遅発月経

遅発月経の概要

遅発月経とは、一般的に15歳を超えても初経が発来しない状態を指します。通常、思春期の過程でホルモンの分泌が活発になり、二次性徴が進行すると月経が開始されます。しかし、遅発月経の場合、この過程に異常が生じ、月経の開始が遅れることになります。遅発月経は、正常範囲内の変異として認められることもありますが、内分泌系の異常や遺伝的要因、栄養状態などが影響している可能性もあるため、適切な診察と評価が求められます。

遅発月経の原因

遅発月経の原因は多岐にわたりますが、大きく分けて中枢性（視床下部-下垂体の異常）と末梢性（卵巣や子宮の異常）の二つに分類されます。中枢性の原因としては、視床下部性無月経や下垂体機能低下症などがあり、これらの疾患ではゴナドトロピン（LH、FSH）の分泌が低下し、卵巣が十分に刺激されません。また、極端な低体重や過度の運動、慢性的なストレスなども視床下部の機能を抑制し、ホルモン分泌の異常を引き起こす要因となります。 末梢性の要因としては、卵巣の機能不全や子宮の発育異常が挙げられます。ターナー症候群のような染色体異常が関与している場合、卵巣の発育が不十分であり、エストロゲンの分泌が低下します。また、子宮奇形や膣閉鎖などの構造的異常によって月経血の排出が妨げられることもあります。

遅発月経の前兆や初期症状について

遅発月経の前兆としては、乳房の発育の遅れや二次性徴の進行が通常よりも遅いことが挙げられます。乳房や恥毛の発育が12歳を過ぎても見られない場合は、ホルモン分泌の異常が疑われます。また、身長の伸びが通常よりも持続する場合や、成長スパートがみられない場合も、ホルモンバランスの異常が関与している可能性があります。 月経の開始が遅れる場合でも、正常な範囲内であれば特に問題はありませんが、18歳を過ぎても月経が発来しない場合は「原発性無月経」と診断され、より詳細な検査が必要となります。

遅発月経の検査・診断

遅発月経の診断では、まず病歴の聴取と身体診察を行い、二次性徴の進行状況を確認します。骨年齢の評価のために手のX線検査を実施し、骨の成熟度を測定します。これにより、思春期の進行が遅れているかどうかを判断することができます。 血液検査では、エストロゲン、LH、FSH、プロラクチン、甲状腺ホルモンなどのホルモン値を測定し、ホルモンバランスの異常の有無を評価します。また、染色体検査を行い、ターナー症候群などの遺伝的疾患の有無を調べることもあります。 超音波検査では、子宮や卵巣の形態を評価し、発育不全や腫瘍などの異常がないかを確認します。MRIやCTを用いて視床下部や下垂体の病変を詳しく調べることもあります。

遅発月経の治療

遅発月経の治療は、その原因に応じて異なります。視床下部性無月経や下垂体機能低下症が原因の場合、ゴナドトロピンやエストロゲン補充療法を行い、ホルモンバランスを整えることが重要です。特にエストロゲン補充療法は、骨密度の維持にも役立ちます。 卵巣機能不全が原因の場合、エストロゲンとプロゲステロンを併用したホルモン療法が適用されることが多く、周期的に投与することで月経の誘発を目指します。ターナー症候群の場合には、成長ホルモン療法と併用することもあります。 ストレスや過度の運動、極端な体重減少が原因である場合には、生活習慣の改善が必要です。適切な栄養摂取を行い、過度な運動を控えることでホルモン分泌を正常化させることが期待されます。

遅発月経になりやすい人・予防の方法

遅発月経のリスクが高いのは、低体重で出生した人、極端な運動習慣を持つ人、慢性的なストレスにさらされている人、または家族歴に月経異常のある人です。特に、バレエや体操競技などのスポーツを行う女性は、エネルギー不足によりホルモンバランスが乱れやすく、遅発月経のリスクが高まることが知られています。 予防のためには、バランスの取れた食生活を維持し、無理なダイエットを避けることが重要です。また、過度な運動を控え、十分な休息を確保することも、ホルモンバランスを正常に保つために役立ちます。早期の発見と適切な治療が重要であるため、思春期の発育が遅れていると感じた場合には、小児科や婦人科の専門医を受診することが勧められます。