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膵胆管合流異常
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

膵胆管合流異常の概要

膵胆管合流異常(すいたんかんごうりゅういじょう)は、膵管と胆管が通常とは異なる形でつながる先天性の形成異常です。
胎児が子宮内で発育する過程で生じる異常によって引き起こされます。

通常、膵管は膵臓から分泌される膵液が十二指腸へ向けて流れ込む管です。
胆管では、胆嚢から分泌される胆汁が十二指腸に流れ込みます。
膵液と胆汁の流れは、十二指腸の中間部(胆管と膵管の合流部)にある乳頭括約筋(にゅうとうかつやくきん)の調節によって、膵液が胆管に逆流するのを防いでいます。
しかし、膵胆管合流異常では膵管と胆管が十二指腸の手前で合流してしまうため、乳頭括約筋の作用が正常に得られず、膵液と胆汁が互いに逆流しやすくなります。

この状態が長期間続くと、胆管炎や胆石、閉塞性黄疸、急性膵炎などを引き起こす可能性があります。
さらに、未治療のまま経過すると、胆道がんのリスクが高まると言われています。

膵胆管合流異常は、胆管拡張を伴うもの(胆管拡張型または先天性胆道拡張症)と伴わないもの(胆管非拡張型)の2つのタイプに分類されます。

主な症状には、腹痛、嘔気、嘔吐、発熱、黄疸などがあり、灰白色の便や腹部腫瘤(ふくぶしゅりゅう)が見られることもあります。

診断は、血液検査や画像検査によっておこなわれます。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)という内視鏡カメラで膵胆管の合流異常を確認することで、確定診断につながります。

治療は外科手術が一般的で、手術内容は胆管拡張の有無によって異なります。
がんを発症する前に手術した場合、予後は良好とされています。
手術により膵液や胆汁の流れを正常にすることで症状が改善し、生活の質の向上が期待できます。

膵胆管合流異常の原因

膵胆管合流異常の原因は、完全には解明されていませんが、胎生4週頃までに2つの腹側膵原基(ふくそくすいげんき:膵臓のもとになる組織)が正常に形成されないことが関係していると考えられています。

通常は、膵管と胆管は乳頭括約筋で合流しており、乳頭括約筋が膵液や胆汁の流れを調節することで、双方の逆流を防いでいます。
しかし、膵胆管合流異常では、膵管と胆管が乳頭括約筋の手前で合流しているため、膵管内圧が胆管内圧より高くなり、膵液が胆道内に逆流しやすくなります。

また、膵液と胆汁が混ざった液体が、胆嚢や胆管、膵管にうっ滞し(流れが滞ること)、さまざまな症状を引き起こします。
一方で、胆汁が膵管内へ逆流する原因については、まだ明らかになっていません。

膵胆管合流異常は、先天性の形成異常ですが、一般的に遺伝性ではないと考えられています。

膵胆管合流異常の前兆や初期症状について

膵胆管合流異常の主な症状は、腹痛、嘔気、嘔吐、発熱、黄疸があります。
また、灰白色の便や腹部腫瘤がみられる場合もあります。

胆管非拡張型の場合は無症状のまま経過するケースも少なくないため、異常に気づかずに放置されてしまうこともあります。
膵胆管合流異常を治療せずに放置すると、胆管がんを発症するリスクが高まるため、早期発見と適切な治療が重要です。

膵胆管合流異常の検査・診断

膵胆管合流異常の診断には、血液検査や画像検査が用いられます。

血液検査では血中アミラーゼやビリルビン、胆道系酵素の値を確認し、肝臓や膵臓の機能を評価します。

次に、画像検査では、胆管や膵管の構造や形状、胆道系全体の状態などを詳しく調べます。
画像検査では、超音波検査、CT検査、MRI検査、MRCP(磁気共鳴胆管膵管撮影)、ERCPなどがおこなわれます。

ERCPは口から内視鏡を挿入し、膵管や胆管を造影する検査で、胆管と膵管の形成異常を確認するのに有効とされています。

これらの検査結果を総合的に判断し、膵胆管合流異常の確定診断をおこないます。

膵胆管合流異常の治療

膵胆管合流異常の治療は主に外科手術によって行われます。
さまざまな合併症や胆道がんを予防するために、症状の有無にかかわらず診断が確定したら早期に手術するのが望ましいとされています。
具体的な手術方法は、胆管拡張の有無によって異なります。

胆管拡張を伴う場合

胆管拡張を伴う場合は、肝外胆管切除術および胆道再建の分流手術、胆嚢摘出術をおこないます。
これらの手術では、膨らんだ胆管と胆嚢を切除し、再び十二指腸へつなぐことで、膵液と胆汁が正常に流れるように再建します。

それによって、膵液と胆汁の逆流を防ぎ、膵炎や胆管炎、胆道がんのリスクを減らすことが可能になります。

胆管拡張を伴わない場合

胆管拡張を伴わない場合は、胆嚢摘出術が一般的です。
胆管非拡張型では胆嚢がんを合併することが多いため、予防的に胆嚢のみを摘出し、経過観察することが必要です。

胆嚢摘出術の予後は良好とされていますが、胆管炎や肝内結石、胆管がんなどのリスクが残ってしまうため、術後も定期的な経過観察が必要です。

膵胆管合流異常になりやすい人・予防の方法

膵胆管合流異常は、胎児の発育過程で生じる先天的な形成異常であり、現時点で発症者の特定の因子や予防方法は明らかになっていません。

しかし、膵胆管合流異常を放置すると、膵炎や胆管炎などの合併症を引き起こし、胆道がんを発症するリスクが高まるため、早期に発見して適切な治療を受けることが重要です。
無症状のまま経過し、人間ドッグや健康診断の画像検査で偶然発見されるケースもあります。

また、小児期に繰り返し腹痛や嘔吐が続く場合は、膵胆管合流異常が疑われることがあります。症状が長引いたり、悪化したりする場合は、早めに消化器科を受診しましょう。

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