組織を再生させる!? 歯周病治療の最終手段「エムドゲイン」とは?

公開日:2019/05/27  更新日:2021/03/21

昨今、iPS細胞をはじめとした「再生医療」が広がりをみせています。もちろん、歯科治療の領域も例外ではありません。歯周病治療の最終手段といわれるようなものがあるとのこと。もし、歯周病によってとけてしまった、歯を支える骨を再生できるとしたら。そんな可能性を、「のぶスマイル歯科」の柳澤先生にたずねてみました。また、最終手段の真意も確認してみます。

監修医師
柳澤 伸行(のぶスマイル歯科 院長)

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昭和大学歯学部卒業。昭和大学歯科病院補綴科入局、一般歯科医院勤務を経た2011年、埼玉県川口市に「のぶスマイル歯科」開院。生まれ育った地元で、信頼関係に根ざした地域医療を提供している。日本口腔インプラント学会、日本歯科審美学会、日本臨床歯周病学会の各会員。

編集部編集部

歯周病治療に画期的な方法があると伺いましたが?

柳澤先生

エムドゲイン」を用いた歯周組織再生療法のことですね。エムドゲインは幼若ブタの歯胚から抽出精製したもので、主成分は歯が生えてくる時に重要な働きをするたんぱく質です。もちろん厚生労働省の承認を得た治療方法ですし、歴史も長く、安全性に優れています。

編集部編集部

「エムドゲイン」は、どの部分を再生させる治療法なのでしょう?

柳澤先生

歯の根っこの周りにある「歯槽骨」という組織です。歯槽骨が健全であれば、歯を根元からしっかり支えてくれます。ところが歯周病にかかると、この「歯槽骨」が溶けてしまうのです。例えるなら、クギ穴がカバカバになった状態といえるでしょう。この場合のクギとは、歯のことです。

編集部編集部

どのようにして使っていくのですか?

柳澤先生

適応は、歯周ポケットがかなり進行し、6mm以上になってしまった歯周病です。「エムドゲイン」はジェル状になっていますので、患部の歯茎を切開して徹底清掃した後に注入し、流れていかないよう縫合します。

編集部編集部

歯槽骨はどのように再生していくのですか?

柳澤先生

ジェル状の「エムドゲイン」が、時間とともに新たな歯槽骨へ生まれ変わります。ガバガバになったクギ穴が埋まってくるようなイメージです。このことで、再び歯をしっかり支えられるようになります。

編集部編集部

どのような歯周病にも対応できるのでしょうか?

柳澤先生

難しいのは、歯周病のダメージが歯の横方向へ広がっている症例です。「エムドゲイン」はジェル状の液体なので、注入しても横へ流れだしてしまうでしょう。一方、縦方向へ進行している歯周病なら、ジェルを奥部へとどめつつ、流れでないように治療できます。通常、ほとんどの歯周病はこの縦方向に進行します。

編集部編集部

「最終手段」と言われる理由について教えてください。

柳澤先生

自分の歯を残せるという意味での最終手段なのでしょう。いままで、歯周病が行き着く先といえば、得てして抜歯でした。ですから、入れ歯やインプラントなども、考えようによっては最終手段といえます。こういった欠損治療という方向ではなく、「抜歯に至らない」というニュアンスでの最終手段と考えてください。

編集部編集部

保険の有無と費用概算についてもお願いします。

柳澤先生

「エムドゲイン」を用いた歯周組織再生療法には保険が効きません。費用は、当院の場合で、1施術あたり税込7.7万円です。これは、例えば隣接した2本の歯であっても、「1回の切開」で同時に治療できれば、「1施術」と考えます。他方、明らかに別の患部なら、「複数の施術」という扱いです。

治療後の注意点について

編集部編集部

縫合した患部がくっつくには、どれくらいの期間がかかりそうですか?

柳澤先生

術後3週間から6週間は必要です。その間、患部のブラッシングは控え、消毒薬などでお手入れしていきます。なお、術後の数日間は、切開手術による痛みやかゆみを伴うかもしれません。

編集部編集部

食事は普通にできるのでしょうか?

柳澤先生

ある程度はできます。術後すぐの状態では、どうしても患部の歯がグラグラしますので、隣りあった歯とワイヤーで固定しています。固い食べ物などは控えたほうがいいかもしれません。

編集部編集部

治療はいつまで続けるのですか?

柳澤先生

程度にもよりますが、数年単位の時間が必要になるでしょう。その間に何度も手術をするというわけではなく、手術は1回のみです。手術後の治療期間は特に何か処置をするというわけではなく、経過観察をしていきます。定期健診を受け続けてください。

編集部編集部

その他、注意点はありますか?

柳澤先生

注意したいのは、定期健診などを、手術をした歯科医院“以外”で受ける場合ですね。患部をスケーリングなどでガリガリやられると、悪影響がでかねません。どうしても他院へ行かなければならない場合は、「再生治療中」である旨を、患者さんから言う必要があるでしょう。

ほかの再生治療方法との比較

編集部編集部

「エムドゲイン」療法で考えられるリスクは?

柳澤先生

海外で約30年、国内で約20年の歴史があるものの、いまのところ副作用などの報告は聞いたことがありません。

編集部編集部

歯周組織の再生医療としては、ほかにどのようなものが?

柳澤先生

「エムドゲイン」と同じような再生療法に「リグロス」というものがあります。その成分はヒト由来で、しかも国内生産、なおかつ保険適用となっています。ただし、歴史が浅いため症例の積み重ねも少なく、慎重にならざるをえない状況です。

編集部編集部

ほかに再生医療の選択肢としては何がありますか?

柳澤先生

2回の施術を挟む「GTR法」という治療法もありますが、2回施術が必要であったりと、原則として1回の施術で済む「エムドゲイン」が登場してからは、あまり用いられなくなってきました。再生医療の方法はまだまだありますが、厚労省の認可を受けている治療方法となると、そんなところではないでしょうか。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。

柳澤先生

大切なのは、再生医療により、「抜歯せずとも、歯を残せるようになってきた」ことです。患者さんにとって「リグロス」のほうが好ましければ、それでも構わないでしょう。ぜひこの機に、「最終手段」があるということを知っておいてください。

編集部まとめ

「エムドゲイン」によって抜歯せずとも歯の延命措置ができるようになりました。他にも「リグロス」という治療も保険適用で登場し、日々歯周病の治療も進歩しています。負担する費用や長年にわたって積み重ねられてきた安全性などの違いはありますが、どちらも有効な治療法です。歯周病でお悩みの方は、担当の先生と相談しながらぜひ検討してください。

医院情報

のぶスマイル歯科

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診療科目 歯科