大切です。




