

監修医師:
五藤 良将(医師)
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
目次 -INDEX-
大腸ポリープの概要
大腸ポリープとは大腸の内側(内腔)に向かって限局的に盛り上がってできる病変のことを指します。大腸ポリープはいくつかの種類があり、大きく腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分けられます。 腫瘍性ポリープはさらに良性腫瘍(腺腫)と悪性腫瘍(がん)に分けられます。腺腫が最も多く、大腸ポリープの約2/3を占めています。良性だけでなく、がんや、がんになりやすい病変も含まれていることが重要です。 非腫瘍性ポリープは大腸におきた炎症などが原因となっておこります。非腫瘍性ポリープのほとんどは治療を必要としません。しかし、腫瘍性ポリープとの区別が難しい場合は治療の対象となることがあります。大腸ポリープの原因
大腸ポリープの原因には、加齢、肥満に加えて、食生活などの生活習慣がかかわっていると考えられています。いわゆる「欧米型食生活」により大腸ポリープや大腸がんの発生が増えると考えられています。 また、大腸がんのリスク因子としては、飲酒、喫煙などもわかっています。大腸ポリープの前兆や初期症状について
大腸ポリープの多くは自覚症状はありません。特にポリープの大きさが小さいうちは症状が現れることはほとんどありません。しかしながら、ポリープが大きくなった場合や、肛門近くにできている場合は症状が出る場合があります。腫瘍で腸が詰まってしまい腸重積症や腸閉塞をおこしてしまったり、血便が現れたりすることがあります。 大腸ポリープの前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、消化器内科です。大腸ポリープは大腸内の良性腫瘍であり、消化器内科で診断と治療がおこなわれています。大腸ポリープの検査・診断
大腸ポリープを見つけるためには以下のような検査がおこなわれます。便潜血検査
便潜血検査とは、便に血が混じっていないかを調べる検査です。食道、胃、小腸、大腸といった消化管で炎症や潰瘍、腫瘍ができた場合に出血をおこして便に血が混じることがあります。よって、この検査結果が陽性だからといって必ずしも大腸がんや大腸ポリープがあるわけではありません。また、早期がんや肛門から離れた場所の病変であった場合には陽性とならないこともありますので、注意が必要です。 しかし、簡便であり、身体への侵襲もないことから、健康診断や人間ドックで利用されることが多い傾向です。便潜血検査が陽性となった場合は、さらに検査をおこなっていきます。大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査は肛門から内視鏡(大腸カメラ)を挿入して腸の内部を直接観察する検査です。大腸の病変を見つけた場合はインジゴカルミンという色素や、画像強調内視鏡という特殊な光を用いて臨床診断をおこないます。見つけた病変は、その一部を採取(生検)して顕微鏡で調べることで、診断をつけることができます。また、臨床診断上切除ができると判断された病変に対しては、検査と同時に切除、治療をおこないます。注腸造影検査
注腸造影検査とは、肛門から空気と造影剤を大腸に流し込み、レントゲン撮影することで大腸を観察する検査方法です。胃の検査と同じ原理で、ポリープやがんを見つけることができます。病変を見つけることはできますが、同時に治療することができないため大腸内視鏡検査を併用する必要があります。 近年になり大腸CT検査が可能となったため、置き換わってしまい、検診や人間ドックでおこなわれることは少なくなりました。大腸CT検査
大腸を炭酸ガス(CO2)で膨らませてCT検査をおこないます。撮影したデータから大腸の3D画像を作成し、病変を見つけ出すことができます。さらに、解析装置を用いることで、疑似的に大腸内視鏡検査を再現し、ポリープやがんを見つけることが可能です。CTと聞くと被曝量が心配になる方もいるとは思いますが、低線量で撮影するため、一般的な腹部CT検査の半分以下の被曝量となります。下剤の内服量も少なく、痛みも少ないため、大変便利な検査となります。ただし、6mm未満の小さなポリープや、凹凸の少ない腫瘍に対しては見つけることが難しくなります。また、注腸造影検査と同様に、病変を見つけることはできますが、同時に治療することはできず、大腸内視鏡検査を併用する必要があります。大腸カプセル内視鏡
腸の癒着などが原因で大腸内視鏡検査ができない患者さんに対しておこなわれます。薬のカプセルのような形状をした小型のカメラを口から飲むことで、腸の内側を撮影していきます。飲むだけで検査ができるため、からだへの負担は少なくなりますが、大腸内視鏡検査よりもポリープなどの病変を見つける精度は少し悪くなります。大腸ポリープの治療
大腸ポリープの治療は大きく分けて、内視鏡切除、手術、保存治療(経過観察)の3つに分けられます。がんを疑うポリープや、がん化する可能性がある腺腫性ポリープは切除の対象となります。内視鏡切除
大腸内視鏡を用いて、ポリープを切除する方法となります。代表的な切除方法は次のとおりであり、それぞれポリープの種類、大きさ、見た目によって使い分けられます。 内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー) きのこやブロッコリーのような形をした茎のある形状のポリープに対しておこなわれます。ポリープの茎の部分にスネアという金属の輪をひっかけて絞めることでポリープを切除します。切除する際に電流を流して焼き切ることもあります。術後出血をおこすことがあり、その多くは3日以内に発生します。 内視鏡的粘膜切除術(EMR) 平坦に近い形のポリープに対しておこなわれます。ポリープの下に水やヒアルロン酸などの薬剤を注入しポリープを持ち上げます。その後ポリペクトミーと同様にスネアを使用して病変を切除します。 内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD) スネアがかからないような大きな病変に対しておこないます。早期がんにおこなわれることが多い治療法です。EMRと同様、病変の下に水やヒアルロン酸などの薬剤を注入し病変を持ち上げます。その後、ナイフ状の電気メスを利用して病変の周りから切り進めていき、病変をめくってはがすようにして切り取ります。手術療法
内視鏡で切除することができないような病変や、内視鏡治療切除してがんと診断されたものの、取り残しの懸念がある場合には手術をおこない病変を切除します。多くの場合、腹腔鏡での手術が選択されます。手術内容は病変の場所によって異なりますが、病変を含むように腸管を切除し、切り取った腸管の端と端をつなぎ合わせます。大腸ポリープになりやすい人・予防の方法
大腸ポリープができやすい人としては一般的に次のようなものが知られています。 年齢(加齢) 高齢になるに連れて大腸ポリープができやすくなることが知られています。50歳では約20~30%に、70歳までには50%の人に大腸ポリープ(腺腫)が見つかるといわれています。さらに、年齢が高いほどがん化のリスクが高くなります。 肥満 肥満の指標のひとつであるBMI(体重÷身長÷身長)が高い人ほど大腸ポリープ発症の割合が高いことがわかっています。 炎症性腸疾患 クローン病や潰瘍性大腸炎などの大腸に炎症をおこすような病気を炎症性腸疾患といいます。大腸に長期間炎症がおこると炎症によってポリープが形成されることがあります。このポリープががん化することは少ないです。ポリープとは別に、潰瘍性大腸炎では大腸がんのリスクがあるため定期的な検査が必要となります。 遺伝 大腸ポリープのうち一部では遺伝によっておこることがわかっています。代表的な病気としては家族性大腸腺腫症があります。家族性大腸腺腫症はAPCという遺伝子の変異によっておこり、親から子どもに50%の確率で遺伝します。そのため、家系に家族性大腸腺腫症の患者さんがいる場合には、遺伝子検査や大腸内視鏡検査を子どもの頃から定期的におこなっていきます。 上記のようなリスクを除去することは難しいため、減量以外で大腸ポリープを予防することは難しいです。一方で、大腸ポリープで最も問題となることは大腸がんに変化することです。そのため、大腸ポリープを予防するのではなく、早期に大腸ポリープを発見することで大腸がんになる前に治療をおこなうことが重要です。 健康診断をはじめとして、定期的な検査をおこない、異常が見つかった場合は早期に病院を受診し大腸ポリープを発見することが重要です。関連する病気
- 大腸腺腫
- 家族性大腸腺腫症
- 過誤腫性ポリポーシス
参考文献
- 大腸ポリープ診療ガイドライン
- 専門医のための消化器病学 第3版




