監修医師:
佐伯 信一朗(医師)
目次 -INDEX-
微弱陣痛の概要
微弱陣痛は、お産の際に子宮の収縮(陣痛)が弱く、分娩の進行が遅くなる状態を指します。通常のお産では、陣痛が徐々に強くなり、一定の時間で赤ちゃんが生まれてきますが、微弱陣痛ではこの進行が遅くなります。医師は分娩の進み具合を「パルトグラム」や「シャン曲線」という図を使って評価します。お産は「第1期」(陣痛が始まってから子宮の入り口が全部開くまで)と「第2期」(子宮の入り口が全部開いてから赤ちゃんが生まれるまで)に分かれています。特に第2期での微弱陣痛は、お母さんと赤ちゃんの両方に影響を与える可能性があるため、慎重な管理が必要です。分娩の進み方には個人差があり、特に初めてのお産では時間がかかることも多いですが、医療者は母体と赤ちゃんの安全を確保しながら、適切な分娩管理を行います。
微弱陣痛の原因
微弱陣痛にはいくつかの原因があります。お母さんの強い疲れや、長時間の陣痛による子宮の疲れが主な原因です。また、お母さんの骨盤の形が通常と異なる場合や、赤ちゃんの向きが適切でない場合、赤ちゃんが大きすぎる場合なども原因となることがあります。特に陣痛が始まってから長時間経過すると、子宮の筋肉が疲れて十分な力が出せなくなることがあります。
お母さんの心理的な要因も重要で、強い不安や緊張は陣痛に影響を与えることがあります。また、水分不足や栄養不足、長時間同じ姿勢でいることなども微弱陣痛の原因となる可能性があります。お産の際は、適度な休息と水分補給、リラックスできる環境づくりが大切です。
胎児側の要因としては、赤ちゃんの大きさだけでなく、後頭位(頭が下向き)以外の胎位や、骨盤の中での赤ちゃんの回り方(回旋)が適切でないことなども原因となります。これらの状態は、超音波検査や内診で確認することができます。
微弱陣痛の前兆や初期症状について
微弱陣痛の初期症状としては、陣痛の間隔が不規則になることや、陣痛の強さが弱くなっていくことがあります。通常、陣痛は徐々に強くなり、規則的になっていきますが、微弱陣痛では陣痛が弱くなったり、時には完全に止まってしまうこともあります。また、お母さんが非常に疲れを感じ、いきむ力が弱くなることも特徴です。分娩の進行が遅くなり、子宮の入り口の開きが止まってしまうこともあります。
具体的な症状
- 陣痛の間隔が一定せず、不規則になる
- 陣痛の強さが弱くなっていく
- お腹を触ったときの子宮の硬さが不十分
- 疲労感が強くなり、いきむ力が弱くなる
- 子宮口の開大が進まない、または停止する
- 赤ちゃんの下降が遅い、または停止する
これらの症状が見られた場合、医療者は慎重に経過を観察し、必要に応じて適切な処置を行います。
微弱陣痛の検査・診断
医師や助産師は分娩の進み具合を定期的に確認します。主な検査・診断方法には以下のようなものがあります。
内診による評価
子宮口の開き具合、赤ちゃんの下降度、骨盤の広さや形状の確認
外診による評価
お腹の上からの触診による子宮の硬さの確認、陣痛の強さや間隔の評価、赤ちゃんの位置や向きの確認
モニタリング
陣痛計による子宮収縮の強さと間隔の記録胎児、心拍数の継続的な観察
超音波検査
赤ちゃんの向きや大きさの確認、羊水量の評価、胎盤の状態の確認
初めてお産をする方の場合、陣痛が始まってから赤ちゃんが生まれるまでに通常10-12時間以上かかる場合や、子宮の入り口が全開してから2時間以上経過しても赤ちゃんが生まれない場合に、微弱陣痛による分娩の遅れと診断されることがあります。
微弱陣痛の治療
治療方法は、母体と胎児の状態、分娩の進行状況によって選択されます。
- 基本的な対応:適切な休息の確保、十分な水分補給、自由な体位の工夫、リラックスできる環境づくり
- 医療的介入:子宮収縮薬(オキシトシンなど)の点滴投与、必要に応じた人工破膜、陣痛促進剤の使用時は母体と胎児の状態を慎重に観察
- 処置が必要な場合:吸引分娩鉗子、鉗子分娩、帝王切開手術
治療方法の選択は、母体と胎児の状態、分娩の進行状況、施設の方針などを考慮して決定されます。
微弱陣痛になりやすい人・予防の方法
極度の疲労がある方は微弱陣痛になりやすいと言われています。予防のためには、妊娠中からの適切な生活管理が重要です。
予防のためのポイント
- 妊娠中の生活管理
十分な休息と睡眠バランスの良い食事、適度な運動(妊婦体操など)、規則正しい生活リズム - 分娩に向けた準備
出産に関する正しい知識の習得、呼吸法やリラックス法の練習、出産に対する不安の軽減 - 分娩開始後の注意点
早めの医療機関への連絡、適切な休息と水分補給、無理のない範囲での体位の工夫、医療者の指示に従った行動
特に初産婦さんの場合は、分娩に時間がかかることを理解した上で、焦らず適切な休息をとることが大切です。また、分娩中は医療者との良好なコミュニケーションを保ち、不安や疑問点があれば積極的に相談することをお勧めします。
参考文献
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