結膜炎

監修医師：
柳 靖雄（医師）

結膜炎の概要

結膜炎は、目の結膜が炎症を起こす病気です。結膜とは、白目とまぶたの裏側を覆う半透明な膜で、眼球を保護し、潤いを与える役割を担っています。外部からの刺激や細菌、ウイルス、アレルゲンによって炎症が引き起こされることがあります。

結膜炎の主な症状には、目の充血が挙げられます。眼球の表面が赤くなり、ときには目が痛むこともあります。また、目やにの増加やまぶたの腫れ、目のかゆみも一般的な症状です。病原体によって症状の特徴が異なり、細菌性結膜炎、ウイルス性結膜炎、アレルギー性結膜炎などの種類があります。

正常な結膜の上皮細胞は外部の微生物に対してバリアを形成しますが、ドライアイや強い目のこすりなどによって結膜が傷つくと、炎症が発生しやすくなります。早期の適切な治療が重要で、眼科での診断と治療を受けることで、症状の進行を抑え、回復を促進できます。

結膜炎は基本的には自然治癒しますが、重症化すると角膜に影響を及ぼし、視力障害のリスクが高まることもあります。症状が見られた場合は早めに専門医の診察を受け、適切な治療を行うことが大切です。

結膜炎の原因

結膜炎は、大きく分けて細菌性、ウイルス性、アレルギー性の三つに分類されます。それぞれの原因を詳しく見ていきましょう。

細菌性結膜炎の原因

細菌性結膜炎は、結膜が細菌に感染することによって起こります。インフルエンザ菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌が主な原因菌です。黄色ブドウ球菌は、健康な人の皮膚や鼻、喉に常在するため、目に直接感染することは少ないですが、目に傷がついたり、免疫力が低下したりしている場合に感染しやすくなります。細菌性結膜炎は目やにが多く、ときには痛みを伴うことがあります。また、クラミジアや淋菌などの性感染症が原因で結膜炎が発症することもあります。これらの感染は、感染者の体液が目に入ることで起こります。さらに、コンタクトレンズの不適切な保存や使用による感染も問題となっており、保存液の汚染が原因で緑膿菌などが結膜に感染することがあります。

ウイルス性結膜炎の原因

ウイルス性結膜炎は、主にウイルス感染が原因で発症します。多く見られるのがアデノウイルスによるもので、このウイルスは感染力が強く、人から人への感染が一般的です。アデノウイルスが原因となる代表的な結膜炎には、流行性角結膜炎と咽頭結膜熱（プール熱）があります。流行性角結膜炎は目の強い充血や目やにを伴い、プール熱は発熱や喉の痛みを引き起こします。また、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによって発症する急性出血性結膜炎もあります。この病気は短期間で白目に出血が現れるのが特徴です。ウイルス性結膜炎は一度感染すると治癒までに時間がかかるため、感染防止対策が重要です。

アレルギー性結膜炎原因

アレルギー性結膜炎は、花粉、ハウスダスト、動物の毛、さらにはコンタクトレンズの汚れなど、特定のアレルゲンに対する体の過敏反応によって引き起こされます。アレルギー性結膜炎は、季節性と通年性の二つに分類されます。季節性のものは、春や秋に多く飛散する花粉が原因であり、これに対して目のかゆみや充血、涙の過剰分泌などの症状が現れます。一方、通年性のアレルギー性結膜炎は、ハウスダストやペットの毛などの常に存在するアレルゲンが原因です。これらのアレルギー性結膜炎は、アレルギー反応を抑えるための抗アレルギー薬や、症状が重い場合はステロイド点眼薬による治療が必要です。さらに、アレルゲンを避けることが症状の予防に重要です。

結膜炎の前兆や初期症状について

結膜炎は、結膜に炎症が生じる病気であり、その前兆や初期症状にはいくつかの共通点があります。まず、結膜の充血が顕著な症状で、目が赤くなることが多いです。これに加えて、目やにが増えたり、朝起きたときに目が開きにくくなったりすることがあります。目のかゆみもよく見られる症状で、目をこすることで症状が悪化することがあるため、注意が必要です。また、目に異物が入っているような不快感や、涙の過剰分泌が見られることもあります。

細菌性結膜炎では、目やにが多く、ときには痛みを伴うことがあります。感染力が強い細菌によって角膜に炎症が広がる場合があり、視力障害を残すリスクが高いです。

ウイルス性結膜炎の場合、発熱や喉の痛み、頚部リンパ節の腫れなどの全身症状を伴うことが多く、結膜の充血は重度になることがあります。特に流行性角結膜炎では、角膜に点状の濁りが生じ、視力低下を引き起こすことがあります。

アレルギー性結膜炎では、鼻汁や鼻閉など、ほかのアレルギー症状も併発することがあります。重症な場合には、春季カタルと呼ばれる病気が発生し、まぶたの裏に粘膜の盛り上がりができることがあります。これにより角膜が傷つき、重症の場合には角膜潰瘍を引き起こし、最悪の場合には失明に至ることもあります。

結膜炎の症状が見られた場合、まずは眼科の受診が推奨されます。眼科での適切な診断と治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、早期に治療を開始できます。また、呼吸器の症状が強い場合には、呼吸器内科の受診も考慮すべきです。なかでもウイルス性結膜炎の場合、全身症状を伴うことが多いため、総合的な治療が必要となることがあります。

結膜炎の検査・診断

結膜炎の検査・診断には、目の状態を評価する検査と原因を特定する検査があります。まず、目の状態を評価する際には、通常視力検査と細隙灯顕微鏡検査が行われます。視力検査では、結膜炎が進行して角膜に炎症が及んでいる場合、視力低下の有無を確認します。細隙灯顕微鏡検査では、結膜の炎症の程度や角膜の状態、可能性がある合併症などを詳細に観察できます。

次に、原因を特定するための検査として、眼脂検査や血液検査が行われます。眼脂検査では、目やにからウイルスや細菌を採取し、特定することで、細菌性結膜炎やウイルス性結膜炎などの診断に役立ちます。細菌性結膜炎の場合は、適切な抗生物質の処方につながるため、重要な情報となります。血液検査では、アレルギー性結膜炎の場合にはアレルゲンを特定するために行われ、全身症状の評価にも役立ちます。

また、近年ではアデノウイルス検査キットを用いて、迅速にアデノウイルスの有無の判断が可能となっています。このような診断キットは、早期の診断と治療に貢献しています。
結膜炎の検査・診断では、これらの検査を組み合わせて病因を明確にし、適切な治療計画を立てることが重要です。早期の診断と適切な治療が、症状の改善と合併症の予防につながります。眼科医の指導のもと、定期的なフォローアップも重要です。

結膜炎の治療

結膜炎の治療方法は、その原因に応じて異なります。まず、細菌性結膜炎では、主に抗生物質を含んだ点眼薬が使用され、重症な場合や角膜に混濁が見られる場合には眼軟膏や内服薬も併用されます。

ウイルス性結膜炎では、アデノウイルスなどの抗ウイルス薬が存在せず、ステロイド点眼や抗菌薬の点眼が炎症の抑制に用いられます。ヘルペス性結膜炎には、抗ヘルペス薬の眼軟膏が推奨されます。また、ウイルス性結膜炎が進行すると細菌感染を併発することがあり、抗生物質入りの点眼薬が処方される場合もあります。

アレルギー性結膜炎では、ステロイド点眼や抗アレルギー薬の内服が行われ、原因物質の除去も重要視されます。重症な場合には免疫抑制効果のある点眼薬が考慮されますが、副作用によるリスクも注意が必要です。

治療にあたっては、症状の進行具合や患者さんの体質に応じて適切な薬剤が選ばれ、定期的な眼科検診が推奨されます。また、ウイルス性結膜炎の伝染力が強いため、手洗いや個人用のタオルの使用、眼薬の共用を避けることが重要です。アレルギー性結膜炎では、季節性や通年性の原因物質を避けることで再発を予防する努力も必要です。

総じて、結膜炎の治療には正確な診断とそれに基づく適切な薬剤の使用が不可欠であり、早期の治療が症状の軽減と回復につながります。治療方針は個々の症例に合わせて決定されるべきであり、患者さん自身も積極的な予防策と定期的な眼科検診の受診を心がけることが重要です。

結膜炎になりやすい人・予防の方法

結膜炎は、ウイルスや細菌が原因で起こる目の病気であり、幼児から高齢者にかけて広く見られます。結膜炎になりやすい人々は、以下の点に注意する必要があります。

まず、手指やほかの表面に付着したウイルスや細菌が目に触れることによる感染が多いため、こまめな手洗いが重要です。公共の場や人が集まる場所から帰ったら、手洗いを徹底しましょう。また、目をこすったりする際にも清潔な手で行うことが大切です。

また、アレルギー性結膜炎の場合は、特定のアレルゲンに過敏に反応しやすい傾向があります。花粉症の季節には、外出時にゴーグルを着用するなどして、目に花粉が入るのを防ぐことが推奨されます。家庭内では、定期的な掃除やハウスダストの除去、ダニ防止対策を行うことも重要です。

結膜炎は軽く見られがちですが、適切な治療が行われないと症状が悪化し、視力低下などの後遺症を引き起こすこともあります。そのため、早期の診断と適切な治療が重要です。症状が長引く場合や、症状が重篤な場合には、速やかに眼科を受診しましょう。

以上の対策を踏まえて、日常生活のなかで結膜炎のリスクを抑えるよう努めましょう。定期的な眼科検診も忘れずに行うことで、早期発見と早期治療につながり、健康な目の維持に役立ちます。