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乱視
柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

乱視の概要

乱視は、目の角膜や水晶体の形状に歪みが生じ、光が正しく屈折されないために視力がぼやける状態です。正常な目では角膜と水晶体が均一な曲率を持ち、光が一つの焦点に集まります。一方、乱視のある目では曲率が不均一なため光が複数の焦点に分散してしまいます。その結果、視界が歪んだりぼやけたりするのです。

乱視の程度は個人によって異なり、軽度の乱視では日常生活に支障をきたさない場合もありますが、重度の乱視では視力の低下、眼精疲労、弱視が顕著になり、眼鏡やコンタクトレンズなどの矯正が必要です。乱視は近視や遠視と併発する場合も多く、これらの屈折異常が複合的に影響を与えることがあります。

乱視は遺伝的な要因も強く関与しており、家族に乱視のある人がいる場合、そのリスクが高まるとされています。一方、後天的な要因、例えば眼外傷や手術後の影響なども乱視の原因となり得ます。さらに、加齢によって角膜の形状が変化することで乱視が進行する可能性もあります。

乱視の治療は主に眼鏡やコンタクトレンズの使用があります。これらの矯正具は、角膜や水晶体の不均一な曲率を補正する役割を果たし、視力を改善する効果です。さらに、レーシック手術などの外科的手法によって角膜の形状を修正する方法もあります。乱視は、正しい診断と適切な治療によって、日常生活の質を大幅に向上させることが可能です。

乱視の原因

乱視の原因は主に角膜や水晶体の形状に起因します。角膜や水晶体が均一な曲率を持たない場合、光が不均一に屈折し、複数の焦点に分散するため視界がぼやけます。これが乱視の主な原因です。
具体的には、遺伝的要因、外傷や手術後の影響、加齢、全身疾患などがあります。

遺伝的要因

遺伝的要因は乱視の大きな原因となります。家族に乱視の人がいる場合、その子供も乱視になるリスクが高まります。これは遺伝的な影響によって角膜や水晶体の形状が変わりやすくなるためです。形状が変わると焦点が一か所に定まらなくなるため乱視が生じます。

外傷や手術後の影響

後天的な要因も乱視の発生に寄与します。例えば、外傷や手術後の瘢痕組織が角膜の形状を変えてしまうことがあります。さらに、長期間にわたる目の酷使や不適切な目のケアも角膜や水晶体に影響を与え、乱視を引き起こす可能性があります。

加齢

加齢も乱視の原因の一つです。年齢を重ねると、角膜や水晶体の形状が変化しやすくなり、乱視が進行する場合があります。これは、角膜の弾力性が低下し、形状が変わりやすくなることや目の調整力が低下するためです。

全身疾患

その他の原因としては、角膜疾患や特定の全身疾患が挙げられます。例えば、円錐角膜や糖尿病などの疾患は角膜の形状を変え、乱視を引き起こすことがあります。円錐角膜の原因ははっきりしていませんが、アトピー性皮膚炎やダウン症候群など全身疾患に合併し、乱視の症状を引き起こします。糖尿病は糖尿病網膜症につながり、乱視や白内障を引き起こします。これらの疾患は、早期発見と適切な治療が重要です。

乱視の原因を理解することで、予防や適切な治療が可能となります。定期的な眼科検診を受けることで、早期に乱視を発見し、適切な対策を講じることが求められます。

乱視の前兆や初期症状について

乱視の前兆や初期症状は、視界の歪みやぼやけ、特定の距離における視力の低下などが挙げられます。これらの症状は、しばしば他の視力障害と混同されることがあるため、正確な診断が必要です。

視界の歪み

視界の歪みは乱視の典型的な症状です。物を見るときに、直線が曲がって見えたり、物体が二重に見えたりすることがあります。これは、光が目の中で不均一に屈折し、複数の焦点に分散するために起こります。

視力のぼやけ

視力のぼやけも乱視の初期症状の一つです。特定の距離における視力がはっきりしない場合、例えば近くの物がぼやけて見える、あるいは遠くの物がはっきり見えないといった症状が現れることがあります。これも、光が1つの焦点に集まらないために起こります。

目の疲れや頭痛

目の疲れや頭痛も乱視の前兆として現れることがあります。視力が不安定であるため、目を酷使して焦点を合わせようとする結果、目の筋肉が疲労し、頭痛が引き起こされることがあります。特に、長時間の読書やコンピュータ作業の後にこれらの症状が現れる場合が多いです。

夜間視力の低下

また、夜間視力の低下も乱視の初期症状として見られることがあります。暗い場所で物を見るときに、視界がぼやけたり、光源が眩しく感じられたりすることがあります。これは、光の屈折異常が顕著になるためです。

これらの症状が現れた場合、早期に眼科医の診察を受けるのが重要です。乱視は早期発見と適切な治療によって、視力の改善が期待できます。自覚症状が軽度であっても、定期的な眼科検診を受けることで、乱視を早期に発見し、適切な対策を講じることが可能です。

乱視の検査・診断

乱視の検査や診断は、専門の眼科医によって行われます。検査方法はいくつかあり、視力の状態や角膜の形状を詳しく調べることで乱視の有無を確認します。

視力検査

まず、一般的な視力検査が行われます。この検査では、視力表を使って視力の度合いを測定し、どの距離で視力がぼやけるかを確認します。視力検査は、乱視だけでなく、近視や遠視の有無も確認するために重要なステップです。

角膜トポグラフィー検査

次に、角膜の形状を測定するための検査が行われます。角膜トポグラフィーと呼ばれるこの検査では、角膜の形状を解析し、乱視の程度を評価します。角膜トポグラフィーは、目に直接触れることなく、短時間で正確なデータを得ることができるため、非常に有効な検査方法です。

レチノスコープ検査

さらに、レチノスコープを用いた検査も行われます。この検査では、目に光を当てて反射光を観察し、目の屈折異常を確認します。レチノスコープ検査は、乱視の有無だけでなく、乱視の程度や方向も詳しく知ることができます。

他動的屈折検査

また、オートレフケラトメーターという機器を使用した自動屈折検査も行われます。この機器は、目の屈折力を自動的に測定し、乱視の程度を数値化します。オートレフラケラメーター検査は、短時間で結果が得られるため、多くの眼科で広く使用されています。

矯正器具の処方

最後に、眼鏡処方のための試行錯誤が行われます。視力検査の結果や角膜の形状測定のデータを基に、適切な度数の眼鏡やコンタクトレンズを試着し、最適な矯正具を決定します。乱視の矯正には、特別なレンズが必要となる場合もあります。

これらの検査を総合的に行うことで、乱視の正確な診断が可能となります。眼科医は、これらの検査結果を基にして、乱視の程度や原因、そして最適な治療方法を判断します。乱視の診断は、正確な検査と適切な評価が重要であり、早期発見によって適切な矯正や治療が行えます。

乱視の治療

乱視の治療にはいくつかの方法がありますが、主に眼鏡、コンタクトレンズ、そして外科的手法の3つに大別されます。患者さんの乱視の程度や生活スタイルに応じて、最適な治療法を選択することが重要です。

眼鏡による矯正

眼鏡による矯正は、乱視の矯正において最も一般的な方法です。乱視用の眼鏡レンズは、角膜や水晶体の不均一な曲率を補正するために特別に設計されています。これにより、光が正しく屈折され、焦点が一か所に定まるため視界がクリアになります。眼鏡は手軽で安全な方法であり、多くの患者さんにとって効果的です。

コンタクトレンズによる矯正

次に、コンタクトレンズによる矯正です。コンタクトレンズには、ハードレンズとソフトレンズの2種類があります。ハードレンズは、角膜の形状を補正する力が強く、乱視の矯正に効果的です。一方、ソフトレンズも乱視用に特別なデザインが施されており、快適な装着感を提供します。コンタクトレンズは、スポーツやアクティブな生活を送る方にとって便利な選択肢です。

外科的手術による矯正

さらに、外科的手法もあります。レーシック(LASIK)やPRKといったレーザー手術は、角膜の形状を直接修正することで乱視を矯正します。これらの手術は、短時間で視力の改善が期待できるため、多くの患者さんに選ばれています。ただし、手術にはリスクも伴うため、十分な説明とカウンセリングを受けるのが重要です。

その他にも、乱視の原因となる角膜疾患がある場合には、その治療が優先されることがあります。例えば、円錐角膜などの疾患は、専用のハードコンタクトレンズや角膜移植手術によって治療されることがあります。

乱視の治療は、患者さんの生活の質を大きく向上させる可能性があります。適切な矯正具を使用することで、日常生活の中での視力の悩みを軽減し、より快適な生活を送ることができます。眼科医と相談しながら、自分に合った最適な治療法を見つけることが大切です。

乱視になりやすい人・予防の方法

乱視になりやすい人には、いくつかの特徴があります。

遺伝的要因

家族に乱視のある人がいる場合、子どもも乱視であるリスクが高まります。遺伝的な要因が強く関与しており、角膜や水晶体の形状が遺伝的に影響を受けやすいからです。

環境要因特定の職業や生活習慣も乱視のリスクを高めることがあります。例えば、長時間コンピュータやスマートフォンを使用する人は、目の酷使が続くことで角膜や水晶体の形状に影響を与えることがあります。これにより、乱視が発生する可能性が高まります。

加齢

さらに、加齢も乱視の原因の一つです。年齢を重ねると、角膜や水晶体の弾力性が低下し、形状が変化しやすくなります。これにより、乱視が進行することがあります。特に40歳以上の人は、定期的な眼科検診を受けることが推奨されます。

乱視の予防方法

乱視の予防には、いくつかの方法があります。

・目を酷使しない
まず、目を酷使しないようにすることが重要です。長時間のスマホやパソコンの使用を避け、適度な休憩を取るよう心がけましょう。また、目の健康を保つために、バランスの取れた食事や適度な運動も効果的です。

・定期的な眼科検診
さらに、定期的な眼科検診を受けるのも大切です。早期に視力の変化を発見し、適切な対策を講じることで、乱視の進行を防ぐことができます。特に家族に乱視のある人や、目を酷使する職業の人は、定期的な検診を受けることでリスクを軽減できます。

・サングラスの活用
その他にも、紫外線から目を守るために、サングラスを使用することも予防の一環として有効です。紫外線は角膜や水晶体にダメージを与え、乱視を引き起こす可能性があるため、屋外での活動時にはサングラスを使用することが推奨されます。

以上のように、乱視になりやすい人にはいくつかの特徴があり、予防のためには生活習慣の見直しや定期的な検診が重要です。目の健康を保つために、日常生活の中でできることから取り組んでみてください。


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