

監修医師:
佐伯 信一朗(医師)
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兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学病院産婦人科、兵庫医科大学ささやま医療センター、千船病院などで研鑽を積む。兵庫医科大学病院産婦人科 外来医長などを経て2024年3月より英ウィメンズクリニックに勤務。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会健康スポーツ医、母体保護法指定医。
小児外陰炎の概要
小児外陰炎は、思春期前の女の子に最も多くみられる婦人科の症状です。報告によると、外陰部の症状がある子どもの約33%がアトピーや刺激による皮膚炎、10%が外陰炎であることがわかっています。多くの場合は小児科医師によって治療されますが、症状が特に気になる場合や標準的な治療で改善しない場合は、産婦人科婦人科医師に相談することもあります。小児外陰炎の原因
若い女の子が外陰炎になりやすい理由は、体の特徴と生活習慣に関係しています。体の特徴としては、外陰部の皮膚が薄いこと、腟の粘膜が薄く中性のpHを示すこと、頸管粘液が作られないこと、局所の免疫機能が未発達なこと、防御的な脂肪層が少ないこと、肛門との距離が近いことなどがあります。生活習慣では、手洗いが不十分なこと、トイレ後のふき方が適切でないこと、砂や時には土との接触、不適切な洗浄剤の使用、不適切な下着の使用などが関係します。 細菌は、直腸や尿道、周囲の皮膚から広がることがあります。また、上気道の感染がある場合は、その細菌が血液を通じて、あるいは自分で触ることで外陰部に到達することもあります。また、腟内に異物が入り込んでいる可能性や性的虐待の可能性も考慮する必要があります。小児外陰炎の前兆や初期症状について
初期症状は、軽度から中等度の下腹部の痛みで、多くの場合は片側に痛みを感じます。不規則な出血や感染により悪臭のある分泌物が見られることもあります。症状が進むと、下腹部の痛みが強くなり、発熱、吐き気、嘔吐を伴うこともあります。分泌物は黄緑色で膿のような状態となり、排尿時や性器周辺に痛みを感じることもあります。ただし、クラミジアやマイコプラズマによる感染では、重度の感染に移行しても異常な分泌物もなく無症状の場合もあります。小児外陰炎の検査・診断
まず詳しい病歴を聞き取ります。アレルギーの有無、衛生習慣、運動の種類、排尿習慣、尿路感染症の既往、腸の状態、最近の感染症、使用している薬、症状の詳細(場所や時間帯)などを確認します。 全身の診察では、特にアレルギー反応や皮膚炎の有無を確認します。外陰部の診察では、肛門部、会陰部、外陰部、腟の入口部分を観察し、赤みのある部分、腫れ、擦り傷の跡、水疱、潰瘍、白い斑点、出血、分泌物、癒着の有無を確認します。 必要に応じて分泌物の検査を行います。思春期前後の女の子では滅菌した生理食塩水で湿らせた検査具を使用し、より年少の子どもでは、カテーテルを腟に入れて検体を採取することもあります。小児外陰炎の治療
原因が特にはっきりとしない外陰炎の場合、まず外陰部の衛生管理の指導が重要です。香料入り石鹸、泡風呂、シャワージェルの使用を避け、オイル性の洗浄剤を選びます。お風呂やプールの後は外陰部をよく乾かし、トイレの後は前から後ろにふくように指導します。 細菌による感染が疑われる場合は、原因となる細菌に応じた抗菌薬による治療を行います。症状が3日以内に改善しない場合や膿瘍が疑われる場合は、追加の検査や治療が必要になることがあります。小児外陰炎になりやすい人・予防の方法
思春期前の女の子は、体の特徴と衛生習慣の両面から外陰炎になりやすい傾向にあります。予防のためには、香料の入った製品との接触を避け、外陰部を清潔に保つことが重要です。肛門部や外陰部の清潔を保つため、トイレ後は適切な方向でふき取り、手洗いを十分に行い、刺激の少ない洗剤を使用することが推奨されます。症状が出た場合は、早めに医師に相談することが大切です。参考文献
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