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口腔アレルギー症候群
中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

口腔アレルギー症候群の概要

口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome=OAS)とは、果物や野菜などを食べた後、口腔(口の中)や咽頭(鼻の奥からのどの上までの部分)、口唇などに痛みやかゆみ、腫れ、痺れが生じるアレルギー症状のことです。

重症の場合には、呼吸困難を伴うアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があります。アレルギー症状は通常、食物を食べた直後から数分以内に発生し、特に花粉症を持つ人が生の果物や野菜を食べた際に発症しやすい傾向があります。

対策としては、アレルギーの原因となる食物を避けることが最も効果的です。また、食物を加熱することで症状が出にくくなる場合もあります。なお抗ヒスタミン薬などのアレルギー薬を内服することで症状を緩和できますが、重度の症例ではアナフィラキシーを防ぐためにエピネフリン自己注射薬(エピペン)の携帯が指示されることもあります。

口腔アレルギー症候群の原因

口腔アレルギー症候群の原因は、主に果物や野菜に含まれる特定のアレルゲン(アレルギーの原因物質)に加え、それと似ている花粉症を引き起こす花粉のアレルゲンとの「交差反応」によるものです。

交差反応とは、本来のアレルゲンとは別のアレルゲンにもかかわらず、構造が似ていることからアレルギー反応を起こすことです。つまり、花粉に対してアレルギーを持っている人が花粉に似ているアレルゲンを含む食物を摂取すると、免疫システムが花粉アレルゲンと同じように反応してアレルギー症状を引き起こします。

口腔アレルギー症候群を引き起こす代表的な花粉と、関連する食物は以下のとおりです。

  • スギ花粉:トマト
  • シラカバやハンノキ花粉:リンゴ、モモ、サクランボ、キウイ、大豆など
  • ブタクサ花粉:メロン、スイカ、バナナ、セロリなど
  • イネ花粉:メロン、スイカなど

これらの花粉アレルゲンをもつ人が、特定果物や野菜を生で摂取することで症状があらわれます。特にアレルギー反応を起こす花粉が飛ぶ時期は、口腔アレルギー症候群の発症リスクが上がるため要注意です。

口腔アレルギー症候群を引き起こす食物の特徴は、調理や熱処理せず生のまま摂取する場合に強いアレルギー反応を引き起こすことです。特に果物や野菜のアレルゲンは熱に弱いため、調理や加熱処理することでアレルゲンが変性し、無症状の場合もあります。とはいえ、食材によっては加熱してもアレルギー症状が出る場合もあるため注意しなければなりません。

口腔アレルギー症候群の前兆や初期症状について

口腔アレルギー症候群は、食物を食べた直後または数分以内に、口、喉、耳の奥、鼻のかゆみや痛み、口内炎様の水泡などがあらわれます。まれに、消化器症状として嘔吐や下痢、腹痛、喘息発作などが生じることもあります。症状が重い場合は、アナフィラキシーショックによる血圧の低下や意識消失、息苦しさといった症状が起こり、命に危険を及ぼす可能性があります。

口腔アレルギー症候群の検査・診断

口腔アレルギー症候群は、はじめに病歴と症状の出現状況に関する問診が重要です。その後、診断の確定とアレルゲンの特定のために主に以下の2つの検査を行います。

プリックテスト(皮膚テスト)

プリックテストは、即時的にあらわれるアレルギーに対して行うアレルギー検査です。検査手順は非常に簡単で、アレルゲンを皮膚に一滴落としプリック針と呼ばれる専用の針でアレルゲンの中心をゆっくりと刺します。刺した後は素早くティッシュで拭きとり、結果が出るまで15分ほど待ちます。

簡単に検査ができるうえ痛みを感じにくく、安全性に優れているため、小さな子どもから高齢者まで幅広い年齢層に対応している検査方法です。

血液検査(特異的IgE抗体検査)

血液検査では、血液中に存在している特定のアレルゲンに対する抗体の量を測定します。抗体が多いほどアレルギー反応を起こしやすいため、どのアレルゲンに対してアレルギー反応を起こすのかがわかります。たとえば、スギ花粉に対する抗体が多ければ、スギ花粉が体内に入ってきたときに過剰に反応しやすいということです。

口腔アレルギー症候群の治療

口腔アレルギー症候群の基本的な治療法は、原因となる果物や野菜の摂取を避けることです。診察及び検査でアレルゲンを特定し、それを除いた食事をすれば、症状の悪化や再発が防げます。

並行して、症状や重症度に応じて薬物療法や免疫療法を行います。

薬物療法

アレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬を内服することで、口腔アレルギー症状の緩和が期待できます。抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応を抑えることで、かゆみや腫れなどの症状を緩和します。症状が軽度であれば、市販の抗ヒスタミン薬でも対処可能ですが、頻繁に症状が出る場合や、症状が重い場合は医師の処方を受けることが望ましいです。

もし口腔アレルギー症候群の症状が重く、アナフィラキシーショックを引き起こすリスクがある場合には、エピネフリン自己注射薬の携帯が推奨されています。エピネフリンは、強力なアレルギー反応を即座に抑える効果が期待でき、命を守るために重要です。医師の指導のもと使用方法を理解し、適切に使用してください。

免疫療法

免疫療法とは、アレルギーの原因になっているアレルゲンを少しずつ体内に取り入れることで体質を改善し、アレルギー反応を弱めていく治療法です。口腔アレルギー症候群は花粉症が影響していることが明らかになっているため、花粉に対して行われる免疫療法が口腔アレルギー症候群の症状軽減につながる可能性があります。

口腔アレルギー症候群になりやすい人・予防の方法

口腔アレルギー症候群は、花粉症やアレルギー体質の人が発症しやすい傾向があります。

先述のとおり、スギやシラカバ、ブタクサなどの花粉に対するアレルギーをもつ人は、交差反応を起こす果物や野菜の摂取で発症しやすいため注意が必要です。

また、口腔アレルギー症候群は遺伝しませんが、アレルギー体質の人はアレルギー疾患を発症しやすい傾向があります。そのため、家族にアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、喘息など)をもつ人がいる場合、口腔アレルギー症候群を発症する可能性があります。

口腔アレルギー症候群の予防方法は以下の3つが考えられます。

  • アレルゲンとなる食物を避ける
  • 調理や熱処理加工を行う
  • 花粉症の症状を抑える

口腔アレルギー症候群を予防する方法として確実なのは、症状を引き起こす果物や野菜を避けることです。事前にアレルゲンとなる食物を知っておけば、発症を未然に防げます。もし、アレルゲンを含む食物を摂取して口腔アレルギー症候群があらわれた場合は、再度摂取しないように注意しましょう。また、生の状態で食べ物を摂取することで口腔アレルギー症候群の症状が出やすいため、調理や熱処理加工を行うことも一つの予防策です。

さらに、花粉症が悪化すると口腔アレルギー症候群の症状悪化や発症リスクが高まるため、花粉症の症状を抑えることも重要です。抗ヒスタミン薬などを使用して花粉症の症状を抑える、普段からマスクを着用し花粉の飛散が多い季節には外出を控えるなど、花粉症対策を徹底しましょう。

なお、口腔アレルギー症候群によって息苦しさや意識消失などの重い症状が出たことのある人あるいは重症化するリスクがある人は、医師に相談のうえエピネフリン自己注射薬を携帯しておきましょう。


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