監修医師:
佐伯 信一朗(医師)
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子宮下垂の概要
子宮下垂は、子宮を支える筋肉や組織が弱くなることで、子宮が通常の位置よりも下がってしまう状態です。重症になると、子宮が腟から外に出てきてしまうこともあります。同時に、膀胱や直腸なども下がってくることがあります。この状態では、腟の前側や後ろ側の壁、また子宮摘出後の場合は腟のてっぺんの部分が下がってくることもあります。アメリカの調査では、一般の女性の3-6%に見られる病気ですが、婦人科検診では40-50%の方に何らかの症状が見つかることがあります。この病気は日常生活に大きな影響を与える可能性があるため、早めの発見と適切な治療が大切です。
子宮下垂の原因
主な原因は、子宮やその周りの臓器を支える筋肉(骨盤の底を支える筋肉)が弱くなることです。年齢を重ねることによる自然な筋力低下や、妊娠・出産による負担が大きな要因となります。特に、腟からの出産(自然分娩)では、出産時にこれらの筋肉に大きな負担がかかります。
また、日常生活での習慣も原因となることがあります。
- 重い物を持ち上げる仕事
- 慢性的な便秘でいきむことが多い
- 長引く咳 ・肥満によるお腹への持続的な圧力
さらに、閉経後は女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで、骨盤の底を支える組織が弱くなりやすくなります。
子宮下垂の前兆や初期症状について
初めは以下のような症状が現れることが多いです。
- 下着をつけていて違和感がある
- おりものが増える
- 腟の入り口に何かが出てきた感じがする
症状が進むと
- トイレが近くなる
- 尿が出にくい、または我慢できない
- 便秘や排便時の違和感
- 性生活時の痛みや不快感
- 下着がこすれて痛みや出血がある
これらの症状は、立っているときに悪化し、横になると楽になる傾向があります。また、朝は比較的症状が軽く、夕方になるにつれて悪化することが特徴です。
重症の場合は、尿が出なくなったり、便が出にくくなったり、腎臓に影響が出たりすることもあります。
子宮下垂の検査・診断
問診
- 出産経験の有無
- 月経の状態
- 手術歴
- 日常生活での不便さ
- 症状による生活への影響
診察
- 横になった状態での診察(内診)
- 立った状態での診察
- お腹に力を入れたときの変化の確認
- 腟の状態や子宮の位置の確認
- 超音波検査(エコー):痛みがなく、臓器の状態を確認できる
- MRI検査:より詳しく骨盤内の状態を調べる
必要に応じて尿検査や残尿測定(膀胱に残った尿の量を調べる検査) - 重い物を持たない
- 便秘を改善する
- 体重管理
- 禁煙
- 正しい方法で継続的に行う
- 軽度から中度の症状で効果が期待できる
- 腟に入れる医療器具で子宮を支える
- 自分で入れ外しができるタイプもある
- 性生活も可能
- 定期的な管理が必要
- 出産経験がある方(特に腟からの出産)
- 閉経後の方
- 便秘がちな方
- 重労働に従事している方
- 適度な運動を心がける
- バランスの良い食事で便秘を防ぐ
- 適正体重を維持する
- 重い物は持たない
- 長時間の立ち仕事は休憩を取る
- 骨盤底筋体操を定期的に行う
- 正しい方法を学び継続する
- 無理のない範囲で続ける
- 慢性的な咳の治療をしっかり行う
- 閉経後の健康管理に気を配る
- 定期的な婦人科検診を受ける
- 不安なことがあれば早めに相談する
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画像検査
これらの検査結果から、症状の程度(ステージ)を判断し、最適な治療方法を決めていきます。
子宮下垂の治療
症状の程度や年齢、生活状況などに応じて、以下のような治療を行います。
手術をしない治療(保存的治療)
生活習慣の改善
骨盤庭筋体操(骨盤の底を支える筋肉を鍛える運動)
ペッサリー治療
手術治療
保存的治療で改善が見られない場合や症状が重い場合に検討します。現在は腹腔鏡(おなかに小さな穴を開けて行う手術)を使った手術が一般的で、傷も小さく済みます。手術では、子宮を正しい位置に固定します。最近では、手術支援ロボットを使用した手術も可能になっています。手術後は定期的な検診が必要です。
子宮下垂になりやすい人・予防の方法
子宮下垂になりやすい人
以下のような方は子宮下垂になりやすいと言われています。
予防の方法
予防のために心がけること
日常生活での注意
骨盤底筋の管理
健康管理
予防が最も大切ですが、症状に気づいたら早めに婦人科を受診することをお勧めします。恥ずかしがらずに医師に相談することで、適切な治療を受けることができます。また、症状は年齢とともに進行する可能性があるため、定期的な検診も重要です。
特に気をつけるべき時期は出産後、更年期以降、重い物を扱う仕事を始めるとき、急な体重増加があったときです。
この病気は、早期発見・早期治療により、多くの場合症状の改善が期待できます。日常生活での予防を心がけ、気になる症状があれば、ためらわずに医療機関を受診することが大切です。また、一度治療を始めた後も、定期的な検診を続けることで、症状の再発や悪化を防ぐことができます。
参考文献