

監修医師:
大坂 貴史(医師)
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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。
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先天性胆道拡張症の概要
先天性胆道拡張症は胎児期での胆管と膵管との合流がうまくいかず、胆汁の流れが滞ることで胆道が拡張する疾患です。典型的な症状として右上腹部腫瘤、黄疸、腹痛がありますが、3つが揃うケースは多くありません。他に食欲不振、嘔吐、下痢、便の色の変化などの症状が見られることがあります。無症状のまま成人まで気づかれないこともあります。 血液検査やエコー検査のほか、磁気共鳴胆管膵管撮影 (MRCP) や内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (ERCP) で胆道の状態を詳細に評価して診断します。 診断後は早い段階での外科手術が望ましく、拡張した胆管を切除し、膵液と胆汁の流路を再建します。術後も胆管炎や膵炎、術後も胆管癌のリスクがあるため、定期的なフォローアップが必要です。 早期発見・早期治療が重症化予防や合併症リスク軽減の鍵となります。気になる症状がある場合には早めに受診してください先天性胆道拡張症の原因
赤ちゃんがお母さんのお腹の中で胆道を作る際に膵管との合流がうまくいかずに、胆汁の流れが滞って胆道が拡張してしまうことが先天性胆道拡張症の原因です。 膵液と胆汁がうまく十二指腸に流れていかないことや、胆道や膵臓にダメージが入ることによって、様々な合併症を引き起こします。先天性胆道拡張症の前兆や初期症状について
典型的な症状は「右上腹部腫瘤」「黄疸」「腹痛」の3つですが、3つの症状が揃うことは20~30%程度です (参考文献 1-3) 。他にも食思不振や嘔気・嘔吐、発熱、下痢、便が白いという症状が知られています (参考文献 2, 3) 。 「赤ちゃんの様子がおかしい」という漠然とした印象で気づかれることもあるかもしれません。症状の有無によらず外科手術による治療が必要ですので、赤ちゃんのことで気になることがあれば小児科を受診してください。 大人まで気づかれないこともありますが、放置すればがん化することが知られています。大人でも手術が必要なので、気になる症状や、検診で検査値の異常を指摘されれば、お近くの内科を受診してください。先天性胆道拡張症の検査・診断
血液検査で肝臓・胆道・膵臓系の酵素を測定するほかには、画像検査が有効です。 有症状時の血液検査では膵臓がダメージを受けることによってアミラーゼの値が上昇したり、黄疸の原因となるビリルビンの値が上昇しているほかに、各種胆道系酵素の上昇が認められます (参考文献 3) 。 エコー検査で初めて胆管拡張が発見されることもあります。エコー検査での異常所見は症状がないときにも確認できます。 詳細な検査のためには胆道系に特化した磁気共鳴胆管膵管撮影 (MRCP) とよばれる検査や、内視鏡を用いた内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (ERCP) という検査をします。MRCPはMRIと同じような検査で非侵襲的であるため、詳細な評価が必要な時にはまず実施するべき検査として位置づけられています (参考文献 3) 。 先天性胆道拡張症はその名の通り先天性の疾患であり、出生前に診断されることが増えています (参考文献 3) 。しかしながら全例を出生前に診断することは難しいほか、胆道閉鎖症という疾患との鑑別が難しく、出生後に精査することが重要です。先天性胆道拡張症の治療
先天性胆道拡張症の治療は外科手術が基本です。拡張した胆管を切除し、膵液と胆汁の流れを分離、膵液と胆汁の排出路を再建します (参考文献 1) 。先天性胆道拡張症は胆道癌の発生母地として知られていて、若年で胆管癌になった症例も報告があるため、診断がつき次第なるべく早い段階での手術が推奨されています (参考文献 3) 。 術後早期には手術操作が原因となる偶発症の可能性があるために入院での経過観察が必要ですが、多くは保存的治療で軽快します (参考文献 3) 。 手術後しばらく経過してからも胆管炎や膵炎といった合併症の可能性があるほか、手術で可能性が下がるとはいえ胆道癌の発生リスクも残っているため、定期的な外来受診での経過観察や検査が好ましいです (参考文献 3) 。先天性胆道拡張症になりやすい人・予防の方法
女性の患者が多く、男性の約3倍の発症率であることが知られています (参考文献 1) 。先天性疾患であるため、発症予防の考え方とは相容れない部分がありますが、先述の先天性胆道拡張症を疑う症状がお子さんにある場合には早めに内科を受診することが重症化・合併症予防に重要です。 無症状でも健康診断に関連したエコー検査や、他の病気の精査中に偶然胆管の拡張が見つかり、診断の契機になることがあります。この意味では健康診断の受診や健診結果を受けた精査をしっかり受けることは予防につながるといえるでしょう。 手術後の定期受診も合併症の予防や早期発見に重要です。手術した後の患者でも0.7%~5.4%で胆管癌を発症したと報告されています (参考文献 2, 3) 。胆管癌のほかにも胆石症や肝障害、胆管炎といった晩期合併症が知られています。これらの晩期合併症のなかには重症化すると命にかかわるものも多いため、早い段階で治療介入できるよう定期受診には毎回行きましょう。参考文献




