

監修医師:
栗原 大智(医師)
虚血性視神経症の概要
虚血性視神経症(きょけつせいししんけいしょう)は、目から脳へ視覚情報を伝える視神経への血流が妨げられることで起こる疾患です。この血流の障害により視神経が損傷を受け、その結果として突然の視力低下が生じることがあります。この病気には主に2つのタイプがあります。
1.動脈炎性虚血性視神経症(arteritic ischemic optic neuropathy:AION)
動脈に炎症が起きることが原因で発生します。特に、巨細胞性動脈炎という病気が関連しています。迅速な治療が必要な重篤なタイプです。
2.非動脈炎性虚血性視神経症(non-arteritic ischemic optic neuropathy、NAION)
より一般的なタイプで、動脈炎を伴わずに発生します。高血圧や糖尿病などの持病がある人に多く見られます。
どちらのタイプも、痛みを伴わず突然視力が低下する点が共通していますが、原因や合併症には違いがあります。早期に現れる症状を理解し、適切な治療を受けることが視力を守るために重要です。
虚血性視神経症の原因
この疾患の原因は、タイプによって異なります。
動脈炎性虚血性視神経症(AION)の原因
このタイプの主な原因は、視神経へ血液を供給する血管に炎症が起こることです。以下が主な要因です。
巨細胞性動脈炎
自己免疫疾患の一種で、頭部や首の動脈に炎症を引き起こします。この炎症によって血流が減少し、視神経に十分な酸素や栄養が届かなくなることでAIONが発生します。50歳以上の人に多く見られる病気です。
血管炎
上記以外の血管炎(血管の炎症)も、視神経への血流を妨げ、AIONを引き起こすことがあります。
非動脈炎性虚血性視神経症(NAION)の原因
非動脈炎性のタイプでは、血管の炎症を伴わずに視神経への血流が不足することが原因です。以下の要因が関連しています。
血管リスク因子
高血圧(血圧が高い状態)、糖尿病、コレステロール値の上昇、喫煙などが血流を悪くし、このタイプを引き起こしやすくします。
視神経の形状の影響
一部の人は視神経の構造が特殊で、血流障害に対して弱い傾向があります。例えば、視神経乳頭が小さい場合や、視神経乳頭の大きさに占める陥凹部の大きさの比率が高い場合などです。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中の呼吸が一時的に止まる病気で、血流が乱れることがあり、NAIONの発症に関連しています。
年齢
NAIONもまた50歳以上の人に多く見られます。
これらの原因を理解することで、リスクの高い人を特定し、予防策を講じることができます。
虚血性視神経症の前兆や初期症状について
この病気の症状を早期に発見し、迅速に眼科を受診することが重要です。主な症状は以下のとおりです。
1.突然の視力低下
最も特徴的な症状で、片目の視力が痛みを伴わずに突然失われます。数分から数時間で進行する場合があります。
2.視野の欠け
視野の一部が見えなくなる、または暗くなることがあります。
3.頭痛や頭皮の痛み(動脈炎性の場合)
特に巨細胞性動脈炎が原因のAIONでは、頭痛や頭皮を触ったときの痛み、特にこめかみ辺りの側頭部痛や、食事中にあごが痛む顎跛行(がくはこう)という症状がみられることがあります。この症状のみであれば、眼科受診は想定できませんが、巨細胞性動脈炎は内科医が診断できることがあります。
なお巨細胞性動脈炎は、中高年に起こる全身性の血管炎で側頭動脈炎とも呼ばれます。上記のような特徴的症状のほかに発熱、倦怠感、咳嗽や咽頭痛などの曖昧な全身症状を伴います。
これらの症状が急に現れた場合、すぐに医療機関で診察を受けてください。迅速な治療が視力を守るカギとなります。
虚血性視神経症の検査・診断
診断は次の手順で進められます。
1.問診
患者さんの過去の病歴や現在の症状について詳しく聞き取ります。
2.視力検査
視力がどの程度低下しているかを確認します。
3.眼底検査
視神経乳頭に腫れがないかなど、炎症の所見がないかを調べます。この腫れは虚血性視神経症の重要なサインです。
4.瞳孔反応検査
瞳孔が光にどのように反応するかを調べ、視神経に損傷があるかを確認します。
5.血液検査
炎症反応検査(赤血球沈降速度やC反応性タンパク)
巨細胞性動脈炎のような炎症が原因の場合、これらの値が高くなります。
一般血液検査
貧血や感染症の有無を確認します。
6.画像検査
MRIやCTスキャンを行い、ほかの疾患の可能性を排除します。巨細胞性動脈炎が疑われる場合は、超音波で側頭動脈の状態を確認することもあります。
7.動脈の組織検査
巨細胞性動脈炎が強く疑われる場合、こめかみにある側頭動脈の一部を採取して顕微鏡で詳細に調べます。
これらの検査を通じて、虚血性視神経症のタイプや原因を特定します。
虚血性視神経症の治療
治療法はタイプによって異なります。
動脈炎性虚血性視神経症(AION)の治療
1.ステロイド治療
巨細胞性動脈炎が原因の場合、高用量のステロイドを使用して炎症を抑えます。これは経口または注射で投与されます。
2.リスク因子の管理
高血圧や糖尿病などの持病を適切に治療し、全身の血流を改善します。
3.定期的な経過観察
ステロイド治療中は副作用を監視しながら、定期的に視力の状態を確認します。
非動脈炎性虚血性視神経症(NAION)の治療
1.経過観察
特別な治療法はなく、多くの場合、視力は自然に安定します。ただし、定期的な診察が必要です。
2.リスク因子の管理
- 血圧や血糖値を適切にコントロールします。
- コレステロール値を下げる薬を使用することがあります。
- 禁煙や睡眠時無呼吸症候群の治療も重要です。
3.視覚リハビリ
視力が大きく低下した場合、視覚補助具や訓練を活用します。
虚血性視神経症になりやすい人・予防の方法
虚血性視神経症を完全に防ぐことは難しい場合もありますが、以下の対策でリスクを減らすことができます。
1.定期的な眼科検診
視神経や血流に問題がないか早期に発見するために、定期的に目の状態をチェックしましょう。
2.生活習慣の改善
- 健康的な食事と運動を心がけ、血圧や血糖値を適切に管理しましょう。
- 喫煙をやめ、アルコールの摂取を控えめにします。
3.症状の早期認識
視力低下や頭痛など、異常を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。
これらの対策を取ることで、虚血性視神経症のリスクを最小限に抑えることが可能です。