なぜ「暑いと眠れない」のかご存じですか?対処法と考えられる病気も医師が解説!

暑くて眠れない時はどうすれば良い?メディカルドック監修医が対処法や考えられる原因・病気などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
暑いと眠れないのはなぜ?
暑いと眠れないのは、眠りに必要な体温の調節がうまくできないからです。人間の体温には、脳や臓器の体温「深部体温」と、皮膚の表面温度「皮膚温」の2種類があります。私たちが眠りにつく際は、この2種類のうち「深部体温」が下がることが分かっています。
しかし、室温が高い・発熱しているなどの場合、体が熱を放散できず、深部体温は下がりにくくなります。その結果、暑いと寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりするのです。
暑くて眠れないときの主な原因と対処法
暑くて眠れない場合、考えられる原因はいくつかあります。原因ごとの対処法を見ていきましょう。
夏の夜に暑くて暑くて眠れない場合の対処法
夏の夜に眠れないのは、室温が高いため深部体温がうまく下がらないことが主な原因です。
以下のような工夫で、快適に感じる室温を保ちましょう。
| エアコンを適切に使う | ・寝る少し前から部屋を冷やしておくのも良い ・冷えすぎないよう、風は直接体に当たらない向きに調整する ・一晩中つける方が室温は安定する |
| 寝具を工夫する | ・吸湿性や通気性のよいシーツやパジャマを選ぶ ・接触冷感素材を選ぶのもよい |
| 外からの熱を遮断する | ・遮光や断熱効果のあるカーテンを使用すると、外からの熱を遮断できる |
また、就寝1〜2時間前の入浴も、血流が良くなり熱が発散されるため良質な睡眠につながります。脱水を防ぐため、水分摂取も心がけましょう。ただし、カフェインやアルコールは睡眠の質を下げてしまいます。夕方以降のカフェイン摂取は控え、寝酒は避けましょう。
風邪・発熱で暑くて眠れないときの主な原因と対処法
風邪やインフルエンザをはじめとする感染症になると発熱し、暑くて眠れなくなることがあります。おもな症状は、発熱、体全体の暑さや寒気、頭痛やだるさなどです。発熱時の暑さには、首すじや脇の下、太ももの付け根など、太い血管が通っている場所を冷やすと効果的です。処方された解熱剤があれば、服用するのもよいでしょう。また、 脱水予防には水分補給も欠かせません。経口補水液やスポーツドリンクなど、塩分・糖分が適度に含まれた水分をこまめにとるようにしましょう。
ただし、38.5℃以上の高熱が続き水分が取れない、呼吸が苦しいといった場合は、感染症が改善していなかったり、重症化していたりする可能性があります。医療機関の受診も検討しましょう。
夏以外の季節で夜に暑くて眠れないときの主な原因と対処法
夏以外でも夜に暑くて眠れない場合、自律神経のバランスが乱れたことが原因かもしれません。ストレスや生活習慣の乱れが続くと、体を調節する自律神経のバランスが崩れ、体温や睡眠に影響が出る可能性があるのです。
自律神経のバランスが乱れたことによる症状を、いくつか紹介します。
・動悸がする
・寝汗が増える
・不眠やイライラが出る
・手足が冷えるのに体は熱い
自律神経のバランスを整えるには、ストレスをためない、リラックスするなどがおすすめです。入浴したりアロマを利用したりするのもよいでしょう。生活に支障をきたすほどの症状の場合は、心療内科や精神科に相談してみるのも一つの方法です。
体がほてる・暑くて眠れないときの主な原因と対処法
顔や体がほてり、暑くて眠れない場合、ホルモンバランスの変動による可能性も考えられます。保冷剤や濡れたタオルなどを使ったり、通気性のよい寝具やパジャマに変えたりしてみてください。
考えられる病気は更年期障害です。動悸や食欲低下、気分の落ち込みなどもあり、症状が強い場合は、婦人科を受診しましょう。
背中が暑くて眠れないときの主な原因と対処法
背中だけが暑くて眠れない場合、寝具や寝姿勢が原因で熱がこもっている可能性があります。以下のような対処法を試してみましょう。
・通気性がよく、背中に熱がこもりにくい寝具を選ぶ
・仰向け寝ではなく、横向きで寝る
なお、抱き枕を使うと、横向きで寝やすいかもしれません。
ただし、背中の暑さは自律神経やホルモンバランスの乱れが関連していることもあります。
症状が改善せずに眠れない日々が続く、ほてりや動悸があるなどの場合は、内科を受診しましょう。
お風呂上がりに暑くて眠れないときの主な原因と対処法
お風呂上がりに暑くて眠れないのは、入浴によって一時的に深部体温が上がるためです。体温調節に関わる自然な症状のため、基本的には心配ありません。
入浴直後は血行が良くなり暑く感じやすいため、就寝の1〜2時間前に入浴を済ませるようにしてみましょう。
また、湯温が高いと神経が興奮状態になり、寝つきを妨げる可能性もあります。お風呂の設定温度が高すぎないかも見直してみてください。
ただし、入浴後以外でも頻繁にほてりを感じる、生活習慣を見直しても続く場合、ホルモンや自律神経の異常も考えられるため、かかりつけの医療機関で相談してみましょう。
【女性】暑くて眠れないときの主な原因と対処法
女性の場合、ホルモンバランスの変動によって体温調節機能が乱れ、暑くて眠れないことがあります。
生理前に暑くて眠れないときの主な原因と対処法
生理前にほてりやのぼせで眠れない場合、女性ホルモンの変動によるPMS(月経前症候群)の可能性があります。
PMSの症状の例は、以下のとおりです。
・体が熱っぽい
・めまいやだるさ
・イライラや気分の落ち込み
PMSはストレスの影響も大きいとされています。ストレスを溜めないよう心がけ、リラックスできる時間を作りましょう。
症状が重く、日常生活に支障をきたす場合は、婦人科へ相談してみてください。
妊娠後期に暑くて眠れないときの主な原因と対処法
妊娠後期は、基礎代謝の増加やホルモンの影響で、体が熱っぽくなります。対処法は、以下のとおりです。
・脱水予防に水分をこまめにとる
・エアコンを使用して、快適な室温に保つ
・ゆったりとした通気性のよいパジャマを選ぶ
妊娠中に暑がりになるのは、生理的なものであるため基本的には問題ありません。しかし、暑さによる睡眠不足で体調が悪くなる、発熱している、水分がとれないなどの場合はかかりつけの産科へ相談しましょう。
すぐに病院へ行くべき「暑くて眠れない」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
暑くて眠れず意識がもうろうとする・けいれんがある場合は、救急科へ
以下のような症状がある場合は、熱中症の可能性があります。
・意識がもうろうとしている
・けいれんがある
・呼吸が苦しい
会話ができないような状態やけいれんがある場合などは、迷わず救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。
「暑くて眠れない」症状が特徴的な体調不良・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「暑くて眠れない」に関する症状が特徴の不調を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など不調について気になる事項を解説します。
夏風邪
夏風邪は、以下3つの病気を中心とした、夏に流行する感染症の総称です。
・咽頭結膜熱(プール熱)
・手足口病
・ヘルパンギーナ
おもな症状は発熱や喉の痛み、手や喉の水疱(水ぶくれ)などです。
いずれもウイルスが原因のため、特別な治療法はありません。症状に合わせて解熱剤や喉の痛みを和らげる薬などが処方されます。
水分や睡眠をしっかりと取り、ゆっくりと休みましょう。
ただし、高熱が続く、水分が取れないなどの場合は内科を受診してください。
夏バテ
夏バテは、食欲不振やだるさ、睡眠障害などがあらわれる状態です。
原因ははっきりしていませんが、自律神経のバランスが乱れることが関係しているという説もあります。
夏バテを疑う場合は、生活リズムを整える、栄養バランスのよい食事をとる、こまめに水分をとるなどを心がけましょう。無理のない範囲で運動習慣をつけるのもおすすめです。
ただし、症状が重く、日常生活に支障をきたす場合は内科やかかりつけ医を受診してください。
脱水症状
脱水症状とは、体内の水分と電解質が不足した状態です。特に暑い時期や発熱、下痢などの時は、大量の汗をかくため、脱水症状になりやすい傾向があります。
症状が進むと体温調節がうまくできなくなり、発熱やほてり、だるさなどがあらわれます。
脱水を疑う場合、水分と塩分を補給することが重要です。経口補水液やスポーツドリンクをこまめに飲みましょう。
ただし、水分をとっても意識がもうろうとしている、尿が出ないなどの場合は、早急に内科を受診しましょう。
糖尿病性神経障害
血液中の過剰な糖によって神経が障害され、糖尿病の合併症の一つ「糖尿病性神経障害」があらわれると、自律神経も障害され、体温調節がうまくいかなくなる可能性があります。
自律神経は体温を調節しているため、傷つくとうまく汗をかけなくなり、熱がからだにこもって暑いと感じることがあるのです。
糖尿病性神経障害を悪化させないためには、適正な血糖コントロールが欠かせません。医師といっしょに、食事療法や運動療法、薬物療法などに取り組みましょう。
暑さの症状が軽く、一時的な物であれば次回の受診時に医師へ伝えれば大丈夫です。
ただし、異常な暑さが毎日続く、次の受診日が遠い、手足にしびれや感覚の異常があるなどの場合は早めの受診を検討してください。
更年期障害
更年期障害は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって生じる閉経前後5年間に起こる心身の不調です。ホットフラッシュと呼ばれる突然のほてりや発汗が起こる方も多く、夜の睡眠を妨げることもあります。
治療には、ホルモン補充療法や漢方薬などが使われます。ほてりや発汗、イライラ、不眠などの症状が重く日常生活に支障をきたす場合は、婦人科を受診しましょう。
病院受診・予防の目安となる「暑くて眠れない」ときのセルフチェック法
以下のような症状がある場合は、受診の必要があるかもしれません。当てはまるものがないか、確認してみましょう。
・暑くて眠れない以外に体重減少、動悸、発熱などの症状がある
・手足の痺れや感覚の異常がある
・眠れない症状が1週間以上続いている
睡眠不足が続くと自律神経のバランスがさらに乱れたり、感染症にかかりやすくなったりする可能性もあります。
症状がつらい場合は、受診も検討してみてください。
「暑くて眠れない」ときの正しい対処法は?
暑くて眠れないときの正しい対処法を解説します。
暑くて寝苦しい夜でも寝付きを良くするためには?
暑くて寝苦しい夜は、以下のような方法を試してみましょう。
・エアコンを使い、快適な室温に調整する
・保冷まくらや保冷剤、水で濡らしたタオルなどを使用し、体を冷やす
・就寝の1~2時間前に入浴する
市販の睡眠改善薬は一時的な不眠には有効ですが、「暑くて眠れない」という根本的な原因を解決するものではありません。
長期の服用は避け、不眠が続く場合は医師へ相談しましょう。
暑くて眠れないときに冷却シート湿布や解熱剤などを使用して良い?
発熱による暑さが原因の場合、解熱剤を服用すると体温が下がり、一時的に体がラクになり眠れる可能性があります。医師の指示した服用タイミングや量を守って服用してください。
また、冷却ジェルシートを始めとする冷却グッズも、ひんやりした感じが気持ちが良いなら使用してもよいでしょう。
ただし、原因がわからないほてりや、しびれ、けいれんなどを伴う場合は、解熱剤や市販の冷却グッズで対処できないケースも少なくありません。医療機関を受診しましょう。
体の火照りと睡眠の改善のために、生活習慣で改善できることはある?
体がほてって眠れない場合、以下の生活習慣を試してみてください。
・就寝1~2時間前にゆったりと入浴する
・就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は控える
・夕食は消化の良い物を選び、就寝直前の夜食は控える
・バランスのよい食生活を送る
・運動習慣をつける
・規則正しい生活を送る
できるものから少しずつ取り入れてみてください。
「暑くて眠れない」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「暑くて眠れない」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
全身が暑くて夜眠れないときはどうしたらいいですか?
伊藤 陽子(医師)
まずは、室温や寝具を見直しましょう。近年は通気性が良いものや、肌にあたる部分を触ると冷たく感じる素材などさまざまな寝具があります。自分に合う物を見つけることも良いでしょう。暑い日はエアコンを利用して、低くなりすぎない温度設定で体に風を当てないようにすると睡眠中も快適に過ごせることも多いです。エアコンを適切に使い通気性の良いパジャマやシーツに替えるだけで、症状が改善することもありますので、試してみましょう
なるべくクーラーを使用しないで、眠れる方法はありますか?
伊藤 陽子(医師)
扇風機やサーキュレーターを使い、部屋の空気を循環させましょう。保冷剤で首や太ももなどの太い血管が通る部位を冷やし、熱を放散させる方法もあります。ただし、部屋が高温になると熱中症のリスクが高まるため、温度をやや高めに設定してクーラーを使うことも検討してみてください。
冬でも体が暑くて眠れないのは自律神経が乱れているのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
自律神経は体温調節に関わるため、はたらきが乱れると冬でも体が暑くて眠れなくなる可能性は考えられます。ただし、室内の暖房が効きすぎている、寝具が厚すぎるなどの環境要因も考えられるため、室内環境も合わせて見直してみてください。
まとめ 暑くて眠れないときは睡眠環境を見直そう
暑くて眠れないのを我慢しすぎると熱中症になったり、睡眠不足からの体調不良に陥ったりする可能性もあります。まずは室温や寝具、生活習慣を見直してみましょう。ただし、自律神経やホルモンバランスの乱れによって体が暑くなっている可能性もあるため、必要に応じて医療機関の受診を検討してみてください。
「暑くて眠れない」症状で考えられる病気
「暑くて眠れない」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
内分泌の病気
- 自律神経失調症
- 糖尿病性神経障害
暑くて眠れない場合、体温調節に関わる体の器官に異常が出ている可能性もあります。症状が重い、続くなどの場合は受診も検討してみてください。