着圧ストッキングは、本当にむくみ解消効果があるの?
むくみの解消をうたう市販品で着圧ストッキングというものがあります。その効果は、「足と歩行の診療所」の吉原先生も認めているとのことです。いったい、どのような仕組みになっているのでしょう。また、そもそもむくみはどうして起きるのでしょうか。女性はもちろん、男性にも知ってほしい生理現象を整理してもらいました。
監修医師:
吉原正宣(足と歩行の診療所 院長)
関西医科大学卒業。洛和会音羽病院形成外科に勤務中、米国の足病医より指導を受ける。その後、下北沢病院足病総合センターなどの勤務を経た2018年、蒲田駅南口に「足と歩行の診療所」開院。足の病気と歩行の障害の解消に向けて診療を続けている。日本形成外科学会形成外科専門医、日本抗加齢医学会専門医。日本下肢救済・足病学会、日本フットケア学会、日本静脈経腸栄養学会ほか参加学会多数。
着圧ストッキングはむくみに効果がある
編集部
実際のところ、着圧ストッキングはどうなんでしょう?
吉原先生
「効果はある」と思います。基本的に仕組みが、足のむくみ治療に用いる医療用弾性ストッキングと一緒だからです。
編集部
どのような仕組みになっているのですか?
吉原先生
簡単に言うと、足全体を数カ所の部分に分けて締めつけています。むくみの主な原因は、静脈を流れる血液が心臓へ戻りきれないこと。静脈は広がりやすいので、血液を抱え込んでしまうのです。この静脈を拡大させにくくしている働きが1点目です。
編集部
ほかにもあるんですね?
吉原先生
2点目は、ふくらはぎの筋肉を収縮しやすくすること。ふくらはぎは「第2の心臓」とも呼ばれ、収縮することで、その中に流れている静脈の血液を押し上げます。締めつけることで、この収縮もサポートしてくれます。
編集部
その2点が、医療用弾性ストッキングと同じなのですか?
吉原先生
そういうことです。もちろん、締めつけの強さは医療用弾性ストッキングが勝ります。ただし、その強さが非常に強いので、違和感を覚えたり、高齢の方には使いづらかったりするのです。着圧ストッキングの中で高圧クラスのものが、医療用の中くらいのイメージでしょうか。
編集部
効果を感じないという人がいるのは、どうしてでしょう?
吉原先生
ストッキングで補えるレベルを越えてしまったことが考えられます。あるいは、サイズも含めて間違った履き方をされているかですね。医療用弾性ストッキングには弾性ストッキングコンダクターという資格者がいて、サイズや強さを吟味してから処方します。例えば、普段のストッキングがMサイズだからといって、治療に使うストッキングがMサイズとは限らないのです。
足のむくみの原因と顕著な傾向について
編集部
そもそも足のむくみはどうして起きるのでしょう?
吉原先生
先ほど言った「血液の戻りにくさ」の他にも、リンパ液が停滞する「リンパ浮腫」という病気を発症している場合もあります。この病気にも、医療用弾性ストッキングが有効です。
編集部
足のむくみが起きにくい人もいますよね?
吉原先生
血の巡りがいいか、ふくらはぎの筋肉が、きちんと「第2の心臓」の役割をこなしているのでしょう。むくみに気づいていない方もいらっしゃいます。
編集部
女性に多いという印象がありますが?
吉原先生
足の筋肉がついていない分、むくみも起こりやすいはずです。また、いわゆる「美脚」を目指していると、必然的にそうなります。
編集部
むくみの環境要因は?
吉原先生
よく言われるのは「立ち仕事」ですが、「座り仕事」も関係しているんですよ。座っていると、膝と腰が曲がりますよね。自動車教習所に例えると、直線コースではなく、クランクコースのようなもの。なんども曲がりくねった結果、血液が流れにくくなります。
予防の意味でも活用できる
編集部
むくみは「病気」と考えたほうがいいのでしょうか?
吉原先生
日常生活に差し支えが出ていれば病気でしょう。いずれ、下肢静脈瘤や血栓症、皮膚の潰瘍といった疾患に発展することもあります。気になるようでしたら、「むくみ外来」などを受診するようにしてください。
編集部
治療方法は、医療用弾性ストッキング以外にもありますか?
吉原先生
原因が何かにもよります。血の巡りが関係しているのなら、医療用弾性ストッキングによる治療を検討します。足の静脈に蛇行やこぶが生じる「下肢静脈瘤」であれば、専門の治療方法が確立されています。「リンパ浮腫」なら、リンパ管と静脈を結ぶ手術なども行われています。他方で、筋肉をつけるトレーニング療法なども、選択肢としてはありえるでしょう。
編集部
特殊な疾患以外なら、おおむね医療用弾性ストッキングで対応できそうですね?
吉原先生
そうですね。加えて、将来の予防のために医療用弾性ストッキングを活用することも有効です。以前、板前さんの方がいらっしゃって、「いつもゲタを履いているんですけど」と相談されましたが、つま先が空いている医療用弾性ストッキングもありますよ。
編集部
装着感はどうですか? 違和感はあるのでしょうか?
吉原先生
慣れないと気になるでしょう。肌に合わない方は、保湿してから着用するか、保護用のシリコン皮膜などのご用意も可能ですので、ご相談ください。
編集部
保険の適用と費用を教えてください。
吉原先生
医療用弾性ストッキングは治療というより商品扱いですから、基本的に実費です。強さやサイズなどによって、数千円から1万円前後します。もちろん、むくみの診察には、保険が適用されます。
編集部
自分自身でむくみを改善できる方法は?
吉原先生
例えば、かかと上げ運動や、つま先上げ運動です。かかと上げ運動のときは、つま先を地面につけたままでかかとを上げます。つま先上げ運動のときは、かかとをつけたままでつま先を上げます。ともに、ふくらはぎを鍛えるイメージですね。交互に数回ずつおこなうだけで、かなり楽になると思いますよ。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば、お願いします。
吉原先生
ストッキングというと「女性が履く物」というイメージを持たれるかもしれませんが、ぜひ、男性も活用してみてください。膝までのスパッツで、外から見てもわからないようにされている方もいらっしゃいますが、効果の得られない方もいらっしゃいます。ズボンで隠すこともできますから、一度、ご検討されてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
着圧ストッキングは医療用弾性ストッキングと同じ仕組みで、むくみの原因となる静脈の広がりを防いだり、ふくらはぎの筋肉の収縮をサポートしてくれるということがわかりました。また、将来の予防として活用することも有効とのことです。とはいえ、医療用弾性ストッキングのほうが断然締め付けが強く、その分効果も大きいということも頭に入れておきましょう。むくみの原因である血液の循環は、年齢と共に衰えてくるはずです。悩まれている方は、ぜひ市販品やむくみ外来などを活用してみましょう。
医院情報
所在地 | 〒144-0051 東京都大田区西蒲田8丁目1-7 グランタウンビル9F |
アクセス | JR・東急池上線・東急多摩川線 蒲田駅 南口より徒歩1分 |
診療科目 | 形成外科・外科 |