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不正出血
西野 枝里菜

監修医師
西野 枝里菜(医師)

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【経歴】
東京大学理学部生物学科卒
東京大学薬学部薬科学専攻修士課程卒
名古屋大学医学部医学科卒
JCHO東京新宿メディカルセンター初期研修
都立大塚病院産婦人科後期研修
久保田産婦人科病院
【保有資格】
産婦人科専門医
日本医師会認定産業医

不正性器出血の概要

不正性器出血とは、通常の生理周期とは異なるタイミングで起こる出血のことを指します。女性の生理周期は一般的に28日程度ですが、周期以外の出血を、不正性器出血と呼びます。不正出血にはさまざまな原因があり、発生頻度や症状の程度もそれぞれ違います。軽度の時は、一時的なホルモンバランスの乱れが原因で、重度の時は重大な病気の可能性があります。不正出血が続く場合や、異常を感じた場合は早めに婦人科を受診することが大切です。 この症状は、女性の日常生活に大きな影響を及ぼします。出血が続くことで貧血のリスクもありますし、出血の原因によって婦人科疾患が疑われることもあります。特に思春期や更年期の女性はホルモンバランスが変動しやすく、結果として不正出血が起こります。若年層や中年層の女性もストレスや生活習慣の変化によって不正出血が現われます。 不正出血が持続する場合や繰り返し発生する時は、必ず医師に相談してください。

不正出血の原因

不正出血の原因は多岐にわたります。この章では不正出血の原因をそれぞれ説明していきます。

ホルモンバランスの乱れ

最も一般的なのは、ホルモンバランスの乱れです。ホルモンバランスが崩れることで、子宮内膜が適切に調整されず、不正出血が発生します。原因はストレス、過労、急激な体重変動、極端なダイエットなどが考えられます。

婦人科疾患

婦人科疾患も不正出血の原因として考えられます。例としては、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮頸がん、子宮体がんなどが不正出血の原因として考えられます。

感染症

感染症も不正出血の原因と言われています。性行為感染症(STI)により、腟、子宮頸管、子宮内膜から出血をきたす場合があります。これらの感染症は放置すると重篤な合併症を引き起こすことがあるため、適切かつ早期の治療が必要です。

薬剤

薬剤の影響も原因として考えられます。特に避妊目的や月経困難症の治療などで用いられる低用量ピルを使用している場合は、不正出血が一時的に起こることがあります。これは身体が新しいホルモン環境に適応するための過程であることが多いため、長期間続く場合は医師にしてください。

妊娠初期

妊娠初期にも不正出血の症状が現れやすいです。着床出血と呼ばれ、受精卵が子宮内膜に着床する時に起こる少量、短期間の出血は問題ないですが、流産の兆候や異所性妊娠という病気によっても出血が起こるため、産婦人科の受診をおすすめします。

不正出血の前兆や初期症状について

不正出血は、個人差が大きいですが、いくつかの共通したサインがあります。まず、月経以外のタイミングでの出血が最も明らかな兆候です。通常の月経周期から外れた出血が見られた場合は、不正出血の可能性があります。不正出血の前兆として多いのが、ホルモンバランスの乱れです。急激な体重の増減や極端なダイエット、過度のストレスや睡眠不足などが原因で、ホルモンバランスが崩れ、不正出血が起こります。生活習慣の変化に伴って不正出血が見られた時は、生活習慣の見直しも大切です。 また、出血の色や量にも注意が必要です。。不正出血だと、通常の月経血とは異なる色や量になることが多いです。例えば、茶色やピンク色の出血、他にも非常に少量の出血が続く場合は不正出血のサインであると言えます。 不正出血に伴う他の症状として、腹痛や腰痛、異常な疲労感、発熱などが同時に見られる時は、感染症や婦人科疾患の可能性も考えられます。他にも、性交時の痛みや異常な分泌物が見られる時は、不正出血の原因となる疾患が考えられます。 避妊方法変更も不正出血を発症する恐れがあります。。特にホルモン避妊薬を使用している時は、新しい薬剤に身体が適応する過程で一時的に不正出血が発生することがあります。この時は、一定期間様子を観察して、長期間続く時は婦人科の受診が必要です。

不正出血の検査・診断

不正出血の原因を特定するためには、いくつかの検査と診断が行われます。この章では検査と診断の内容を、その流れも含めて解説します。

問診

最初に問診を行うことが重要です。医師は患者さんの生理周期、出血の頻度や量、伴う症状などについて詳しく尋ねます。他にも、既往歴や現在使用している薬剤、生活習慣なども問診に含まれます。問診の内容は、不正出血の原因を特定する重要な手がかりになります。

身体検査

身体検査では、外部からの視診や触診によって子宮や卵巣の状態を確認します。主に、子宮頸部や子宮内膜の異常を確認するために、視診と触診が行われます。視診では、子宮頸部のポリープやがんの兆候を確認し、触診では子宮や卵巣の腫れやしこりを確認します。 さらに、より細かく診断するために、超音波検査が行われます。超音波検査は、子宮や卵巣の内部の状態を画像として確認する方法です。この方法で、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、卵巣嚢胞などの異常を視覚的に確認できます。他にも、経腟超音波検査もあり、細かく内部の状態を把握できます。

血液検査

必要に応じて、血液検査も実施されます。この検査では、ホルモンレベルや貧血の有無、感染症の兆候などを確認できます。ホルモンレベルの測定は、ホルモンバランスの乱れが不正出血の原因かどうかを判断するために重要です。貧血の症状が出やすい時は、その原因を特定するためにさらに検査を行うこともあります。

子宮内膜生検

子宮内膜の組織を採取する子宮内膜生検も、不正出血の原因を特定するために行われることがあります。この検査は、子宮内膜の細胞を顕微鏡で調べ、がんやその他の異常がないかを確認します。これらの検査と診断を総合して、不正出血の原因を特定し、適切な治療方針を決定します。

不正出血の治療

不正出血の治療は、その原因に応じて治療が異なります。この章では、原因別に治療法を説明していきます。

ホルモンバランスの乱れが原因

ホルモンバランスの乱れが原因の時は、ホルモン療法を行うことが一般的です。例としては、経口避妊薬やホルモン補充療法を用いて、ホルモンのバランスを整え、不正出血を抑えます。この治療で、月経周期が安定し、出血の頻度や量が改善されます。

婦人科疾患が原因

婦人科疾患が原因の時は、疾患に対する治療が必要です。具体的には、子宮筋腫や子宮内膜ポリープの除去手術を行うことがあります。子宮筋腫の手術方法は、腹腔鏡下手術や開腹手術などがあり、患者さんの症状や筋腫の大きさ、場所に応じて適切な方法で行います。子宮内膜ポリープの除去は、子宮鏡を用いた手術が一般的です。

感染症が原因

感染症が原因の時は、抗生物質による治療が一般的です。性行為感染症(STI)や子宮内膜炎などの場合、症状に合う抗生物質を使用することで感染を抑え、不正出血を改善します。治療期間中は、医師の指示に従って薬を正しく服用することが大切です。

避妊方法の変更・薬剤の影響が原因

避妊方法の変更や薬剤の影響が原因の時は、一時的な現象であることが多いです。この場合、身体が新しいホルモン環境に適応するまで待つことで改善されます。しかし、長期間続く場合や不快な症状がある場合は、婦人科に相談する必要があります。

妊娠初期であることが原因

妊娠初期が原因の場合、安静になることが求められます。特に、着床出血の時は、自然に収まることが多いですが、異常な痛みや大量の出血がある時は、異所性妊娠や流産の可能性も考えられるため、早めの婦人科受診をおすすめします。

不正出血になりやすい人・予防の方法

不正出血になりやすい人はいくつかの特徴があります。この章では、その特徴を解説します。

ホルモンバランスが崩れやすい人

ホルモンバランスが崩れやすい人は不正出血になりやすいです。特に、思春期や更年期の女性はホルモンの変動が激しいため、不正出血が起こりやすくなります。他にも、ストレスを多く抱えている人、過労が続いている人もホルモンバランスが乱れやすい人の特徴です。

生活習慣が不規則な人

生活習慣が不規則な人も不正出血になりやすい傾向があります。極端なダイエット、急激な体重変動、睡眠不足はホルモンバランスが崩れやすくなります。他にも、喫煙や過度の飲酒も要因となります。 不正出血の予防方法はいくつかの方法があります。この章では、具体的な予防方法を解説します。

生活習慣の改善

予防方法の1つ目は、生活習慣を改善することです。まずバランスの取れた食事が重要です。バランスの取れた食事を心がけることで、ホルモンの正常な分泌をサポートします。特に、ビタミンやミネラルを豊富に含む食材を積極的に摂取することをおすすめします。他にも、適度な運動もホルモンバランスの維持に役立ちます。無理せず定期的に運動を行い、体調を整えることが大切です。

睡眠不足の解消

十分な睡眠も不正出血の予防に重要です。睡眠不足はホルモンバランスを乱す原因となります。規則正しい生活リズムを作り、質の良い睡眠を確保することで改善が確認できます。。ストレス管理も大切で、リラクゼーション法や趣味の時間を取り入れて、心身のリフレッシュを図ることが推奨されます。

婦人科検診を受ける

婦人科検診を定期的に受けることで、早期に異常を発見し、適切な対応を取ることができます。特に、40歳以上の女性は子宮頸がんや子宮体がんのリスクが高まるため、定期的な検診が大切になります。

避妊方法の選択

避妊方法の選択も不正出血の予防になります。ホルモン避妊薬を使用している時は、医師の指導のもと適切な使用方法を守ることが必要です。新しい避妊方法を試す時は、体調の変化に注意し、不正出血が続く場合は婦人科を受診することが必要です。 これらの予防方法を実践することで、不正出血のリスクを軽減し、健康を維持することができます。

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