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インフルエンザの新薬「ゾフルーザ」は夢の薬? リスクや副作用はないの?

 更新日:2023/03/28

インフルエンザの猛威が年ごとに増加している中、インフルエンザ治療の新薬「ゾフルーザ」が注目を集めている。その特徴は、従来のインフルエンザ薬と異なり、ウイルスの増殖を抑える効果があること。そして、1回の服用で早期に治るとされていること。現場の最新事情を、「厚木胃腸科医院」の寒河江先生に伺った。

※これは2019年2月5日公開の記事です。掲載内容は公開当時のものであり、最新情報と異なる場合があります。

寒河江 三太郎

監修医師
寒河江 三太郎(厚木胃腸科医院 院長)

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北里大学医学部卒業後、国際親善総合病院での研修を経て慶應義塾大学一般・消化器外科教室に入室。その後、稲城市立病院、平塚市民病院、慶應義塾大学病院で消化器疾患を中心に幅広くキャリアを積み、2015年に父が院長を務める「厚木胃腸科医院」を継承。地域のかかりつけとして一般外来をおこないながら、「厚木から胃や腸のがん患者をゼロにしたい」という思いのもと、専門分野である内視鏡による胃がんや大腸がんの早期発見・早期治療に尽力している。日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本禁煙学会認定指導医。

今までになかった「ウイルスを退治してくれる効果」に注目

今までになかった「ウイルスを退治してくれる効果」に注目

編集部編集部

話題の新薬「ゾフルーザ」について教えてください

寒河江 三太郎寒河江先生

インフルエンザ治療薬として期待されている処方薬です。従来のインフルエンザ治療薬と異なり、インフルエンザウイルスそのものを減らす効果があるとされています。したがって、服用回数もたった1回で、即効性があります。

編集部編集部

従来のインフルエンザ薬にも、1回で済むものがありましたよね?

寒河江 三太郎寒河江先生

点滴タイプの「ラピアクタ」や吸入タイプの「イナビル」などですね。これらは、薬の成分が長くとどまり、ウイルスを細胞内に閉じ込めてくれるお薬です。ウイルスをやっつけてくれるわけではありません。なお、5日間の投与が必要な「リレンザ」や「タミフル」も、効果の意味では一緒です。

【ウイルスを細胞内に閉じこめる従来薬一例】

名称  ラピアクタ  イナビル  リレンザ  タミフル
服用方法 点滴 吸入 吸入 経口
回数日数 1回 1回 1日2回
5日間
1日2回
5日間

編集部編集部

「ゾフルーザ」は夢の薬なのでしょうか?

寒河江 三太郎寒河江先生

ウイルスを殺す働きが従来薬とは比較にならず、数日間の投与も必要としない。服用したそのときから効果が期待できる。こうした臨床試験の結果は良さそうですね。ただしお薬は、広く使われてみないと何ともいえないところがあります。「ゾフルーザ」は昨年の春に発売されたものの、本格的なシーズンとなると、今年が初めてです。

編集部編集部

ウイルスをやっつけてくれるなら、治りが早そうに思います

寒河江 三太郎寒河江先生

たしかにそうですが、発表されているのは、あくまで「平均上」の数字です。どの薬にも、個人差というものがあります。良いお薬であることは間違いなさそうですが、実際の効果となると、まだ誰もわからないのではないでしょうか。

本当に「夢の薬」なら、あと1年待っても遅くはない

本当に「夢の薬」なら、あと1年待っても遅くはない

編集部編集部

先生の医院では、「ゾフルーザ」を処方しているのですか?

寒河江 三太郎寒河江先生

様子を見ているところです。今後の進展によって、2020年から処方を検討しようと考えています。インフルエンザなら、通常の範囲であれば、生死を分けるような事態には至りません。既存のお薬でも、十分に対応できます。新薬に踏み切るとしたら、ある程度の評価が出てからでも遅くはないでしょう。

編集部編集部

治験では、一定の評価が出ているのですよね?

寒河江 三太郎寒河江先生

治験は小さな規模での結果に過ぎません。その規模で理論上の問題がなかったとしても、地球規模ならどうなのか。新薬で問われるのは、常にこの問題です。

編集部編集部

私たちが、もし他院で処方されたら?

寒河江 三太郎寒河江先生

拒む理由はないですし、積極的に服用して構わないでしょう。ただし、小さなお子さんや妊婦さんの場合は、安全性の認められている既存薬をお勧めします。

編集部編集部

今後の見込みについて、可能な限りの知見をお願いします

寒河江 三太郎寒河江先生

例えば「数千」という規模の臨床試験では、「万が一」の副作用リスクが拾えません。インフルエンザはもともと死亡率が低いですから、あえて「万が一」のリスクを取る必要はないと思います。現状のお薬でも改善が見込めますし、やはり、慎重に見守っていきたいですよね。

編集部まとめ

ちょうどこの取材と前後して、「ゾフルーザ」の効かないインフルエンザウイルスが見つかったようです。国立感染症研究所の発表によると、インフルエンザに感染した子どもの患者へゾフルーザを投与したところ、耐性変異ウイルスが検出されたとのこと。改めて、今後の評価や研究が重要になってくるでしょう。

医院情報

厚木胃腸科医院

厚木胃腸科医院
所在地 〒243-0814 神奈川県厚木市妻田南 1-16-36
アクセス 本厚木駅北口1番乗り場から約7分「木売場(きうりば)」下車すぐ
診療科目 内科・消化器科・胃腸科・歯科

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