「血尿」は「子宮頸がん」や「前立腺がん」が原因?医師が監修!
トイレのときに血尿があって不安な思いをしていませんか。血尿は大きな病気のサインかもしれません。血尿が生じる原因や血尿などの症状が表れる疾患を紹介します。
女性特有の病気や男性特有の病気や、肉眼で見て血尿と判断できない場合でも血尿が生じている場合があります。
血尿について気になる方はぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
血尿の原因
血尿は、尿中に血液が混ざっている状態を指します。おしっこが赤いなど目でわかるものを肉眼的血尿、目でみて尿の色の変化はわからないが尿検査にて血が混じっている状態のものを顕微鏡的血尿といいます。
血尿が生じる原因になる臓器は複数あるため治療のためには鑑別することが重要です。また、女性にしか見られない疾患などもあるため解説します。
臓器毎に考えられる病気
血尿は尿中に血液が混ざっている状態で、腎臓・膀胱・尿管・または女性の子宮や卵巣など、尿を生成したり流れる管路や器官に異常があったりする場合にみられます。
血尿で考えられる病気には、以下のようなものがあります。
- 腎臓の疾患
- 膀胱の疾患
- 尿管/尿道の疾患
- 子宮/膣の疾患
腎臓は血液を浄化する器官であり、これらの疾患が起こると血液中に異常物質が残ったり、血液の流れが滞ったりすることで血尿が発生する可能性があります。
具体的な疾患名は腎炎や腎結石・腎腫瘍・多発性嚢胞腎・糸球体疾患などです。
膀胱は尿を貯留する器官であり、これらの疾患が起こると血液が混ざることがあります。
具体的な疾患名は、膀胱炎や膀胱癌、膀胱外科手術の合併症などです。膀胱癌の85%は肉眼的血尿をきっかけに発見されるともいわれています。
尿管は尿を膀胱から腎臓に輸送する管路であり、これらの疾患が起こると血尿が発生する可能性があります。疾患名としては、尿管炎や尿管癌、尿管狭窄などが考えられます。
子宮内膜症や子宮がんでも血尿が生じることがあります。子宮だけでなく膀胱まで病巣が及んだときに生じることが多いです。
性別毎に考えられる病気
性別によって男性にしか生じない病気、反対に女性にしか生じない病気があります。男女いずれでも見られるものもありますが、血尿を引き起こす疾患のうち性別ごとに考えられるものをまとめて解説します。
両性に見られるもの
男女どちらでもみられる疾患は以下のものがあります。
- 尿道炎/尿路感染症
- 尿路結石
- 膀胱癌/腎盂尿管癌
尿道内に細菌が侵入して感染を起こした状態を指します。
女性の場合尿道だけで炎症を起こすことがまれなため、男性の病気といわれています。排尿時の痛みと尿道からの膿排出が特徴的な症状です。性行為感染症として発症する例が多いため、パートナーへうつさないためにも早期発見が重要です。
尿道炎や尿路感染症は男性の方が多くみられます。これは男性の方が尿道が長いためとされています。
尿路結石とは、前述した通り尿路内に結晶した塊のことをいいます。結石がある部位によって腎結石や尿管結石・膀胱結石などと呼ばれます。
無症状のこともありますが、結石の場所や大きさ・位置などによっては痛みや血尿が生じることもあります。結石は自然排出することもあるので治療方法は医師と相談することが大切です。
尿路上皮癌ともいわれており、おもな症状として血尿があげられます。肉眼的血尿が多く、痛みなどの症状が無い無症候性肉眼的血尿が多いです。尿細胞診で悪性所見を認めることもあります。
腎盂尿管癌は腎盂・尿管の癌で、膀胱癌は膀胱の癌です。腎盂尿管癌は悪性腫瘍のため早期発見が重要です。発症していた場合は転移が無くても手術を選択することが一般的です。
男性にみられるもの
血尿は、尿中に血液が混ざっている状態を指します。男性の場合でも女性の場合でも起こりうる病気は大きく異なりませんが、男性には女性にはない臓器があるため、男性特有の血尿の原因を紹介します。
男性が血尿を起こす原因としてよくあるのは、尿道炎や前立腺肥大症です。
- 前立腺肥大症
- 前立腺癌
前立腺が肥大して尿道を圧迫することで、尿道を通る尿の流れが悪くなり様々な排尿に関する症状を引き起こします。前立腺肥大症は年齢とともによく起こる病気であり、遺伝的要因・食生活・肥満・高血・高血糖・脂質異常などが原因です。前立腺肥大により尿道粘膜が充血し、前立腺部の尿道粘膜から出血することで、血尿が出やすくなります。
前立腺肥大は必ずしも治療が必要な疾患ではありませんが、血尿などの症状がみられた場合は治療すべきですので、医療機関を受診しましょう。
男性の癌患者の中で前立腺癌が最も多く、加齢によって罹患率が増加します。しかし、現在は血液検査で早期発見ができるようになってきています。
前立腺は精液の一部を産生する臓器です。進行して尿道や膀胱にまで癌が浸潤すると排尿障害や血尿が表れることがあります。
進行度や悪性度によって治療はさまざまなので医師と相談して決めることが重要です。
女性のみにみられるもの
女性の場合、血尿の原因として次のようなものが考えられます。
- 子宮内膜症
- 子宮がん
子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮の内側以外で増殖する疾患です。それによって月経では炎症や出血が起こり、重い月経痛なども生じます。子宮内膜症の場合は、子宮内膜症組織が膀胱に及ぶ場合にみられることがあります。
子宮がんは、子宮の奥に生じる子宮体がんと子宮の入り口付近に生じる子宮頸がんがあります。がんが直腸や膀胱にまで浸潤した場合に血尿がみられることもあります。また、血尿以外にも血便・便や尿が子宮に入り込むことによる膣からの悪臭などの症状がみられることも症状の1つです。
癌などは命に関わる大きな病気です。
血尿が出現した場合は、必ず医師に診てもらうことをおすすめします。
血尿の種類
血尿は、尿に血が混じっていると目で見てわかる肉眼的血尿と肉眼ではわからないが顕微鏡で見ると血が混じっている顕微鏡的血尿があります。
肉眼的血尿
肉眼的血尿とは、尿中に血が混ざっていることが視覚的に確認できるようになった尿のことを指します。
通常、尿は澄んでいて、血液の色を帯びていません。しかし、血尿が発生すると、尿は赤い色を帯びることがあります。
血尿の原因は、腎臓や膀胱などの尿路系の疾患や、腎結石・膀胱結石・尿路感染症・前立腺炎腎外傷などです。また、慢性腎臓病や膀胱がんなどの慢性疾患でも血尿が出現することがあります。
血尿を発症する場合、尿が赤い色を帯びるだけでなく尿量が減少したり、尿中に血液が混ざったような結果を伴うことがあります。また、腰痛や腹痛、嘔吐などの症状が伴うこともあります。
血尿を発症した場合は、すぐに医師に相談することが重要です。
また、一時的に血尿が出現してもすぐに改善し、他に症状が無い無症候性肉眼的血尿が生じることもあります。痛みなどの症状もなく、血尿もすぐに改善するため問題ないと自己判断し、病院を受診しない方が多くいます。
しかし、このような無症候性肉眼的血尿は悪性疾患であることが多いため注意が必要です。
血尿が生じた場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
顕微鏡的血尿
顕微鏡的血尿とは、目で見て尿の色が変わっていないが血尿が状していることです。健康診断で尿潜血陽性といわれた方は顕微鏡的血尿でしょう。
症状がない糸球体疾患・尿路上皮癌・腎癌・前立腺癌などの可能性があります。尿検査を受ける患者さんから採取された尿サンプルを、顕微鏡で尿に交じっている血の成分を見ることで調べます。
顕微鏡的血尿がある患者の最大10%で泌尿器系悪性腫瘍がみつかったとの報告もあるため、血尿が生じる原因となる疾患の特定がおすすめです。
血尿の症状
血尿の症状は、尿が血色になることが最も大きな症状です。一般的に、血尿は、尿が暗い赤色や深い茶色になることが多いです。また、血尿を伴っている場合は、尿の量が多くなることがあります。
その他にも血尿の原因に応じて、側腹部または背部の痛み・下腹部痛・尿意切迫感・排尿困難など、 尿路疾患の他の症状もみられる場合があります。これらの症状は血尿の原因疾患を追求する手掛かりになるでしょう。
また、尿中の血液が多いと、血液が固まり凝血塊になってしまうことがあります。凝血塊により尿の流れが完全に遮断され、突然の激しい痛みが生じ、排尿できなくなる可能性があります。
血尿が続く場合に考えられる病気
血尿が続く場合、以下の病気が考えられます。
- 前立腺がん
- 膀胱がん
- 尿管結石
前立腺がん
前立腺がんとは、前立腺に発生する悪性腫瘍のことを指します。前立腺は、男性の膀胱の下にある栗の実のような形をしています。前立腺がんは、男性では発生率が高いがんの一つです。前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生するといわれています。早期に発見すると治療することが可能です。
前立腺がんの症状は、早期症状が殆どないため、発見が遅れがちです。しかし、前立腺がんが進行すると、次のような症状が出現することがあります。
- 尿が弱くなる
- 排尿回数が増える
- 血尿
- 骨に転移した場合腰痛
前立腺がんの治療には、手術・放射線照射・化学療法などがあります。前立腺がんの治療方法は、病気の進行度や患者さんの年齢・体調などによって決められます。
以上が、前立腺がんについての簡単な説明です。
前立腺がんの症状が出た場合は、必ず医師に診てもらうことをおすすめします。
膀胱がん
膀胱がんとは、膀胱内の細胞が異常に増殖し、がん細胞が形成される疾患です。膀胱内にある細胞は、一般的には通常の細胞の増殖を止める信号を受け取って増殖を止めることができますが、膀胱がんではこの信号を無視して異常に増殖し続けます。
膀胱がんは、男性よりも女性に多く発生しますが、男女問わず年齢が上がるほど発生するリスクが高くなります。また、タバコやアルコールの使用・職業上の薬品や化学物質の接触・慢性膀胱炎や膀胱憩室の病気などが、膀胱がんの発生リスクを高める要因です。
膀胱がんの症状は以下のようなものがあります。
- 血尿
- 頻尿
- 排尿時の痛み
- 尿が残る感じ
- 切迫した尿意
進行すると、尿が出にくくなったり・わき腹や腰、背中が痛んだり・足がむくんだりといった症状がみられることもあります。
尿路結石
尿路結石とは、尿路内にできる硬い塊のことです。尿路結石は、尿中の溶解しにくい物質が塊をなすことでできます。尿路結石は、腎臓・膀胱・尿道などの尿路にできることがあります。
結石があっても症状が無いことがありますが、結石の大きさや位置により血尿や痛みを生じることがあるため注意が必要です。治療方法は主に自然に排出を促す自然排出と手術によって排出する方法などです。
- 自然排出
- 手術
小さな尿路結石は、排尿を促すような治療をすることで、自然に排出されることがあります。
大きな尿路結石や、自然排出や放射線照射で治療できない場合は、手術をすることがあります。手術では、尿路結石を取り除くことができます。
以上が、尿路結石についての簡単な説明です。
尿路結石の症状が出た場合は、必ず医師に診てもらうことをおすすめします。
すぐ病院に行った方が良い症状は?
- 高熱や、腰あるいは背中の強い痛みがある、排尿時の痛みがある場合
- 腰や背中、下腹部を強くぶつけた後から血尿がある場合
- 激しい運動を行った後から血尿がある場合
これらの症状の場合には、すぐに病院受診を検討しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、内科、腎臓内科、泌尿器科です。
問診、診察、血液検査、腹部超音波検査、尿細胞診検査、尿培養検査などを実施する可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
いつから血尿があるのか、他に症状はあるのかなどを医師へ伝えましょう。
治療をする場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
まとめ
血尿はがんなど生命予後に大きくかかわる病気の可能性もあります。腎臓や膀胱などのSOSなので大丈夫だと判断せず、医療機関を受診するようおすすめします。
肉眼で見て尿が赤くなくても血尿の場合もあるので注意が必要です。健康診断で指摘されてもめんどうで再検査しなかった、という方もいると思います。しかし、手遅れになる前に血尿の原因を明らかにすると良いでしょう。