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白血病(総論)
眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

白血病の概要

白血病は、骨髄に存在する造血幹細胞の異常な増殖によって発生する血液のがんです。この病気では、白血球、赤血球、血小板へと分化・成熟する過程にある細胞ががん化します。骨髄での正常な血球の産生が低下すると、それぞれの血球数が減少します。白血球が減少すると感染症に対する抵抗力が弱くなり、赤血球が減少すると貧血が生じ、血小板が減少すると出血しやすくなります。

白血病は、そのがん化した細胞が将来何になる予定だったかに基づき分類されます。その主な4つのタイプは、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)です。

白血病の原因

白血病の原因の多くはまだ解明されていませんが、遺伝子の異常や環境要因などが関与している可能性があるとされています。

遺伝子変異や染色体異常が積み重なると、造血幹細胞が異常増殖を始め、白血病が発症します。急性前骨髄球性白血病(APL)では、15番染色体と17番染色体の一部が入れ替わる転座が原因となります。 同様に、慢性骨髄性白血病(CML)は9番染色体と22番染色体の転座によって引き起こされます。これらの染色体異常は特定の遺伝子を融合させ、細胞の増殖を制御できなくすることにより白血病を引き起こします。

ウイルス感染も白血病の原因となる場合が考えられています。成人T細胞白血病(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)への感染が原因です。このウイルスは主に母乳や性行為を通じて感染するとされています。HTLV-1に感染しても必ずしも白血病を発症するわけではありませんが、生涯発症率は約5%とされています。

さらに、放射線被曝や化学物質への暴露も白血病のリスクを高めます。大量の放射線に被曝すると、造血幹細胞の遺伝子に損傷を与え、白血病を引き起こす場合があります。また、ベンゼンなどの化学物質も白血病の発症リスクを高める可能性が確認されています。

一部の抗癌剤は、使用後に副作用として白血病を引き起こす場合があります。これを二次性白血病と呼びます。抗癌剤による遺伝子損傷が原因で、新たに白血病が発症する可能性があります。

遺伝的要因も無視できません。白血病と直接的な遺伝の関係は明らかになっていませんが、染色体異常を伴う先天性疾患では、白血病の合併率が高いことが観察されています。

白血病の前兆や初期症状について

白血病の初期症状や前兆はさまざまですが、いくつかの特徴的な症状があります。まず、白血病により骨髄内で正常な赤血球の産生が抑制されるため、貧血の症状が現れます。これにより、日常的に異常な疲労感を感じたり、顔色が青白くなる場合があります。また、めまいや息切れ、頭痛を伴うことも少なくないとされています。特に軽い運動や日常の活動で息切れを感じる場合は注意が必要です。

白血病は白血球の異常増殖によって引き起こされるため、免疫力が著しく低下し、感染症にかかりやすくなります。しばしば原因不明の発熱が続いたり、肺炎を引き起こす場合があります。さらに、血液中で細菌が増殖して全身に感染が広がる敗血症のリスクも高まります。

白血病では血小板の数が減少するため、出血しやすくなります。歯磨きやちょっとした刺激で歯茎から出血したり、頻繁に鼻血が出たりするようになります。また、体のさまざまな部位にあざができやすくなる皮下出血も見られる場合があります。

ほかの症状としては、原因不明の体重減少や、骨髄内の白血病細胞の増殖により関節や骨に痛みを感じる場合があります。さらに、首や脇の下、鼠径部などのリンパ節が腫れる症状もあります。

急性白血病は白血病細胞の増殖が速いため、数週間単位で症状が急速に悪化する場合があります。一方、慢性白血病は症状がゆっくりと進行するため、気付きにくい傾向があります。

白血病の初期症状はほかの病気と類似しているため、症状が続く場合や複数の症状が重なる場合は、専門医による診断を受けることが重要です。これにより、早期に適切な治療を開始し、病状の進行を抑えられる可能性があります。

白血病の検査・診断

白血病の初期段階では血液検査が行われます。血液検査では、白血球の増加や汎血球減少などを確認し、末梢血白血球中に異常な芽球(blast)が見つかると白血病の疑いが強まります。しかし、確定診断には骨髄穿刺が必要であり、骨髄中の白血病細胞の割合を調べます。白血病細胞が20%以上存在する場合は急性白血病、20%未満の場合は骨髄異形成症候群と診断されます。

骨髄検査によって採取された細胞は、特殊染色や抗体を用いた検査、染色体分析などにより調べられます。急性白血病は急性骨髄性白血病(AML)と急性リンパ性白血病(ALL)に分類され、それぞれの細胞の形態や特徴に基づいてさらに細分化されます。AMLはM0からM7までの8病型、ALLはL1からL3までの3病型に分類されます。また、遺伝子検査では、染色体の遺伝子異常の検出と解析により、白血病細胞の残存量を測定し、治療の効果を評価します。

白血病の診断には上述した検査が総合的に行われ、病型や進行度に応じた治療方針が立てられます。もし兆候が現れた場合は内科を、検査の結果で白血病が疑われる場合は血液内科の受診が推奨されます。

白血病の治療

白血病の治療は急性と慢性で異なり、それぞれに特有のアプローチが求められます。

急性白血病の治療の主な目標は、体内の白血病細胞を根絶することです。治療は抗がん剤治療である寛解導入療法から始まり、これにより患者さんの約80%が検査上で白血病細胞が検出されない状態(寛解)に達するとされています。 しかし、寛解後も体内には白血病細胞が残存するため、再発を防ぐために地固め療法や維持強化療法を続けます。再発リスクが高い場合や強力な治療が必要な場合には、同種造血幹細胞移植が行われる場合もあります。この方法では、患者さんの骨髄に新しい造血幹細胞を移植し、免疫機能を再構築して白血病細胞の排除を目指します。

慢性骨髄性白血病(CML)の場合、治療の目標は病気の進行を遅らせ、日常生活を支障なく送れる状態を維持することです。最近では分子標的薬の開発により、長期間にわたり治癒に近い状態の維持が可能になってきたとされています。この薬剤は遺伝子異常に働きかけ、白血病細胞の増殖を抑えるとされています。

慢性リンパ性白血病(CLL)はゆっくりと進行するため、外来で定期的に症状をモニタリングし、必要に応じて治療が開始されます。治療方法としては、化学療法、分子標的療法、免疫療法などがあり、病状や患者さんの状態に応じて適切な治療が選ばれます。

造血幹細胞移植(骨髄移植)は、急性白血病や進行した慢性白血病に対する有効な治療法とされています。この方法では、強力な化学療法や放射線療法で白血病細胞を全滅させた後に、保存しておいた自己や他人の造血幹細胞を移植します。なかでも同種造血幹細胞移植は、移植した幹細胞が白血病細胞を攻撃する免疫反応(GVL効果)を引き起こすため、再発防止につながる可能性があります。

白血病のなりやすい人・予防の方法

白血病はあらゆる年齢層で発症する可能性がありますが、なかでも高齢者に多い傾向があります。高齢者に多い骨髄異形成症候群は、急性白血病を早期に発症するリスクがあるとされています。また、男性の方が女性より罹患率がやや高い傾向があります。

白血病の診断は、貧血、出血傾向、感染症の症状が現れた際に行われますが、年に1回の健康診断での血液検査によって早期に発見される場合もあります。白血病の予防方法として、定期的に血液検査を受けましょう。 関連する病気

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