

監修医師:
栗原 大智(医師)
目次 -INDEX-
角膜異物の概要
角膜異物とは、目の最外層に位置し、光を通す重要な役割を担う角膜に何らかの異物が付着または侵入した状態を指します。この状態は、外傷性疾患として広く知られており、日常生活や作業環境において頻繁に発生します。わずかな損傷や異物でも視覚に大きな影響を与える可能性があります。
角膜は視力を維持するための重要な構造であるため、角膜異物は軽視できない問題です。日常生活での注意や予防策を講じることで、リスクを大幅に軽減することが可能となります。
角膜異物の原因
角膜異物は、外部から物理的に目に異物が入ることで発生します。その原因は多岐にわたり、日常生活や仕事環境での特定の状況がリスクを高めます。
自然環境に由来するもの
風の強い日や砂嵐の中で外出すると、砂粒や埃が角膜に付着することがあります。また、植物作業中に木の破片や草の小片が目に入ることも原因となります。
作業環境でのリスク
金属加工や木工などの作業現場では、削られた小さな金属片や木の破片が空中を飛散し、目に侵入する危険性があります。また、建設業や農業、工場作業においても作業中に発生する粉塵や化学物質が角膜を傷つける可能性があります。
コンタクトレンズの不適切な使用
コンタクトレンズの装着や取り扱いが不適切だと、異物がレンズと角膜の間に挟まりやすくなります。例えば、手に付着していた埃やゴミがレンズとともに目に入るケースや、古く傷ついたレンズを使用して角膜が損傷するケースが挙げられます。また、レンズの長時間装着や適切な洗浄を怠ること、付けたまま眠ってしまうこともリスクを高めます。
外傷性の事故
スポーツや日常の不注意による衝突、例えばボールが目に当たるなどして異物が目に入り込むケースも報告されています。さらに、交通事故や破片の飛散などでも角膜異物が発生する可能性があります。
角膜異物の前兆や初期症状について
角膜異物が目に入ると、早期に現れる症状や前兆がいくつかあります。「異物感、赤み、痛み」が想像しやすい症状かと思いますが、それ以外にもさまざまな症状があります。
1. 異物感
2. 涙の増加
3. 赤み(充血)
4. 目やまぶたの腫れ
5. 目のかすみ
6. 痛みや不快感
7. 光に対する過敏症状(羞明)
8. 視力低下
症状の持続時間と重症化のリスク
軽度の異物であれば、涙や自然な瞬きで取り除かれることが多いですが、異物が角膜に埋まっている場合や感染のリスクがある場合があります。角膜潰瘍や炎症を引き起こす可能性があるため、これらの初期症状を軽視せず、早めに眼科を受診することが重要です。
受診すべき診療科と伝えるポイント
一番に受診すべき診療科:眼科
角膜異物の診断と治療には専門的な知識と設備が必要であるため、最適な診療科は「眼科」です。眼科医は、細隙灯顕微鏡などの専門の検査機器を使用して、角膜異物の位置や深さ、周囲の損傷の有無を正確に確認できます。強い痛みや急激な視力の低下があり、夜間や自身で通院が困難な場合には救急外来や救急車を要請しましょう。
初診時のポイント
初診時には、以下の情報を医師に伝えると診断がスムーズに進みます。
- 異物が目に入った状況(作業中、風の日など)
- いつから症状があるか
- 痛みや異物感に変化があるか
また、応急処置として清潔な流水で軽く洗い流すなどの対応を行うとよいですが、無理に異物を取ろうとしたり、目をこすらないようにしたり注意が必要です。
角膜異物検査・診断
角膜異物の検査と診断には、目に特化した技術と専門知識が求められます。眼科では、細隙灯顕微鏡を用いて角膜、結膜を詳細に調べ、異物の有無や損傷の程度を確認します。検査と診断の主な手順は以下の通りです。
問診
問診ではどのような状況で目の痛みや違和感が生じたのかを確認します。実際の状況や症状の経過(持続時間、痛みや症状の変化)について詳細に教えてください。
細隙灯顕微鏡検査
点眼麻酔と染色液を使用し、異物の位置や形状、角膜の損傷の程度を確認します。これにより、異物が角膜表面にあるのか、角膜に埋まっているのかを正確に診断できます。
追加検査
場合によっては、X線やCTスキャンなどの画像検査を行うこともあります。これは特に、金属片やガラス片などの異物が深く入り込んでいる場合や、目の奥まで影響を及ぼしている可能性がある場合に必要です。また、感染症の疑いがある場合には、角膜表面から採取したサンプルを検査して病原体を特定することもあります。
角膜異物の治療
角膜異物の治療は、異物の種類、位置、深さ、及び角膜への損傷の程度によって異なります。迅速かつ適切な治療が視力への影響を最小限に抑えるために重要です。以下に、具体的な治療手順と注意点を詳しく説明します。
異物の除去
角膜異物が表面にある場合は、麻酔薬を点眼後、細隙灯顕微鏡を使用し以下のような方法で除去します。
滅菌水や滅菌綿棒での洗浄
目視可能な範囲の異物は、滅菌した生理食塩水で洗い流したり、湿らせた滅菌綿棒で取り除いたりします。
洗浄で残った異物の除去
眼球を動かさずに固視できる場合は、洗浄で残った異物の除去も可能となります。25~27Gなど皮下注射針の先を用いて取り除かれます。
金属の異物の場合
鋼や鉄の異物が長時間残留すると、角膜に錆を残す場合があります。洗浄と同様に細隙灯顕微鏡を用いて、皮下針などで除去する必要があります。
角膜上皮が剥離している場合
異物が角膜に傷ができてしまった場合には、以下のような治療が行われます。
感染症予防
欠損が治癒するまでの数日間、抗菌薬点眼や軟膏を使用し感染予防を行います。
光対策
剝離が大きい場合に、光がまぶしいと感じることがあるため、サングラスなどで光を遮断すると症状が和らぎます。
痛み対策
直接痛みをとるような点眼薬ではなく、アセトアミノフェン、オキシコドンなどを内服することで痛みの緩和を行います。
治療を受けない場合のリスク
適切な治療を受けずに放置すると、以下のリスクが伴います。
角膜潰瘍
角膜の傷がさらに深くなり、治療が遅れると視力が低下したままになる可能性があります。
角膜瘢痕
深い傷が治癒後に瘢痕として残り、視界を妨げることがあります。
角膜異物になりやすい人・予防の方法
角膜異物は、特定の状況や職業で発生リスクが高まるため、予防対策が特に重要です。ここでは、角膜異物になりやすい人の特徴と、その予防方法について詳しく解説します。
角膜異物になりやすい人
「原因」と重複しますが、リスクが高いのは以下のような方です。
作業環境
金属加工業、建築業、農業、溶接作業など、粉塵や小さな破片が飛び散る作業を行う人は、角膜異物が目に入るリスクが高まります。特に、目を保護するための適切な装備がない場合、このリスクは高まります。
屋外での活動が多い人
強風の日や砂嵐の中での活動は、砂やゴミが目に入る原因になります。自転車やバイクでの移動中にも同様の危険があります。
コンタクトレンズ使用者
不適切な使用や清潔さを保たない場合、コンタクトレンズに異物が付着し、それが角膜に損傷を与えることがあります。
予防の方法
保護眼鏡の使用
作業環境での事故を防ぐために、作業用の保護眼鏡を着用するようにしましょう。これにより、飛散する破片や粉塵から目を守ることができます。
環境に応じた対応
砂嵐や強風の中では、サングラスやゴーグルを着用して目を保護します。また、バイクや自転車の際にはゴーグルやシールド付きのヘルメットを利用するのが効果的です。
コンタクトレンズの適切な管理
コンタクトレンズの装着前後に手を清潔にし、レンズ自体も正しく消毒することが重要です。また、定期的に眼科検診を受けることでトラブルを未然に防ぐことができます。
異物が入った場合の対処法
異物が目に入った場合、無理に取ろうとせず、流水で目を洗い流し、眼科を受診してください。こすらないようにすることが大切です。




