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弱視
柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

弱視の概要

弱視とは、乳幼児期に片目あるいは両目への正常な視覚刺激がなかったことにより視力の発達が遅れ、眼鏡やコンタクトレンズを使用しても十分な視力が得られない状態を指します。

弱視は人口の2〜3%の割合で発症するとされています。
(出典:佐藤美保「弱視研究の新たな波」浜松医科大学医学部眼科学講座

弱視の原因は屈折異常や斜視、不同視、形態覚遮断(けいたいかくしゃだん)などによって、視覚情報を受け取る場所である大脳に異常が起きることだといわれています。

視覚が発達する時期(訓練によって弱視の改善が期待できる時期)である「視覚感受性期」は1歳6か月頃にピークを迎え、通常8歳頃に終わります。
(出典:公益社団法人 日本視能訓練士協会「3歳児健診の視覚検査」

視覚感受性期は視力の発達が急速に進むため、弱視を早めに発見してできるだけこの時期に治療を始めることが大切です。

子どもの目の健康を守るために定期健康診査は必ず受け、その他にも不安がある場合は眼科医へ相談しましょう。

弱視

弱視の原因

弱視は、視覚感受性期で十分な視覚刺激がないことが原因で以下の症状が起こり、正常な視力が得られなくなる状態を指します。

  • 屈折異常
  • 不同視
  • 斜視
  • 形態覚遮断

屈折異常

屈折異常とは、両目の遠視や近視、乱視を指します。

なかでも多いのは遠視で、幼い頃から近くの物がはっきり見えていないと視力が発達しにくくなり、弱視につながります。

早産で産まれた子どもや、出生体重が軽い子どもがなりやすい未熟児網膜症も、屈折異常が原因で視力が発達しにくくなります。

不同視

不同視とは、遠視や近視、乱視による視力の左右差が大きいことで起こる障害で、視力がより低下している側の目が使われなくなることにより弱視が進行していきます。

もう片方の目の視力は正常で日常生活上に支障がないことも多いため、気づきにくい場合もあります。

斜視

斜視とは片目の視線が正常な方向を向かず、両目が同じ方向を向いていない状態を指します。

片方の目に眼球を動かす筋肉や神経の異常、脳の病気などがあった場合に両目の視線がずれる現象が起こります。

視線がずれている方の目が使われにくくなるため視力が発達せず、弱視につながります。

形態覚遮断

形態覚遮断とは、眼瞼下垂(がんけんかすい)や角膜混濁、白内障などが原因で眼球のなかの網膜に光が入りにくい状態を指します。

網膜に光が入らないと眼球のなかで正しい像が結ばれないため、正常な視力の発達がさまたげられて弱視につながります。

弱視の前兆や初期症状について

弱視の症状として、主に以下が挙げられます。

  • テレビや本を見るときに極端に近づいて見る
  • 目を細めたり顔を傾けたりして物を見る
  • 遠くの物や近くの物がはっきりと見えていない
  • 片目の視線が内側や外側に寄っている
  • 目つきに左右差がある

両目の屈折異常がある場合は、両目ともに視力が発達していないため、物を見るときに極端に近づく様子がうかがえます。

不同視の場合は片目のみが見えにくいため、顔を傾けて視力がよい方の目で物を見る仕草が出やすいです。

斜視の場合は両目の目線が異なる方向を向いていたり、左右の目つきに差が出たりします。

このように原因により症状は異なりますが、弱視があっても明確な症状が現れないこともあるため、子どもの頃から定期的な眼科検診を受けることが重要です。

弱視の検査・診断

弱視の疑いがある場合は以下の検査を実施し、結果を総合的に判断して弱視の有無や原因を診断します。

  • 視力検査
  • 屈折検査
  • 眼位検査・眼球運動検査
  • 両眼視機能検査

症状の内容や自覚し始めた時期、家族に弱視の人がいるかどうかについても確認することがあります。

視力検査

視力検査は弱視の診断において基本的な検査です。

年齢や理解力に応じて、絵や図形、Cの形をしたランドルト環を用いて測定します。

片目ずつ視力を測定し、左右それぞれの視力や両目の視力の差を調べます。

屈折検査

近視や遠視、乱視などの屈折異常の有無について調べます。

屈折の程度を正確に調べるには目がピント調節をしていない状態にする必要があるため、調節麻痺剤を点眼し、一時的に目の調節機能をコントロールしてから検査をおこなう場合もあります。

眼位検査・眼球運動検査

斜視の有無を調べるため、眼位検査や眼球運動検査をおこないます。

眼位検査では両目の位置関係や視線について調べ、眼球運動検査では両目の眼球の動きを検査します。

両眼視機能検査

両眼視機能検査とは、両目で見た物の視覚情報を1つの像として結ぶ能力を見る検査です。

大型弱視鏡やチトマスステレオテストといった機械を用いることが多く、治療の効果を測定する際にも用いる検査方法です。

弱視の治療

弱視の主な治療方法は以下があります。

  • 屈折異常の矯正
  • 健眼遮蔽法(アイパッチ療法)
  • アトロピンペナリゼーション療法

その他、白内障や眼瞼下垂、角膜混濁といった目の構造に問題がある場合は、それぞれに応じた治療を実施します。

屈折異常の矯正

眼鏡やコンタクトレンズを装着して、近視や遠視、乱視を矯正する方法です。

目の状態に合った矯正器具を使うことで、網膜に鮮明な像を結べるようにします。

脳が正しい視覚情報を受け取ることで、弱視の改善につながります。

健眼遮蔽法(アイパッチ療法)

健眼遮蔽法(けんがんしゃへいほう)は健眼(弱視でないほうの目)をアイパッチで隠し、弱視の目を日常生活で使う方法です。

弱視の目だけで物を見るように訓練することで、視力の発達が期待できます。

1日のうちで実施する時間や健眼遮蔽法を継続する期間は、目の状態によって決めます。

アトロピンペナリゼーション療法

健眼にアトロピンを点眼して目の調節力を麻痺させ、積極的に弱視の方の目を使わせる方法です。

健眼遮蔽法(アイパッチ療法)ができない子どもへの治療で効果が期待できます。

弱視になりやすい人・予防の方法

弱視になりやすい人は以下のような特徴があります。

  • 家族に弱視の人がいる
  • 早産や出生体重が軽い状態で産まれた

弱視や斜視、強度の近視や遠視、乱視などの目の疾患を抱えている人が家族のなかにいる場合、遺伝的な理由で弱視のリスクが高くなります。

早産や出生体重が軽い状態で産まれた子どもも、目の機能が未発達な状態で産まれてくることが多いため、未熟児網膜症のリスクがあり、弱視につながる可能性があります。

これらをふまえて、弱視の予防のためには以下のことに気をつけましょう。

  • 定期的に眼科検診を受ける
  • 日頃から子どもの様子を観察する
  • 近視や遠視、乱視などの治療を継続する

1歳6か月健診や3歳児健診などは必ず受けて、目の発達に異常がないか調べましょう。

定期的な眼科検診以外でも気になることがあれば、早めに眼科医へ相談することをおすすめします。

子どもの目つきや眼球の動き、物の見方なども日頃からよく観察するようにしましょう。

すでに近視や遠視、乱視の治療をしている場合でも、眼鏡やコンタクトレンズを適切に使用し、経過観察を受けることが大切です。


関連する病気

  • 眼瞼下垂症
  • 角膜混濁症
  • 未熟児網膜症

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