中絶手術の一般的な流れと基礎知識
人工妊娠中絶は、年間16万件以上行われている手術です。365日の平均で、毎日どの都道府県でも10件近く行われている計算になります。人工妊娠中絶が許されるのは、母体の保護に必要だからであり、赤ちゃんが要らないからという理由では認められません。また、中絶手術の合併症などによって不妊になってしまうこともあります。このように、人工妊娠中絶は簡単な手術ではありません。イメージで中絶を語るのではなく、実際の人工妊娠中絶の流れを知ることが重要です。
中絶手術の流れと周辺知識について、Medical DOC編集部がお届けします。
この記事の監修ドクター:
白須 宣彦 医師(ホワイトレディースクリニック 院長)
目次 -INDEX-
日本における中絶手術の現状
厚生労働省が公表している資料によりますと、平成28年に日本で行われた人工妊娠中絶の件数は16万8,000件あまりとなっています。(「平成28年度衛生行政報告例の概況」より)この数字は、女子の人口1,000人に対して6.5人にあたります。特筆すべきは、19歳以下の未成年者の人工妊娠中絶が全体の9パーセント近くもあり、14歳以下で220件もあることです。
日本産婦人科医会による平成15年の「10代の人工妊娠中絶についてのアンケート」では、避妊していないか、していても不完全なケースが目立っています。また、半数近くが避妊法を知りたいとは思っていないことも判明しています。
減少傾向にある中絶件数
日本における人工妊娠中絶の件数を年次別で見た場合、ここ数年は減少傾向にあります。平成28年は前年比で8,000件以上減少しており、未成年者の件数は1割近く、14歳以下では2割近く減っています。
中絶手術の適応条件
日本で人工妊娠中絶が可能となっているのは、母体保護法に根拠となる規定があるためです。この法律は、第1条で母体の生命健康を保護することを目的として、不妊手術と人工妊娠中絶について規定することを宣言しています。中絶手術が可能なのは、母体の生命健康の危険から保護する必要があると医師によって認定された場合です。
認定の要件は、身体的・経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがあるか、強姦など本人の意思に基づかない行為の結果の妊娠であることとなっています。また、認定による中絶手術ができるのは、都道府県医師会の指定医師です。
具体的な適応条件
母体に生命健康の危険があると判断されれば、どんな場合でも中絶手術ができるわけではありません。まず、妊娠22週未満であることが絶対条件となっています。妊娠22週になると、母体保護法が人工妊娠中絶を認める、母体外の生命保持ができない時期を外れるためです。本人がどんなに希望したとしても、法令違反となるため中絶手術はできません。この週数は、厚生事務次官通知によって決められています。
次に、中絶手術の流れの前段階として、本人のみならず配偶者の同意も必要です。ただし、配偶者が知れない、意思表示ができない、死亡した場合は本人の同意だけで手術できます。
中絶手術の方法と基本的な内容
妊娠22週未満であることと、配偶者の同意についての条件をクリアできれば、指定医師のいる医療機関を受診します。ひとくちに中絶手術といっても、妊娠週数や胎児の成長具合によって内容が変わってきます。診察・検査によって妊娠状態を確認し、妊娠以外の身体状況も考慮したうえでの手術となります。
診察・検査で問題がなくても、指定医師の側で適応条件に合致することが確認できなければ、認定による人工妊娠中絶は受けられませんので、しっかりと準備することが重要です。
中絶手術当日に用意するもの
医療機関に提出・提示するものの他、中絶手術の当日に用意したほうがよいものは以下のとおりです。
・出血に備える下着や生理用品
・入院が想定される場合に必要な身の回りの物品
入院の必要性については、事前に指定医師と確認しておきます。
中絶手術の方法
人工妊娠中絶の方法は、妊娠12週未満と12週以降で大きく異なります。
子宮内容除去術
人工妊娠中絶としては、12週未満の妊娠初期に実施される手術です。子宮内の胎児や周辺組織を除去するもので、吸引法とそうは法の2とおりがあります。
・吸引法…子宮内に挿入する管のような吸引器具を用いて、胎児などを吸引する方法です。
・そうは法…胎盤鉗子と呼ばれる器具とキューレットと呼ばれる器具を用いて、胎児などをかき出す方法です。
人工妊娠中絶のことを「そうは」と呼ぶ人もいますが、そうは法からきています。現在では、より安全な吸引法を実施する医療機関が増えているといわれています。
人工分娩
妊娠12週以降は、子宮の内容物を除去する方法では対応できないくらいに胎児が成長しています。そのため、人工分娩の方法により人工妊娠中絶を実施します。
中絶手術そのものの流れ
子宮内容除去術では、多くの場合、事前にラミセルやダイラパンなどの器具を用いて子宮頸管の拡張が行われます。この処置は手術前日から行われることもあります。
手術に先立ち麻酔を行います。子宮内容除去術で使用される麻酔は、注射や点滴を用いた静脈麻酔が主流です。麻酔が効いたら子宮内容物の除去が実施されます。まず、子宮頸管の拡張を十分なものとします。次に、内容物を吸引またはそうはによって除去します。異常がないことを確認すれば手術そのものは終わりです。時間的には30分以内に終わることも珍しくないなど、短時間でできます。
人工分娩では、分娩に備えた子宮頸管の拡張を行うことが必須です。妊娠初期のケースとは異なり、複数回、数日をかけて子宮頸管の拡張を行うこともあります。手術は陣痛誘発剤を用いて行われます。あくまでも分娩であるため、要する時間はケースバイケースです。状況によっては、中断して後刻再開するなどの対応が必要となります。分娩を終えると、子宮内に残存物がないかを確認し、必要であれば子宮内用除去術を実施します。
施術後にすべきこと
初期の人工妊娠中絶では必要ありませんが、中期の場合は分娩であり役所への届出が必要となります。死産届を出し、火葬して埋葬する一連の手続です。
母体のケアとしては、入院するしないにかかわらず、しばらくは普段にも増して体調の変化や不正出血に気を配る必要があります。
中絶手術を受ける前に考えるべきこと
人工妊娠中絶は、合併症のリスクがある手術です。また、妊娠初期の吸引法などは比較的簡単な手術だと考えられがちですが、負担がないわけではありません。妊娠中期に入ると身体的・精神的・経済的負担はさらに大きなものとなります。妊娠中期を過ぎてしまうと人工妊娠中絶が不可能となることも加味すれば、不安な状態でありながらも、中絶するのか出産するのかについて迅速な判断が求められます。
必要であれば、専門医のカウンセリングを受けることも考えられます。最終的に人工妊娠中絶をするにしても、出産するにしても、本人の意思が重要であることは間違いありません。配偶者がいる場合は、母体の保護の観点も踏まえてよく話し合うことが大切です。
中絶手術は、肉体的にも、精神的にも、経済的にもダメージを与えてしまいます。人工妊娠中絶手術はあくまでも最終手段であって、妊娠を飲ま望まないのであれば、正しい方法で避妊をすることが本来あるべき姿だと考えます。正しい避妊こそが、女性の身体を守る最大の武器なのです。将来妊娠を望まれた患者さんが、笑顔でその時を迎え、赤ちゃんをその手に抱くことが出来るように、心より祈っています
監修ドクター:白須 宣彦 医師 ホワイトレディースクリニック 院長
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