FOLLOW US

目次 -INDEX-

がま腫
遠藤 眞次

監修歯科医師
遠藤 眞次(歯科医師)

プロフィールをもっと見る
長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う。「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

がま腫の概要

がま腫は舌下腺から分泌される唾液が周囲の組織にたまり、こぶのように腫れる病気です。
医学的にはラヌーラとも呼ばれ、見た目がガマガエルののど袋に似ていることに由来しています。

舌下腺は下顎骨の内側に位置する唾液腺の一つで、粘性の高い唾液を分泌して粘膜の保護や細菌の侵入を防止するはたらきがあります。
口腔内の粘膜を誤って噛んだりして刺激が加わると、唾液の排出路が閉塞して唾液がたまったり、排出路が破れて唾液が組織内にあふれ出たりすることがあります。漏れ出た唾液を周りの組織が取り囲むことで嚢胞(のうほう)様の状態が生じ、がま腫になると言われていますが、原因が特定できないものも存在します。

がま腫は舌下型と顎下型の2つのタイプに分類されます。
舌下型は舌の裏側である口底部に発生し、舌を上方に押し上げる形で嚢胞を形成します。
顎下型は下顎に嚢胞が発生するため、口腔内ではなく外部から膨らみを確認できます。

がま腫は10〜30代の若年層に多いとされていますが、どの年代でも発生する可能性があり、先天性に起こる例もあります。
誤って噛んで嚢胞がつぶれると、一時的になくなることもありますが、再発する例も多いです。
症状が続く場合は悪化させないために、口腔外科や耳鼻咽喉科で適切な治療を受けるのが重要です。

がま腫

がま腫の原因

がま腫の主な原因は、外傷や手術、炎症、先天性異常などによる舌下線の排出路(導管)の損傷や破綻と考えられています。
唾液が正常な経路で排出されずに周囲の組織に漏れ出し、徐々に蓄積していきます。

外傷の原因としては、食事中に誤って噛んだり、ブラッシング中に歯ブラシで刺激することなどが考えられます。
手術後に再発するケースや、先天性のがま腫として新生児に起こる例もあります。

がま腫の前兆や初期症状について

舌下型の初期症状は多くの場合、痛みを伴わない口底部の膨らみとして現れます。
舌の下に柔らかい腫れを感じ、徐々に大きくなっていきます。
初期段階では日常生活に大きな支障をきたすことは少ないため、気づかれずに経過することもあります。
顎下型の場合は、顎の下に目に見える膨らみが現れることがあります。

がま腫が進行して大きくなると、口腔内の違和感や舌の動きの制限、嚥下や発話の困難、口腔内の違和感などの症状が起こることがあります。
がま腫自体は痛みを伴いませんが、大きくなると周囲の組織を圧迫し、不快感や機能障害を引き起こす原因になります。

がま腫の検査・診断

がま腫の検査は視診で臨床所見を確かめた後に、必要に応じてCT検査やMRI検査、超音波検査などの画像診断をおこないます。
ほかの嚢胞性疾患と鑑別するために、穿刺吸引細胞診をおこなうこともあります。
舌下型は青みのある無痛性の腫瘤が口底部に確認できますが、顎下型は視診だけでは確認できないケースが多いです。がま腫の診断のために以下の検査がおこなわれる場合があります。

CT検査

CT検査はX線を利用した画像検査で、がま腫の範囲や位置を正確に把握するのに有効です。
短時間で撮影でき、即日実施が可能なため、迅速な診断に適しています。

MRI検査

MRI検査は磁気を利用した検査で、がま腫の貯留液の粘性や筋肉と骨の位置関係などもわかるため、がま腫の詳細な構造を把握するために用いられます。
舌下型と顎下型の区別や、ほかの嚢胞性疾患との鑑別がしやすくなります。

穿刺吸引細胞診

がま腫とほかの嚢胞性疾患との鑑別をおこなうために、穿刺吸引細胞診をおこなうこともあります。
注射器でがま腫の貯留液を吸引すると、粘性がある黄色い貯留液が見られます。

病理組織学検査

手術により摘出したがま腫を顕微鏡で観察することで、最終的な確定診断をおこないます。

がま腫の治療

がま腫に適応されるのは開窓術や嚢胞摘出術、舌下腺摘出術などの嚢胞をなくす治療や、OK-432という薬剤を注入する治療です。

開窓術

開窓術は局所麻酔をした後にがま腫の一部に切開を加え、貯留液を排出して嚢胞をなくす方法です。
がま腫による嚢胞は一時的になくなりますが、切除した穴が閉じると再発する可能性もあります。
開窓術は小さながま腫や、より侵襲的な手術を避けたい場合に適しています。

嚢胞摘出術・舌下腺摘出術

開窓術をおこなっても再発が続く場合などは完全摘出術が検討されます。がま腫の嚢胞全体を周囲の組織から慎重に剥がし完全に取り除きます。
口腔内からアプローチする場合は、顔の外側に傷跡は残りません。
しかし、完全摘出術だけでは再発の可能性はなくならないため、唾液漏れの原因となっている舌下腺を同時に摘出するケースが多いです。
舌下腺摘出術をおこなう場合は入院が必要で、全身麻酔下による手術になります。

OK-432による硬化療法

OK-432(ピシバニール)を使用した硬化療法は、がま腫の貯留液を吸引した後、OK-432が含まれた液体を注入します。
OK-432が注入されると炎症反応が起こり、貯留液の吸収が促進され、唾液が漏れている導管もふさがれます。
手術侵襲を避けられるというメリットがあります。

がま腫になりやすい人・予防の方法

がま腫になりやすい人は舌下部に刺激を受けた人と考えられます。
舌下部に何らかの外傷を負ってしまった人や、口底部の手術を受けた経験がある人は、舌下腺の損傷や破綻が起きやすくなります。

原因が定かではないことも多いため、明確な予防法はいまのところありません。
先天性のがま腫は舌下腺の導管の閉鎖が原因で起こっている可能性があると考えられていますが、詳しいことはよく分かっていません。


関連する病気

  • 類皮嚢胞(るいひのうほう)
  • 類表皮嚢胞(るいひょうひのうほう)
  • 歯根嚢胞(しこんのうほう)
  • 含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)
  • 歯原性角化嚢胞(しげんせいかっかのうほう)
  • 術後性上顎嚢胞(じゅつごせいじょうがくのうほう)

この記事の監修歯科医師