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子宮内膜増殖症
佐藤 綾華

監修医師
佐藤 綾華(医師)

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北海道大学医学部医学科卒業。宮城県の急性期病院で初期研修修了後、産婦人科を専攻し、宮城県の複数の総合病院で勤務したのち産婦人科専門医を取得。生殖医療分野と女性医学分野に興味を持ち、日本女性心身医学会認定更年期指導士の資格も取得。

子宮内膜増殖症の概要

子宮内膜増殖症とは、子宮内膜が正常な範囲を越えて分厚くなる疾患です。

子宮内膜とは子宮の内側をおおっている組織で、受精卵が着床して育つ場所です。通常、子宮内膜は月経周期にともない増殖したのちにはがれ落ち、経血として体外へ排出されます。

しかし子宮内膜増殖症では増殖と剥離のバランスが崩れて、増殖が過剰になるのです。

子宮内膜増殖症は、細胞の異型がない子宮内膜増殖症と、異型がある子宮内膜異型増殖症に大別されます。子宮内膜異型増殖症は、子宮体がんになる可能性があるため注意が必要です。

子宮内膜増殖症

子宮内膜増殖症の原因

子宮内膜増殖症の主な原因は、エストロゲン量の多さです。

エストロゲンとは女性ホルモンの一つで、子宮内膜を増殖させて妊娠に備えるはたらきがあります。

子宮内膜はエストロゲンとプロゲステロンのバランスによって調整され、妊娠が起きなければ経血として排出されます。

しかしこのバランスが崩れるとエストロゲンの量が多くなり、子宮内膜が増殖しすぎてしまうのです。

エストロゲン量が多くなる原因は主に以下のとおりです。

  • 出産未経験
  • 肥満
  • 月経不順
  • ホルモン補充療法

出産経験がない場合、出産している女性に比べて経験する月経の回数が多くなるため、エストロゲンにさらされる量が多くなります。

肥満の場合、蓄積した内臓脂肪からエストロゲンが作られることが認められています。

また月経不順があると、周期に沿って変動するはずのホルモンバランスが乱れやすいため、エストロゲンの量が多くなることがあります。

更年期障害の治療のためにホルモン補充療法を受けている場合も、エストロゲンの量が多くなります。

子宮内膜増殖症の前兆や初期症状について

子宮内膜増殖症の前兆や初期症状では、不正出血や過多月経が現れることが多いです。

不正出血とは、月経周期以外にも出血が見られることをいいます。閉経しているのに出血がみられる場合も不正出血です。

また子宮内膜増殖症では、通常より経血量が多くなったり、月経期間が長くなったりすることがあります。

これらの症状はほかの婦人科疾患でもみられるため、症状から子宮内膜増殖症と断定することはできません。

子宮内膜増殖症の検査・診断

子宮内膜増殖症の診断では、医師による問診と内診にくわえて、必要に応じて以下の検査をおこないます。

  • 経腟超音波検査
  • 病理検査
  • MRI検査
  • CT検査

経腟超音波検査とは、いわゆるエコー検査です。超音波を発する器具を腟の中に入れて、子宮の状況を調べます。

また、子宮内膜の病理検査をおこなうこともあります。細胞診と組織診があり、細胞診は子宮内膜をブラシやチューブ状のものでこすって採取します。

採取した子宮内膜の細胞に、がんの可能性がある細胞があるかどうかを調べます。子宮内膜をこするため、人によっては痛みを感じるかもしれません。また少量の出血や茶色のおりものがみられることもあります。

組織診とは、細胞診で異常が見つかった場合におこなう検査であり、がん細胞の種類や悪性度を調べます。細いスプーン状の器具や吸引チューブで子宮内膜の一部を掻き取ったり吸引して採取します。

ほかにも、MRI検査やCT検査によって画像を撮影することもあります。

MRI検査は、限られた範囲の状態の観察に優れているため、子宮や卵巣の病気の状態を確認する目的で使用されます。一方でCT検査は、一度に全身を検査することができるため、主に転移を確認するために行われます。

まずはMRI検査を行い、がんが疑われる場合はCT検査も併用することが一般的です。

子宮内膜増殖症の治療

子宮内膜増殖症の治療は、細胞の異型の有無によって大きく異なります。

細胞の異型がない子宮内膜増殖症

自然に治癒することもあるため、超音波検査や細胞診を定期的に実施し、経過観察となる場合が多いです。

ただし不正出血が続く場合は、ホルモン補充療法を実施することもあります。

細胞の異型がある子宮内膜増殖症

細胞の異型がある子宮内膜増殖症の治療は、子宮体がんの治療に準じて手術療法を第一選択としておこなうことが多いです。

  • 手術療法
  • ホルモン療法
  • 子宮内膜全面掻爬術

手術療法では、子宮全摘出術や子宮に付属している臓器も一緒に摘出する方法、それ以上の範囲にわたって臓器を摘出する方法があります。

妊娠を希望し子宮を残すことを望む場合、疾患の程度によっては高用量の黄体ホルモンを使用して治療します。黄体ホルモンは子宮内膜の増殖を抑えるはたらきがあるため、子宮内膜増殖症のホルモン治療に使用します。

子宮内膜全面掻爬術(しきゅうないまくぜんめんそうはじゅつ)は子宮内膜増殖症の検査でもおこない、治療の意味も兼ねて実施することがあります。

これらの治療を受けたあとでも、再発のリスクや子宮体がんへ進行するリスクがあるため、継続的なケアは欠かせません。

子宮内膜増殖症になりやすい人・予防の方法

子宮内膜増殖症になりやすい人は、以下のような特徴があります。

  • 出産したことがない
  • 肥満である
  • 月経周期が整っていない
  • エストロゲンの補充療法を受けている

これらに共通しているのは、長い間エストロゲンの作用を受け続けていることであり、この状態が続くと子宮内膜増殖症の発症につながりやすくなります。

自分でできる予防方法として、以下の点を心がけましょう。

  • 肥満を予防する
  • 定期検診を欠かさず受ける
  • 症状がみられたら検診以外でも受診する

バランスの取れた食事や運動の習慣化をおこない、肥満を予防しましょう。

不規則な生活もホルモンバランスの乱れにつながるため、生活リズムを整えるようにしましょう。

また、早期発見や早期治療のため、欠かさずに検診を受けるようにしましょう。子宮内膜増殖症はもちろんのこと、ほかの婦人科疾患の発見にもつながります。

検診のタイミング以外でも症状がみられた場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。


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