監修医師:
柳 靖雄(医師)
目次 -INDEX-
春季カタルの概要
春季カタルは、アレルギー性結膜炎の慢性型・重症型として位置づけられる病気で、主に小児や青年期の男子に多く発症するのが特徴です。春季カタルに罹患した患者の多くがアトピー性皮膚炎を併発していることから、アレルギー体質の人が発症しやすい病気だと考えられています。
季節の変わり目、とくに春から夏にかけて症状が悪化することが多く、目にある結膜や角膜周辺に強い炎症を引き起こします。まぶたの裏側の結膜の部分に、まるで石垣のようなポコポコとした突起(巨大乳頭)が生じ、激しい目のかゆみや異物感、充血などが主な症状です。重症化すると角膜に潰瘍ができることもあり、視力にまで影響がおよぶこともあります。
春季カタルの原因
春季カタルは他のアレルギー疾患と同様に、人体の免疫機構がアレルゲンに対して過剰に反応することが原因となり発症します。免疫反応により、目の結膜に炎症が起こるのがアレルギー性結膜炎で、春季カタルはその重症型の症例です。原因となるアレルゲンは、花粉やホコリ、ダニ、ペットの毛など多岐にわたり、空気中にあるこれらの物質が目に入り込むことで症状が生じます。
また、上記以外のアレルゲンとして、紫外線が引き金となり症状が生じる場合もあります。日差しが強い時期になると、紫外線が刺激となり炎症を悪化させることがあります。
春季カタルの前兆や初期症状について
春季カタルでは、目のかゆみや異物感、目の充血が特徴的な初期症状です。目の不快感や軽い痛みを感じると、目を頻繁にこすることも多くなります。他にも、涙の量が増えたり、光に対して過敏になったりすることも症状としてよくみられます。
症状が悪化すると、強いかゆみや異物感により、まともに目を開けることも難しくなります。
また炎症が強いと、角膜にも影響がおよびます。角膜が傷つき、角膜びらんや潰瘍を引き起こすケースもあります。場合によっては、視力低下や視力障害をともないます。視界がぼやけたり、物が二重に見えるといった視覚の異常もあらわれることがあり、患者の日常生活に支障をきたします。
春季カタルの検査・診断
春季カタルでは、患者の症状や病歴の確認から行われます。目のかゆみ、充血、涙の増加などの典型的なアレルギー症状の有無など、患者の目の状態を確認したうえで、確定診断や治療に向けて以下の検査を行います。
視力検査
春季カタルは角膜や結膜に影響をおよぼし、視力が低下することがあります。そのため、視力検査を行い、症状の程度や目の機能への影響を確認します。
アレルギー検査
春季カタルでは、結膜と涙液のアレルギー検査を行います。結膜や目ヤニ、涙液を拭い、白血球の一種である好酸球の有無もしくはIgE抗体が一定値以上あるかを確認します。アレルギー検査で春季カタルを引き起こすアレルゲン(花粉やダニなど)を特定することで、治療や予防に役立てることが可能です。
血液検査
血液検査では、血清抗原特異的IgEなどを測定します。
血液検査は、春季カタルの診断だけでなく、患者のアレルギーの重症度やリスクをより正確に把握するためにも役立ち、適切な治療の選択につながります。
春季カタルの治療
春季カタルの治療では、アレルゲンの回避とともに薬物療法がとられます。症状の程度や進行具合に応じて、さまざまな薬が用いられます。
軽度から中等度の症状に対しては、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の点眼薬が処方されるケースが多いです。アレルギー反応を引き起こすヒスタミンの働きを抑え、目のかゆみや充血を緩和する効果が期待できます。
中等度以上の病状では、免疫抑制点眼薬やステロイド点眼薬が治療薬として用いられます。ただし、これらの点眼薬では副作用などのリスクも存在するため、春季カタルを含むアレルギー疾患の治療に精通した医師の診療のもと、効果をみながら慎重におこなう必要があります。
春季カタルになりやすい人・予防の方法
春季カタルは、アレルギー体質の人に多く見られます。アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を抱えている人は、春季カタルの発症リスクが高いとされています。また、春や夏に症状が悪化しやすいことから、季節性の要因も関係していると考えられています。
予防方法としては、アレルゲンとの接触を避けることが重要です。花粉やホコリ、ダニなどが発症の原因になることが多いため、アレルゲンをできるだけ避け、体内に入れないようにする対策が必要になります。具体的にできる予防策としては、空気清浄機を使用するなどして、アレルゲンの除去を心がけることが予防につながります。
また、紫外線に当たることで春季カタルの症状を悪化させるケースもあります。外出時にはサングラスや帽子を使って目を保護したり、日差しの強い日や花粉の多い季節には、できるだけ屋外での活動を控えたりするのも、予防策の1つとなります。
参考文献