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高ナトリウム血症
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

高ナトリウム血症の概要

高ナトリウム血症とは、血液中のナトリウム濃度が異常に高くなる状態を指します。ナトリウムは体内の水分バランスを維持する上で重要な役割を果たす電解質の一つですが、その濃度が正常範囲を超えると、さまざまな健康上の問題を引き起こします。通常、血清ナトリウム濃度が145mEq/Lを超えると高ナトリウム血症と診断されます。
この状態は、急性または慢性の経過をたどることがあり、特に高齢者や小児、慢性疾患を持つ方々に多く見られます。体内の水分が不足したり、ナトリウムの排泄がうまくいかない場合に発生しやすく、重症化すると意識障害や神経症状を伴うこともあります。

高ナトリウム血症の原因

高ナトリウム血症の主な原因としてほとんどの場合、水分喪失が原因です。しかし、水分なしで塩分を摂取したり、高張性ナトリウム溶液を投与したりすることでも引き起こされる可能性があります。
水分の喪失が原因となる場合は、発汗過多や下痢、嘔吐などによって体内の水分が大幅に失われることが影響します。特に高温環境下での長時間の運動や、熱中症のような状態では、大量の水分が失われるため注意が必要です。また、腎疾患や糖尿病に伴う多尿も水分喪失の要因となります。
さらに、特定のホルモン異常によっても高ナトリウム血症が引き起こされることがあります。例えば、副腎皮質ホルモンの過剰分泌によるクッシング症候群や、抗利尿ホルモンの不足による尿崩症などが関与することがあります。

高ナトリウム血症の前兆や初期症状について

高ナトリウム血症の初期症状は軽度なものから始まることが多く、脱水に関連する徴候が目立ちます。口渇感や皮膚の乾燥、倦怠感が現れることが一般的です。進行すると、筋肉の痙攣や筋力低下、神経過敏といった症状がみられることがあります。
さらに、血中ナトリウム濃度が大幅に上昇すると、神経系に影響を及ぼし、意識障害や混乱、幻覚などの精神的な症状が現れることがあります。重度の場合、昏睡やけいれん発作を引き起こし、命に関わることもあるため、早期の対応が重要です。
特に高齢者や乳幼児では、口渇を自覚しにくく、気づかないうちに症状が進行することがあるため、周囲の人が注意を払うことが大切です。

高ナトリウム血症の検査・診断

高ナトリウム血症の診断は、主に血液検査によって行われます。血清ナトリウム濃度を測定し、145mEq/L以上であれば高ナトリウム血症と判断されます。さらに、血液中の電解質バランスを詳しく調べるために、カリウムやクロール、カルシウムなどの値も確認されることが一般的です。
また、尿検査を行うことで、体がどの程度ナトリウムを排泄しているかを評価できます。尿中のナトリウム濃度が低い場合は、水分不足が主な原因である可能性が高く、一方で尿中ナトリウムが高い場合は、腎機能やホルモンの異常が関与している可能性が考えられます。
さらに、必要に応じてホルモン検査や腎機能検査を行い、基礎疾患の有無を確認することもあります。診断後は、その原因を特定し、それに応じた治療を進めていきます。

高ナトリウム血症の治療

高ナトリウム血症の治療は、原因に応じた適切なアプローチが必要です。基本的には、水分補給によって血中ナトリウム濃度を正常範囲に戻すことが目標となります。
軽度の高ナトリウム血症であれば、経口での水分補給が有効です。特にナトリウム濃度が高くなっている場合は、ただの水ではなく、電解質を適度に含んだ経口補水液が推奨されます。
重度の高ナトリウム血症では、点滴による補液が必要となることがあります。この場合、ナトリウム濃度を急激に下げると脳浮腫のリスクが高まるため、医師の管理のもとで慎重に調整しながら治療が進められます。
また、ホルモンや薬剤が原因である事が分かればそれらに対する治療も行われます。

高ナトリウム血症になりやすい人・予防の方法

高ナトリウム血症

高ナトリウム血症になりやすいのは、特に高齢者乳幼児腎機能に問題を抱える方々です。高齢者は口渇感を自覚しにくく、水分補給が不足しがちになるため、こまめな水分摂取が重要です。乳幼児も同様に、発熱や下痢による脱水が進みやすいため、適切な水分補給が求められます。

予防の方法

予防のためには、日常生活の中で適切な水分補給を心がけることが大切です。特に暑い季節や運動後には、水や経口補水液を適切に摂取するようにしましょう。
さらに、糖尿病や腎疾患などの持病がある方は、医師の指導のもとで適切な管理を行い、体内の電解質バランスを維持することが求められます。高ナトリウム血症は、適切な予防策を講じることで防ぐことが可能な疾患ですので、日頃から健康管理に気を配ることが大切です。

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