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顎骨腫瘍
宮島 悠旗

監修歯科医師
宮島 悠旗(くろさき歯科)

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愛知学院大学歯学部卒業。東京歯科大学千葉歯科医療センター臨床研修医修了。「噛み合わせ」 と「エステティック」 に配慮し、個々の要望に応じた矯正治療を追究している。歯学博士。日本矯正歯科学会認定医。

顎骨腫瘍の概要

顎骨腫瘍(がっこつしゅよう)は、顎骨(あごの骨)の中に腫瘍ができる疾患です。

顎骨腫瘍は、良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。 良性腫瘍には、エナメル上皮腫や歯牙種などがあり、悪性腫瘍には骨肉腫や扁平上皮がんなどがあります。

腫瘍ができると顎骨がふくらみ、顎や顔面が腫れたり、痛みなどの症状が現れたりしますが、自覚症状に乏しいケースも少なくありません。 腫瘍が大きくなると、歯並びが悪くなったり、顔の形が変わったりするケースもあります。

顎骨腫瘍のはっきりした原因はわかっていませんが、最新の研究によると、遺伝子の変異が発症に関与している可能性が示唆されています。

良性腫瘍の治療では、通常、手術が選択されます。 ただし、再発をきたすケースが珍しくないため、病変の摘出にあわせて近接する顎骨を切除する場合もあります。 手術によって口の機能の低下や顔の変形が考えられる場合は、顎骨を再建する手術も一緒におこなわれます。

悪性腫瘍では、手術に加えて化学療法や放射線治療などが検討されます。

顎骨腫瘍は比較的若い年代に発症しやすい傾向があります。 エナメル上皮腫では20代、歯牙腫では10~20代、悪性の骨肉腫では30~40代に発症しやすいと言われています。

良性の顎骨腫瘍の再発予防には、医療機関の定期的な受診が重要です。

顎骨腫瘍の原因

顎骨腫瘍を発症する明確な原因はわかっていません。

歯原性腫瘍であるエナメル上皮腫や歯牙腫などの良性腫瘍では、遺伝子の変異が発症に関与していることが報告されています。

悪性腫瘍の骨肉腫や扁平上皮がんは、今までに受けた放射線治療が原因となって発症するケースがあります。

顎骨腫瘍の前兆や初期症状について

顎骨腫瘍の主な症状は、顎骨の腫れや痛みです。

腫瘍が大きくなると顎骨がふくらみ、歯並びの変化、顔面や歯の根っこの部分の腫れ、顎骨の組織が薄くなることによる羊皮紙様感(病変部を触ると骨が柔らかく、凹むような感覚)、下唇や顎先の感覚の麻痺などがみられる場合もあります。

腫瘍が上顎洞まで広がっている場合は、鼻が詰まったり、頭が重く感じられたりするケースもあります。

良性腫瘍では、自覚症状の乏しいケースが少なくありません。 レントゲン撮影で偶然発見されたり、気づいたときには大きくなっていたりするケースもあります。

骨肉腫のような悪性腫瘍では、病変が急速に増大し、急激に痛みの症状が悪化するケースもあります。

顎骨腫瘍の検査・診断

顎骨腫瘍の診断では、触診、画像検査(レントゲン検査、CT検査、MRI検査、PET検査など)や病理検査、血液検査などがおこなわれます。

触診では、病変のある部分や腫瘍に近接している歯に触れて顎骨腫瘍の状態を確認することがあります。

画像検査は、顎骨腫瘍の大きさや広がりを把握する目的で選択されます。 顎骨腫瘍が悪性と疑わしかったり、のう胞病変との鑑別がつかなかったりした場合は、造影CT検査や造影MRI検査で評価することがあります。 また、他の臓器に悪性腫瘍の転移がないか確認するためにPET検査がおこなわれるケースもあります。

顎骨腫瘍が良性か悪性かは、病変の組織を採取し、顕微鏡により観察をおこなうことで確定診断となります。

悪性の顎骨腫瘍の場合や、他のがんの転移により顎骨腫瘍を発症した場合は、血液検査をおこなうことがあります。 腫瘍マーカーや白血球数などの値に異常がないか確認します。

顎骨腫瘍の治療

顎骨腫瘍の治療は、良性腫瘍と悪性腫瘍によって異なります。

良性腫瘍では手術が基本ですが、悪性腫瘍では手術以外にも化学療法や放射線治療などを組み合わせた治療が検討されます。 それぞれの病気の状態や患者の健康状態などを考慮して適切な治療法を選択します。

エナメル上皮腫や歯牙腫の治療では、手術により腫瘍を摘出します。 エナメル上皮腫は再発しやすく、顎骨の壁に穴を空けて腫瘍の縮小と周辺骨組織の修復を図ったり、腫瘍と一緒に顎骨を切除したりする場合があります。

腫瘍の大きさにより切除する顎骨が広い場合は、口の機能の低下や顔の変形につながる可能性があります。 この場合には、骨移植やチタンプレートによる再建術が検討されます。

歯牙腫では、腫瘍の摘出が基本です。 ただし、自覚症状がみられない場合は積極的に手術をおこなわず、経過観察となるケースもあります。

腫瘍を摘出した顎骨では、骨の再生がみられますが、骨の傷をおおう瘢痕(はんこん)組織の形成によって骨の再生が妨げられます。 そのため良性腫瘍の治療では、速やかな顎骨の修復のために瘢痕組織を繰り返し除去する処置がおこなわれるケースがあります。

悪性の顎骨腫瘍では、腫瘍の摘出と合わせて顎骨の切除が検討されます。 腫瘍の広がりや進行度に応じて、再建手術や術前の化学療法、術後の放射線治療を組み合わせるケースもあります。

顎骨腫瘍になりやすい人・予防の方法

顎骨腫瘍を発症しやすい人は、それぞれの腫瘍の種類によって異なります。

疫学調査によると、歯原性腫瘍全体のうち半数程度が29歳以下であり、性別による差はないと報告されています。 歯原性膿瘍の中で最も多いエナメル上皮腫は、20代に最も発症しやすく高齢者や幼児にはみられにくい疾患です。 男性が全体の6割を占めており、下顎骨(下あごの骨)に現れやすいと言われています。

良性腫瘍では再発をきたすケースが少なくありません。 とくにエナメル上皮腫は、再発しやすいと言われています。 定期的に医療機関を受診し、経過観察に努めることが予防に効果的です。

エナメル上皮腫についで多い歯牙腫は、10~20代に発症しやすく、上顎骨(上あごの骨)や下顎骨の前歯に現れやすい疾患です。 歯牙腫の存在により永久歯が生えてこないケースが報告されています。 永久歯の生え変わりが遅い場合には歯牙腫が原因のこともあるため、専門医による早期の診断が推奨されます。

悪性腫瘍である顎骨の骨肉腫は、一般的な骨肉腫よりも発症年齢が高く、30~40歳代に発症しやすいと言われています。

放射線治療を受けたことが原因で、顎骨の扁平上皮がんや骨肉腫などの悪性腫瘍を発症したケースも報告されています。 悪性リンパ腫や上顎洞がんなどの放射線治療歴がある人は、顎骨腫瘍を発症するリスクがあるため、定期的な経過観察が重要です。

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