

監修医師:
上田 莉子(医師)
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関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医
プランマー病の概要
プランマー病とは、甲状腺にできた腺腫やがんといった結節が甲状腺ホルモンを過剰に分泌することで、脳下垂体で甲状腺刺激ホルモン分泌が抑制され、甲状腺の正常組織が機能しなくなる病気です。 プランマー病は、1913年にHenry S. Plummerが報告したのが最初1)です。報告当初は、病気の定義として、結節の数には言及されていませんでした。のちに、結節が多数あるタイプや、甲状腺機能が必ずしも増加しないタイプが明らかとなったことで、結節の数や甲状腺中毒症の有無を問題としない自律性機能性甲状腺結節(autonomously functioning thyroid nodule:AFTN)という概念と呼称が普及し、プランマー病もAFTNに含まれる状態となりました。 AFTNのうち、約2~5%は結節自体が濾胞がんや乳頭がんです。約20~25%は、結節自体は良性であるものの、切除された組織の中にがんの合併を認めることがあります2)。 過機能性甲状腺結節(Hyperfunctioning thyroid nodule)、中毒性多結節性甲状腺腫(Toxic multinodular goiter:TMNG)といった言葉もあり、これらもAFTNに含まれます。AFTNと自己免疫性のBasedowを合併することもあり、この場合はMarine-Lenhart症候群と呼ばれます。プランマー病の原因
プランマー病は、甲状腺に結節ができ、その結節から分泌される過剰な甲状腺ホルモンによって起こる病気です。 結節が分泌する過剰な甲状腺ホルモンのために、甲状腺機能亢進症といって、動機や頻脈、手の震え、疲れやすさなどの、Basedow病に似た症状をきたします。Basedow病は自己免疫性の病気ですが、このプランマー病は非自己免疫性であり、結節がホルモンを過剰に分泌していることが原因であるのが特徴のひとつです。プランマー病の前兆や初期症状について
プランマー病では、甲状腺機能が亢進したときにみられる甲状腺中毒症の症状と、甲状腺結節の症状のどちらもがみられることが多いです。 プランマー病の症状は、甲状腺中毒症の症状として、全身症状、循環器症状、神経筋症状、消化器症状などの多様な訴えを呈します。甲状腺中毒症の症状は各部において以下のようになります。 全身症状- 体重減少
- 多汗
- 易疲労感
- 暑がり
- 微熱
- 月経不順
- 無月経
- 動悸
- 頻脈
- 労作時息切れ
- 不整脈
- 食欲亢進
- 下痢・軟便
- 手指振戦
- いらいら
- 多動
- 不眠
- 情緒不安定
- 筋力低下
- 頸部のしこり
- 頸部違和感
- 呑み込みのときの違和感
- 喉の絞扼感
プランマー病の検査・診断
プランマー病の診断のためには、血液検査と画像検査を行います。 まず、血液検査では、一般的な生化学検査の項目や甲状腺に関わるホルモンの値、甲状腺自己抗体を調べます。 一般的な生化学検査では、甲状腺中毒症があると、血清コレステロールは低値になり、血清アルカリフォスファターゼは高値になります。 甲状腺に関わるホルモンについて、甲状腺刺激ホルモン(TSH)は抑制されます。甲状腺ホルモンについては、FT3やFT4は正常で潜在性甲状腺機能亢進の状態である場合と、高値で甲状腺機能亢進を呈している場合の2パターンがあります。 通常、プランマー病は非自己免疫性であり、甲状腺自己抗体であるTRAb、抗Tg抗体、抗TPO抗体は陰性を示します。ただし、Marine-Lenhart症候群の場合は、Basedow病を合併するため、TRAbは陽性となります。 次に、画像検査について説明します。プランマー病の画像検査は、以下を行って甲状腺ホルモンを自律的に分泌する結節の有無、性状や数などを調べます。- 頸部超音波検査
- シンチグラフィ
- 頸部単純X線・頸部CT/MRI
- 血液検査所見において、非自己免疫性の甲状腺機能亢進あるいは潜在性甲状腺機能亢進がみられる
- 触診あるいは頸部超音波検査において甲状腺結節を認める
- シンチグラフィで結節に一致して強い集積と結節以外の甲状腺組織の取り込み低下がみられる
プランマー病の治療
プランマー病の治療には、以下の4つがあります。- 薬物療法
- 外科的治療
- 放射性ヨウ素内服療法
- 経皮的エタノール注入療法(PEIT)
プランマー病になりやすい人・予防の方法
プランマー病は、現時点では予防法は確立されていません。そのため、予防より、病気を発見し治療介入することが大事になります。 なお、疫学として、プランマー病は日本では諸外国より少なく、甲状腺中毒症の約0.15~0.3%、結節性甲状腺腫の約0.7%と報告されています2)。発症年齢はさまざまで、10代から高齢者までに広くみられます。 喉のあたりにある甲状腺に結節を触れ、動機や息切れ、疲れやすさといった症状がある場合、できるだけ早期に内分泌内科を受診しましょう。参考文献
- Plummer HS: The clinical and pathological relationship of simple and exophthalmic goiter. Am J Med Sci 146: 790-795, 1913
- 日本甲状腺学会(編):Ⅴ.特論.3.機能性甲状腺結節.甲状腺結節取り扱い診療ガイドライン2013.南江堂.2013.198-204.
- 日本甲状腺学会:甲状腺専門医ガイドブック 改訂第2版.診断と治療社.2018.158-162.




