「睾丸が小さい」で考えられる病気はご存じですか?男性不妊との関係も医師が解説!

「睾丸が小さい」と感じる場合、何か病気が隠れているのではないかと不安に思う方もいるかもしれません。 睾丸の大きさには個人差がありますが、ホルモンの異常や機能の低下が関係している可能性もあります。 特に、男性不妊の原因となることもあるため、注意が必要です。 今回は、睾丸の機能と仕組み、睾丸が小さい場合に考えられる病気、男性不妊の特徴について詳しく確認しましょう。

監修医師:
五藤 良将(医師)
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
目次 -INDEX-
睾丸の機能と仕組み
睾丸は、男性の陰嚢内部にある卵形の臓器で、男性ホルモンの分泌と精子の生成という重要な役割を担っています。
睾丸の男性ホルモンはライデッヒ細胞によって分泌され、精子は精母細胞によってつくられるとされています。
睾丸は体温より少し低い温度で効率的に働くため、陰嚢が身体の外にぶら下がっている構造となっており、睾丸の過熱を防ぎ、適切な環境を維持できると考えられています。
また、陰嚢の筋肉が温度変化に応じて収縮し、睾丸を体内に引き上げることで温度を調整する仕組みが備わっています。
ただし、これらの機能を維持するためには、適切なケアや健康管理が重要であると考えられています。
睾丸が小さい場合に考えられる病気
睾丸が小さい場合、どのような病気が考えられるのでしょうか?
以下で詳しく解説します。
停留睾丸
一つ目は、停留睾丸です。 概要や診断、治療などについて以下で解説します。停留睾丸とは
停留睾丸とは、睾丸が本来あるべき陰嚢内に収まらず、途中で移動が止まってしまう状態を指します。 胎児期にお腹の中から陰嚢へと自然に下降しますが、出生時に睾丸が陰嚢にない赤ちゃんは正期産児の3%程度、早産児では30%程度にのぼるとされています。 しかし、ほとんどの場合では生後4ヵ月までに、自然に下降すると考えられていますが、1歳を過ぎても睾丸が陰嚢内にない場合は、適切な治療が必要となります。 放置すると精子の形成に影響を及ぼし、不妊のリスクが高まるほか、将来的に睾丸がんのリスクが増すこともあるため、医師の診察を受け、早めに適切な対応をすることが大切です。診断
停留睾丸の診断では、まず陰嚢内に睾丸が触れるかどうかを確認することが重要です。 新生児期には、医師が注意深く触診を行い、睾丸が正常な位置にあるかを調べます。 一方で、腹腔鏡検査は、睾丸が鼠径部で確認できない場合に、腹腔内に睾丸が残っていないかを調べるときに用いられます。 適切な診断を行うためには、医師による触診が基本となり、必要に応じて追加の検査を受けることが推奨されます。治療
停留睾丸の治療は手術療法になります。 手術では、睾丸の位置に応じて鼠径部や腹腔内を探索し、陰嚢内に固定する処置が行われます。 また、非触知睾丸の場合には、腹腔鏡を用いて睾丸の位置を確認したうえで治療を行うことがあります。 治療の選択には患者さんごとの状況が考慮され、適切な診断と医師による判断が重要です。退院後の注意点
退院後の注意点として、手術後の最初の2日間程は痛みが続くことがあるため、必要に応じて痛み止めの座薬を使用するとよいでしょう。 術後48時間が経過すればシャワーを浴びられ、3日目以降には入浴も問題なく行えます。 また、排泄時に傷口が汚れることがあるため、温水シャワーでやさしく洗い流し、清潔を保つことが大切です。 さらに、長期的な健康管理も重要です。 停留睾丸の手術を受けた方は、将来的に睾丸腫瘍のリスクがわずかに高まる可能性があるため、定期的な経過観察が推奨されます。 セルフチェックを行いながら、異常があれば早めに医師に相談することが大切です。停留睾丸による影響
停留睾丸は、いくつかの健康リスクや生活への影響を引き起こす可能性があります。 まず、不妊症のリスクが挙げられます。 停留睾丸が陰嚢内にないと睾丸が高温環境に置かれるため、精子を作る細胞が減少し、乏精子症や無精子症になる可能性が高まるとされています。 また、停留睾丸では睾丸よりも睾丸腫瘍の発生リスクが3〜4倍高いとされていますが、思春期前の手術でこのリスクが減少する可能性が示唆されています。 さらに、放置すると精索捻転や鼠径ヘルニアのリスクが増加すると考えられています。 身体的な問題だけでなく、陰嚢内に睾丸がないことが心理的な引け目につながる場合もあるため、早期の治療と定期的な経過観察が重要です。遊走睾丸(移動性睾丸)
2つ目は遊走睾丸(移動性睾丸)です。 概要、治療方法について解説します。遊走睾丸(移動性睾丸)とは
遊走睾丸(移動性睾丸)は、睾丸が陰嚢内から鼠径部へと動きやすい状態を指します。 遊走睾丸の原因として、睾丸を引き上げる筋肉の反射過剰や固定不良が挙げられます。 場合によっては、遊走睾丸が停留睾丸へ進行することもあり、この場合は手術が必要になることもありますが、早期の診断と経過観察により、適切な対応が期待されます。 しかし、睾丸が頻繁に挙上したり、位置が安定しない場合には、睾丸の発育に影響を及ぼす可能性があるため、医師による診断が推奨されます。治療
遊走睾丸の治療は、睾丸が陰嚢内に安定せず、常に上に挙がった状態が続く場合に検討されます。 成長とともに自然に落ち着くことが期待されるため、経過観察が基本となりますが、睾丸が陰嚢外の高温環境に長時間留まると、精子の形成能力が低下し、不妊のリスクが高まる可能性があるため、早期の診断と適切な対応が重要です。 遊走睾丸が停留睾丸へ移行するケースや、症状が改善しない場合には、手術による治療が選択されることもあります。 治療の必要性や適切なタイミングは、個々の状態によって異なるため、医師の判断が欠かせませんが、適切な診断と治療を受けることで、長期的な健康維持が期待できます。男性不妊の特徴
睾丸が小さい場合、精子の生成能力が低下し、男性不妊と関係することがあります。
以下では、男性不妊の主な特徴について詳しく解説します。
睾丸が小さいなどの異常がある
男性不妊の特徴として、睾丸の大きさや硬さの異常が挙げられます。 睾丸が小さい、または思春期以降に縮小した場合、精子の生成能力が低下している可能性があります。 また、触れた際に弾力がなく、やわらかい場合も睾丸機能の低下が疑われます。 さらに、陰嚢表面に目立つ血管が多い傾向にある場合は精索静脈瘤の可能性があり、血流の滞りによる睾丸の温度上昇が精子形成に悪影響を及ぼすことがあります。 気になる症状がある場合は、早めの受診が推奨されます。特定の手術歴や病歴がある
男性不妊の要因として、特定の手術歴や病歴が影響を与えることがあります。 幼少期に鼠径ヘルニアの手術を受けた場合、精子のとおり道である精管が影響を受け、精子の形成や通過に問題が生じることがあります。 また、おたふく風邪に伴う睾丸炎で睾丸が腫れた経験があると、睾丸機能の低下につながる可能性があります。 さらに、抗がん剤治療や放射線治療を受けた場合、精子形成に長期的な影響を及ぼすことがあるため、医師の診察を受けることが重要です。生活習慣が乱れている
生活習慣の乱れは、男性不妊のリスクを高める要因の一つとされています。 喫煙や過度な飲酒は、精子の質や数の低下を招く可能性があります。 また、肥満や過度な痩せすぎはホルモンバランスを崩し、精子の形成に悪影響を与えることが考えられます。 さらに、慢性的な睡眠不足や過剰なストレスは、睾丸の機能を低下させる要因となります。 健康的な生活を心がけることで、精子の状態を改善し、不妊リスクを軽減することが期待できるでしょう。高温の環境で過ごす習慣がある
高温環境での生活習慣は、男性不妊のリスクを高める可能性があります。 精子は熱に弱いため、サウナや長風呂の習慣は睾丸の温度を上昇させ、精子の形成に悪影響を及ぼすと考えられています。 また、タイトな下着やズボンの着用、膝の上でのパソコン使用も局所の温度を高める要因となります。 さらに、長時間の自動車や自転車の運転も影響を与える可能性があります。 したがって、精子の質を保つために、日常の習慣を見直し、睾丸を適切な温度に保つことが大切です。造精機能に障害がある
造精機能障害は、男性不妊の80%程度を占める主要な原因とされています。 この障害では、精子の数が少ない、運動性が低い、形態に異常があるといった特徴が見られ、睾丸の機能低下が関与していると考えられます。 原因としては、精索静脈瘤、抗がん剤や放射線治療の影響、加齢などが挙げられますが、特定できないケースも少なくありません。 生活習慣の改善で精子の質が向上する可能性もあるため、早めに泌尿器科を受診し、適切な治療を受けることが大切です。睾丸が小さい場合は何科を受診すればいい?
睾丸が小さい、または陰嚢内に触れない場合は、泌尿器科を受診することが推奨されます。
特に、停留睾丸は睾丸の温度が高い状態が続くため、精子の形成に影響を与え、不妊や睾丸腫瘍のリスクを高める可能性があります。
生後6ヵ月までは自然に下降することが期待されますが、それ以降も陰嚢内に収まらない場合は、手術が必要になることがあります。
また、睾丸が上下に移動する移動性睾丸や、睾丸が触れない非触知睾丸の可能性もあるため、医師の診察を受け、適切な対応を検討することが大切です。
睾丸捻転を疑う場合はすぐに病院へ
睾丸捻転は、睾丸がねじれることで血流が遮断され、激しい陰嚢の痛みを伴う緊急性の高い疾患です。
特に思春期の男性に多く見られますが、小児や成人にも発症する可能性があります。
痛みのほか、陰嚢の腫れや吐き気を伴うことがあり、放置すると睾丸の機能が失われるリスクが高まります。
発症から6時間以内に治療を受けることが望ましく、早期に処置すれば睾丸を温存できる可能性が高まります。
疑わしい症状がある場合は、すぐに泌尿器科を受診しましょう。
編集部まとめ
睾丸の大きさには個人差がありますが、小さいと感じる場合、ホルモンの異常や睾丸機能の低下が関係している可能性があります。 特に停留睾丸や遊走睾丸などの病気が疑われる場合や、男性不妊の原因となることもあるため注意が必要です。 また、生活習慣や加齢による影響も考えられ、喫煙や高温環境などが精子形成に悪影響を与えるとされています。 睾丸の異常や違和感を感じた際は、泌尿器科を受診し、適切な診断を受けることが大切です。 さらに、急に陰嚢に激しい痛みが生じた場合、睾丸捻転の可能性があり、早急な治療が必要となるため、すぐに医療機関を受診してください。