「会話のテンポが遅い」症状で考えられる病気は?病気別の対処法も医師が解説!

話すスピードや言葉選びに時間がかかるのは個人差があります。また、加齢とともに会話のペースが遅くなることもあります。
しかし会話のテンポが極端に遅く、コミュニケーションが円滑に取れない場合、何らかの病気が関係しているかもしれません。
本記事では、会話のテンポが遅くなる原因として考えられる病気を紹介します。さらに、初期症状や病気ごとの対処法についても解説します。

監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
会話のテンポが遅い症状が見られる病気は?
極端に会話のテンポが遅かったり、コミュニケーションが取りにくかったりする場合には、以下のような病気が考えられます。
発達障害
うつ病・適応障害
統合失調症
脳卒中
認知症
アルコール依存症
では、具体的にどのような症状があるのか見てみましょう。
発達障害
会話のテンポの遅さには、発達障害が隠れている可能性があります。会話の支障をきたしやすい発達障害は、言語障害や発声発語障害などです。具体的な症例は、以下のとおりです。
喉頭病変:声帯に炎症やポリープなどが発生し、声の大きさや高さなどで障害が出る
喉頭まひ:喉頭に関する神経で障害が生じかすれ声や失声などの症状が出る
痙攣性発声障害:喉の声帯で痙攣が生じ声のつまりや途切れ、息漏れなどの症状がある
失声症:精神的なショックがきっかけで声が出せない状態になる
失語症:脳や頭部の外傷で言語能力(聴く・話す・読む・書く)に障害が出る
変声障害:喉頭の大きな変化で声が出にくくなる
構音障害:構音器官や脳・筋肉などの障害で発音自体に障害が出る
言語発達障害:平均発達水準から言語や話し言葉で発達の遅れがある
聴覚障害:加齢による聴力の低下や先天性の聴覚障害で、耳の聞こえが悪く会話に支障が出る
症状によっては気付きにくいものもあるため、人によっては見極めるのは難しいかもしれません。心当たりがある症状があれば、医療機関で検査や診察を受けましょう。
うつ病・適応障害
うつ病や適応障害などの精神疾患でも、会話のテンポの遅さが症状として現れやすいです。うつ病は憂うつな気分や食欲不振・睡眠不足など心身ともに不調の状態が続くのが特徴です。うつな状態は数日経過すれば回復しますが、うつ病は長期的に無気力や憂うつの状態が続きます。うつ病の状態に陥ると会話も乏しくなるため、会話のテンポも遅れがちになります。うつ病の具体的な症状は以下のとおりです。
一日中落ち込んで気分になる
やる気が起きない
食欲不振に陥る
疲れが抜けにくい
集中力がなくなる
睡眠不足になる
頭が回らず会話のやり取りも乏しくなる
自己肯定感が低くなる
興味があったものに興味をなくす
怒りっぽくなる
一方、適応障害は周囲の環境に適応できず、外部のストレス要因によってうつ症状や不安・身体の不調などをきたすのが特徴です。例えば慣れない仕事で過度なストレスを抱えてしまうと、適応障害で業務や私生活などで支障をきたしやすくなります。適応障害の具体的な症状は以下のとおりです。
不安や恐怖感・憂うつ・喪失感などネガティブな感情を抱きやすくなる
動悸が激しくなる
気分が落ち込みやすくなる
暴飲暴食をしてしまう
怒りっぽくなる
意欲が低下する
気分の落ち込みで会話のテンポが遅れがちになる
問題行動(喧嘩や勤務怠慢・無謀な運転など)を起こしやすくなる
うつ病と適応障害は似ている部分がありますが、特徴や症状などは異なります。それぞれの症状は異なるため、医療機関で診断を受けたうえで本人に合った治療法でアプローチすることが重要です。
統合失調症
統合失調症とは、幻覚や妄想・考えの混乱などの症状で日常生活に支障をきたす精神疾患です。陽性症状と陰性症状の2種類があり、100人に一人が発症するといわれています。主に思春期や青年期に発症しやすいのが特徴です。幻聴や妄想などの症状に陥ってしまうと、今あることに目を向けることが困難になるため、周りの説得にも応じるのが難しくなってしまいます。また、人とのコミュニケーションが取りにくくなるのもポイントです。考えをまとめることが困難になるため、会話のテンポの遅さのみならず、支離滅裂な表現や脈絡のない発言などが目立ちやすくなります。統合失調症の発症原因は、ストレスに対する脳の脆弱性や出生時・環境・性格などさまざまな要因が考えられますが、実際のところ具体的な発症メカニズムは明らかにはなっていません。しかし早めに治療を行えば、スムーズな回復が期待できます。
脳卒中
脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳機能に支障をきたす病気です。これらの症状が起こると、脳出血やくも膜下出血・脳梗塞などというような病気に至ってしまいます。年間約10万人の方が亡くなっている脳血管疾患であるため、早期での治療が不可欠です。脳卒中の具体的な症状は以下のとおりです。
手足の麻痺や痺れなどがある
顔半分が麻痺している
ろれつが回らない
言葉が出ない
他人の言うことが理解できない
まっすぐ歩けない
片方の眼が見えない
視野の半分が欠ける
激しい頭痛やめまいなどがある
ろれつが回っていなかったり、言葉が出にくくなっていたりする場合には脳卒中の可能性があるでしょう。速やかな治療であれば命をとりとめますが、言語や運動機能に障害が残る場合があります。脳卒中の主な原因は、高血圧や糖尿病・喫煙・多量飲酒・高コレステロール血症などです。生活習慣が乱れている方は、脳卒中発症のリスクがあるため注意が必要です。
認知症
認知症とは脳機能の低下に伴い、記憶や判断力・運動などさまざまな部分で障害が起こる疾患です。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などさまざまな種類があり、時間の経過とともに重症化する傾向にあります。言語の部分でも障害が残りやすく自分の思っていることを言葉にできなかったり、流暢な発音ができなくなったりと会話のテンポも遅れがちになります。認知症と聞くと高齢者のイメージがありますが、若年層でも発症するケースは珍しくありません。以前よりも会話のテンポが遅れがちになったり、物忘れが目立ったり、同じ話を繰り返したりする場合には認知症の疑いがあるでしょう。
アルコール依存症
アルコール依存症とは、お酒を飲み続けないといられない状態の疾患です。適度な飲酒であればよいですが、大量飲酒が習慣化してしまうと常にお酒が欲しいという状態に陥りやすくなります。アルコール依存症の原因は、飲酒に伴うドーパミンの分泌増加です。ドーパミンが分泌されると快楽や喜びを感じ、アルコールと結びついてしまうと飲酒量が増えやすくなります。アルコール依存症の症状は以下のとおりです。
常にお酒が欲しくなる
多量飲酒が習慣化している
お酒がやめられない
酔い覚めで不快感がある(手の震え・汗・動悸・吐き気・不眠など)
酔った状態が習慣化する
酔いが回っている(ろれつが回らない・会話が成立しないなど)
会話のテンポが遅くなる原因として、大量飲酒によるろれつの回らなさや、会話が成立しづらい状態が挙げられます。たまたま酔っていた場合にはよいですが、常に二日酔いの状態で会う機会が多い場合には、アルコール依存症の疑いがあるでしょう。
会話のテンポが遅くなる病気の初期症状と見分け方
できるだけ早く病気の兆候を把握したいものです。しかし、会話のテンポが遅いだけでは病気かどうか判断するのは難しいでしょう。そこで、初期症状の特徴を知ることで見分けやすくなります。それぞれの病気では、どのような初期症状があるのか見てみましょう。
発達障害の初期症状
発達障害の初期症状は、症状によって異なるため簡単に見分けるのは難しいです。幼少期にADHDやASD・学習障害など目立った症状があれば早期発見につながりやすいですが、目だった症状がなく日常生活を過ごしていた場合は見過ごされる可能性があります。目立ちにくい症状の場合には社会に出てから発覚することが多く、業務のミスの多さやコミュニケーションの取りにくさ・集中力のなさなどが目立ちやすいです。人によっては発達障害かどうか見極めるのが難しい場合もあるため、会話のテンポが遅くても見過ごされるケースがあります。
うつ病・適応障害の初期症状
うつ病や適応障害の初期症状には、会話のテンポの遅さに加え、気分の落ち込みや仕事上のミス・感情の起伏の激しさなどが挙げられます。特に普段元気にしている方であれば、その異常さに気付きやすいでしょう。また、行動面においては無断欠勤や遅刻などの問題行動が増えやすいのもポイントです。
統合失調症の初期症状
統合失調症には発症の兆候とみられる前駆期と呼ばれる症状があります。具体的には不眠や食欲不振・不安・緊張・抑うつ気分などです。これらの症状が長期間続く場合に、統合失調症の発症の可能性が考えられます。しかし症状によっては必ずしも統合失調症とは限らないため、自力で見極めるのは難しいです。少しでも心身ともに調子が悪そうに見える場合には、一度精神科や心療内科で早めの受診が望ましいでしょう。
脳卒中の初期症状
脳卒中は、突発的に症状が現れたり、一時的に症状が落ち着いたりと病気によって症状のパターンが異なるのが特徴です。例えば脳梗塞や脳出血の場合、ろれつの回りにくさや運動機能の障害などの症状が挙げられます。病気によって症状のパターンが異なるため見分けるのは難しいですが、身体に何か異変があれば速やかに救急車を呼ぶのが望ましいでしょう。
認知症の初期症状
認知症は、初期・中等症期・重症期・終末期と4つの段階に区分けされているのが特徴です。そのため初期の症状を把握すれば、早い段階から認知症の治療が可能になります。認知症の初期症状には、記憶障害や判断力の低下が挙げられます。具体的な症状は以下のとおりです。
もの忘れが目立ちやすくなった
以前覚えていたことが忘れやすくなった
言葉の意味を理解するのが難しい
日付や曜日などが忘れやすくなった
帰り道がわからなくなる
なくしものが増えた
このような症状が見られた場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。
アルコール依存症の初期症状
アルコール依存症の初期症状はありますが、自覚がないケースが多いため見極めるのは難しいです。最初はちょっとの量と思っていたとしても、気付いたときには大量に飲んでいる場合があります。アルコール依存症の見極めポイントは、断酒した状態です。アルコールが抜けた際に、飲酒をしないと不快感を抱くかどうかも重要なポイントになります。
急に会話のテンポが遅くなった場合の対処法
突然会話のテンポが遅くなった場合は、まず原因を確認し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。会話のテンポの変化は、日常生活に影響を与えることがあります。その原因として、病気の発症が関係している可能性もあります。会話の変化は、病気のサインとなることもあるため、注意深く観察することが大切です。
会話のテンポが遅い症状がある方とのコミュニケーションの注意点
会話のテンポが遅い方とのコミュニケーション方法は、その方の状態や原因によって異なります。例えば聴覚障害のある方には筆談や手話を用いる、認知症の方にはゆっくりとわかりやすい言葉で話すなど、それぞれの状況に応じた対応が必要です。脳卒中のように突発的な症状の場合には、緊急で救急車を呼ばなければなりません。このように会話のテンポが遅い症状によって対応が異なるため、そのときの状況に合わせた行動が重要です。
まとめ
会話のテンポが遅い方のなかには、意外な障害や病気などが隠れているケースがあります。もともと会話のペースがゆっくりな方もいます。一方で、これまでスムーズに話せていた方の会話が急に遅くなった場合は、何らかの健康上の変化が関係している可能性があります。
少しでも心当たりがある方は、速やかに医療機関を受診しましょう。