監修医師:
柳 靖雄(医師)
電気性眼炎の概要
電気性眼炎は、過度の紫外線の曝露によって引き起こされる眼の障害です。
主に電気溶接や殺菌灯を使用する職業環境で、長時間紫外線にさらされることで角膜(眼球の黒目の部分)の表面が傷ついて発症します。
海水浴場やスキー場などの屋外活動でも起こることがあり、その場合は「雪眼炎(せつがんえん)」とも呼ばれます。
症状は、眼の充血や涙目、強い痛み、羞明(しゅうめい:異常にまぶしく感じること)、異物感、開眼困難、視力障害などがあります。
紫外線を浴びてから数時間後に症状が現れることがあり、夜間に急激に症状が悪化することもあります。
また、紫外線が水晶体(眼球のレンズの役割を担う器官)に吸収されて白内障の原因になる可能性があります。
診断は主に問診と細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査によっておこなわれます。
痛みが強く開眼が困難な場合は、点眼麻酔薬を使用して検査をすることもあります。
治療は主に抗菌薬や角膜保護薬などの点眼薬が使用されます。
多くの場合、症状は一晩から数日で自然に改善しますが、再発を防ぐためにはサングラスなどの遮光メガネの使用が重要です。
特に紫外線の強い環境で作業や活動をおこなうときは、適切な眼の保護具を使用することが推奨されます。
長時間の紫外線の曝露を避け、定期的に休憩を取ることも効果的です。
電気性眼炎の原因
電気性眼炎の主な原因は長時間の紫外線の曝露です。
特に強い光線を発する電気溶接や殺菌灯を使用する職業環境では、高濃度の紫外線にさらされるリスクが高くなります。
また、レジャー活動でも発生する可能性があり、海水浴場やスキー場などで長時間過ごすことで引き起こされる場合もあります。
海水浴場やスキー場では、太陽光や雪面からの反射光に含まれる紫外線が眼に直接当たり、角膜の表面を傷つけることで電気性眼炎(雪眼炎)の発症につながります。
電気性眼炎の前兆や初期症状について
電気性眼炎の初期症状は、眼の眩しさや軽度の痛みとして現れることがあります。
特徴的なのは、紫外線の曝露から数時間後に症状が急激に悪化することで、眼の充血や涙目、強い痛み、羞明、異物感、視力障害などの症状が現れます。
特に夜間に症状が激化することが多く、激烈な眼の痛みと羞明によって、開眼が難しくなることもあります。
急激な症状の悪化により、夜間に救急外来を受診するケースも多いです。
電気性眼炎の検査・診断
電気性眼炎の診断は主に問診と細隙灯顕微鏡検査によっておこなわれます。
問診では、大量の紫外線曝露の有無やその時間帯について詳細に確認します。
眼の痛みが強く、開眼が困難な場合は点眼麻酔薬を使用して、開瞼可能な状態にしてから診察をおこないます。
細隙灯顕微鏡検査は、専用の拡大鏡を使用し、細い光線を眼に当てて眼の状態を詳細に観察する検査です。
細隙灯顕微鏡検査によって、角膜表面の微細な変化や異常を確認できます。
より正確な診断をおこなうために、フルオレセイン染色検査が併用されることがあります。
フルオレセインは蛍光色を発する色素で、点眼すると角膜の傷や異常部位が鮮明に浮かび上がります。
フルオレセインで眼を染色した後に細隙灯顕微鏡の光線を当てると、損傷部位が黄緑色に光って見えるため、点状の傷を正確に把握できます。
電気性眼炎の治療
電気性眼炎の治療は主に点眼薬を用いておこなわれます。
感染予防のための抗菌薬や、角膜保護を目的としたヒアルロン酸を含む点眼薬が使用されます。
眼の痛みを和らげるために鎮痛薬を内服することもあります。
治療の一環として、患者は眼をこすることを控えたり、暗い部屋で休んだりすることが推奨されます。
一定期間光などの刺激を抑えることにより、症状の緩和や角膜の回復につながります。
コンタクトレンズの使用も避け、十分に眼を休ませることが重要です。
重症度によっては、眼帯を使用して眼を保護することもあります。
電気性眼炎の多くのケースでは、適切な治療と休養により1〜2日程度で症状が改善します。
しかし、症状が改善しない場合や悪化する場合は、眼科専門医の再診察を受けることが重要です。
電気性眼炎になりやすい人・予防の方法
電気性眼炎は、強い紫外線に曝露されることで発症するため、特定の職業や活動に従事する人が高いリスクにさらされやすくなります。
電気溶接の作業者や殺菌灯を扱う職業の人は、日常的に強い人工紫外線に近接して作業するため、特に注意が必要です。
特にアーク溶接(空気中の放電現象を利用して金属同士を溶接する作業)は強い紫外線を発生させるため、短時間の曝露でも電気性眼炎を引き起こす可能性があります。
また、レジャー活動においても注意が必要です。
海水浴やスキーに頻繁に行く人は、太陽光や雪面からの反射光に含まれる強い紫外線に長時間曝露されるリスクがあります。
特に雪面からの反射光による障害は、スキーヤーやスノーボーダーに多く見られます。
予防法としては、適切な眼の保護具の使用が重要です。
サングラスやゴーグルを着用することで、目に到達する紫外線の量を大幅に減少できます。
特に、UVカット機能を持つ眼鏡やサングラスの着用によって、大幅な紫外線をカットできるとされています。
電気溶接などの職業では、作業の種類に応じた適切な遮光度のゴーグルを選択することが重要です。
さらに、紫外線の強い時間帯や場所での外出を減らすことも効果的な予防策です。
定期的に休憩を取り、紫外線の強い環境から離れることで、累積的な曝露を減らせます。
帽子の着用なども紫外線対策に効果があります。