「湿布によるかぶれ」の原因はご存知ですか?発症しやすい人の特徴も医師が解説!

湿布によるかぶれの原因とは?Medical DOC監修医が原因や治し方・湿布によるかぶれを発症しやすい人の特徴・考えられる病気・対処法・対策などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
池澤 優子(あい皮ふ科・アレルギー科クリニック)
目次 -INDEX-
「湿布によるかぶれ」の原因と治し方
腰や背中、膝などの痛みなどがある場合、湿布を使用した経験がある方は多いでしょう。湿布は、貼付剤やパップ剤とも呼ばれており、布地に抗炎症作用を発揮する薬が塗ってあります。そして痛みや腫れのある部位に貼って使うものです。塗り薬よりも手軽でベタつきもなく、衣服を汚さずにすむという特徴があります。一方で、湿布が原因でかぶれが起こることもあります。今回の記事では、湿布によるかぶれの対策方法や、どれくらいで治るのかなどについて解説します。
湿布によるかぶれの原因と治し方
かぶれは、医学用語では「接触皮膚炎」と呼ばれる病気のことです。薬が要因となる接触皮膚炎は、発生頻度はそれほど多くありません。しかし、アレルギー性皮膚障害事例を調べた調査では、約1/4を医薬品が占めていたという結果があります。全体の半数を化粧品や薬用化粧品が占めていました。湿布が原因かもしれないと思ったら、まずは湿布をはがして様子を見ましょう。湿布を取れば症状が軽くなる場合が多いでしょう。しかし、症状がひどい、または継続するような場合には、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬などの治療が必要かもしれません。医療機関を受診するようにしましょう。
湿布によるかぶれとブツブツがある症状の原因と治し方
接触皮膚炎は、刺激物質などが皮膚に触れることで起こる、湿疹性の炎症反応のことを指します。湿疹は、刺激に対して皮膚の表皮や真皮上層をメインとした、かゆみやヒリヒリ感を伴う炎症反応のことです。紅斑(赤み)、丘疹(皮膚がブツブツと膨らむこと)、小水疱(小さな水ぶくれ)が混ざった状態が起こります。そして、苔癬化(たいせんか:皮膚がゴワゴワとなること)へと進んでいきます。こうして、皮膚にブツブツとした湿疹ができることがあります。湿布を貼っている場所に一致したかぶれやブツブツがある際には、まずは湿布をはがしましょう。
湿布を張った箇所がかぶれ、赤くなる原因と治し方
接触皮膚炎によるかゆみが強くなり、掻きむしってしまうと二次的な炎症が起こり、赤くなってしまうこともあります。また、光接触皮膚炎という病態があります。これは湿布に塗ってあった薬剤が光にあたることで、初めてかぶれを起こすものです。
湿布を貼った場所がかぶれてしまった場合、患部を冷やし、清潔にしておくことが大切です。改善しない場合、皮膚科を受診するようにしましょう。
湿布によるかぶれを発症しやすい人の特徴
湿布によるかぶれは、以下のような場合に起こりやすくなる可能性があります。
乳幼児や老人
乳幼児や高齢者は、皮膚のバリアー機能が低下している為、接触皮膚炎を起こしやすい状態にあります。しかし乳幼児は湿布を貼ることが稀であり、接触感作の機会がほぼないことから、結果として湿布を貼る機会が多い、中年以降で接触皮膚炎の頻度が高くなります。
また、アトピー性皮膚炎の方も、皮膚のバリアー機能が低下している場合が多く、接触皮膚炎になりやすい傾向があります。
同じ場所に湿布を長期間貼っている
接触皮膚炎は、皮膚のバリアー機能が低下すると起こりやすくなると考えられます。
そのため、湿布を貼りっぱなしにすると、蒸れやこすれが起こり、湿布をはがすときは角質層に刺激が加わるため皮膚が傷付きやすい状態になってしまうことがあります。
湿布は決められた時間で取り換えたり、はがすときは皮膚を抑えながら垂直方向に引っ張ったりして、ゆっくりはがすなど、適切な使い方で湿布を使うようにしましょう。
過去に湿布でかぶれた経験がある
一度アレルギー性接触皮膚炎を起こした薬剤に対しては、皮膚の免疫細胞がその成分を「アレルゲン」として記憶してしまいます。そのため、同じ成分を含む湿布を再び使用すると、アレルゲンに反応して過剰な反応(皮膚炎)がおこり再度かぶれるおそれがあります。
過去にかぶれを起こした湿布や類似成分を含むものは、使用を避けるようにしましょう。
すぐに病院へ行くべき「湿布によるかぶれ」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
全身に赤みが広がった場合は、皮膚科あるいは内科へ
湿布を貼った部位の皮膚の悪化やかゆみ、赤みが悪化し、湿布を貼った部位以外にも赤みやかゆみ、腫れやむくみ、水ぶくれなどの症状が出現することがまれに報告されています。これらは、湿布によるかぶれの最も重症なもので、全身性接触皮膚炎あるいは接触皮膚炎症候群といわれています。このような場合は症状が全身へ及び、重症化することもあります。
こうした症状が現れた場合、早急に医療機関を受診することが必要です。皮膚科あるいは内科で治療を行うことが多いです。
「湿布によるかぶれ」の特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「湿布によるかぶれ」症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。ここではMedical DOC監修医が、「湿布によるかぶれ」症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
刺激性接触皮膚炎
皮膚の角層は、外界から身体を守るバリアーのような役割をしています。正常な皮膚の場合、大きな物質は角質を通り抜けることはできません。しかし、何らかの原因で角質層のバリアー機能が低下すると、皮膚についた刺激物質が皮膚バリアーの隙間から侵入します。すると、サイトカインやケモカインなどの細胞間情報伝達物質が作られるようになり、炎症が引き起こされるのではないかと考えられています。結果、かゆみや赤みのようなかぶれ症状が引き起こされます。
アレルギー性接触皮膚炎
この皮膚炎は、刺激性接触皮膚炎とはメカニズムが異なります。わずかな量のハプテンという小さなアレルギー性物質(アレルゲン)によっても皮膚炎が起こりますが、その発症には、感作相と惹起相の2つの相があるとされています。
感作相は、ハプテンによってアレルギー反応に関与するリンパ球が作られるようになる段階です。正確には、アレルゲンであるハプテンが表皮を通過する際皮膚のタンパクと結合し、ハプテン蛋白結合物を作ります。これが抗原提示され感作リンパ球が誘導されることから感作が成立します。惹起相は、感作相と同じアレルゲンに暴露されることで実際にアレルギー反応が起こり、皮膚炎となる段階です。感作した状態になった方が、再度アレルギーの原因となるアレルゲンが接触した際に、活性化されたさまざまな免疫細胞の作用によって皮膚の表皮角化細胞に作用して強力な炎症をおこすと考えられています。
結果として、皮膚が炎症をおこして赤みやただれ、汁が出てきたりするなど、かぶれの状態になります。
光接触皮膚炎
皮膚炎の発症に光線が関わるものは、光接触皮膚炎と呼ばれています。
光接触皮膚炎には、刺激によって起こるタイプ(光毒性接触皮膚炎)と、アレルギーによって起こるタイプ(光アレルギー性接触皮膚炎)があります。光毒性接触皮膚炎は、物質に紫外線が当たることで発生した活性酸素によって組織細胞障害がおこるものです。炎症はおこるものの、特異的な免疫反応が起こるわけではありません。一方で、光アレルギー性接触皮膚炎は、光によって感作物質の構造が変化し、アレルゲン特異的にリンパ球や免疫反応が起こり、先述したようなプロセスでアレルギー反応が引き起こされます。光接触皮膚炎は、現在では主にアレルギー反応によるものとされています。とくに、ケトプロフェンによる重度の症状が知られています。ケトプロフェンは、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に分類される痛み止めです。これらの貼付薬は、数週間前に貼ったあとに光が当たった場合でも炎症を起こすことがあるため、気づきにくく注意が必要です。
「湿布によるかぶれ」の正しい対処法は?
湿布によるかぶれが起こった時には、まずは湿布を剥がしましょう。かゆみなどに対しては、冷やすと症状が楽になることもあります。症状が改善しない場合には、内服の抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬、皮膚の保護剤(ワセリン、亜鉛華軟膏)などを使うと良い場合があります。しかし、かゆみがひどかったり、引っ掻くなどして皮膚に傷ができてしまったりする場合には、皮膚科を受診しましょう、
薬の使用などで2週間以内に症状が良くなれば、一旦治療終了です。治らない場合には、より強力なステロイドに変更したり、内服のステロイドを行ったりするなど治療薬を変える必要があります。症状を繰り返す場合や、複数の湿布薬や外用薬でかぶれが起こる場合は、使用していた湿布薬の成分や外用薬を用いてパッチテストを行うこともあります。
頻度は低いですが、湿布に含まれる薬剤が原因で、全身にも皮膚炎症状が出てしまうことがあります。全身性接触皮膚炎あるいは接触皮膚炎症候群などと言われる状態です。湿布を貼った部位のみでなく、全身に赤みを伴う皮疹が広がったり、ぶつぶつじくじくした湿疹が体のあちこちにでてきたりする場合もあります。その場合は、ステロイドの外用だけでなく、ステロイドの全身投与(内服あるいは点滴)が必要な場合もあるため、早急に医療機関を受診してください。
「湿布によるかぶれ」の正しい対策とは?
湿布かぶれを予防するためには、定められた用法用量を守ることが大切です。例えば、通常湿布薬の場合、1日1回、痛みのある部位に貼ることがすすめられます。また、乾燥肌やアトピー性皮膚炎など、皮膚がもともと弱いあるいはかぶれやすい場合には、皮膚の保湿などにも努めるようにするとよいでしょう。
「湿布によるかぶれ」についてよくある質問
ここまで湿布によるかぶれについて紹介しました。ここでは「湿布によるかぶれ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
湿布によるかぶれを早く治す方法はありますか?
池澤 優子(医師)
まずは湿布をすぐにはがし、患部を冷やすことでかゆみを軽減できます。軽度であれば市販のステロイド外用薬や保湿剤で様子を見ることも可能です。ただし、市販薬はステロイドだけではなく、鎮痒剤(ちんようざい)など様々な成分が入っていることが多いです。そのため、新たに感作を誘発することもあります。症状が広がっていたり強いかゆみがあったりする場合は、早めに皮膚科を受診して適切な治療を受けましょう。
湿布によるかぶれを発症した際におすすめの塗り薬を教えてください。
池澤 優子(医師)
かゆみが強い場合には、ステロイド外用薬が使われることが多いです。ステロイドは患部にのせるように塗布し、刷り込まないようにしましょう。ティッシュが張り付くくらいに塗るのがおすすめです。市販薬を使う場合でも、使用前に薬剤師に相談していただき、治らない場合はすみやかに皮膚科医の診察を受ける方が安心です。
まとめ
湿布は痛みをやわらげるために有効な手段ですが、体質や使用方法によってはかぶれを引き起こすことがあります。かゆみや赤み、ブツブツなどが出現した場合は早めに使用を中止し、必要に応じて皮膚科を受診しましょう。同じ成分による再発を防ぐためにも、過去にかぶれた湿布の種類を記録しておくことが大切です。皮膚トラブルを防ぎながら、湿布を正しく使っていくことが重要です。
「湿布によるかぶれ」で考えられる病気
「湿布によるかぶれ」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
皮膚科系の病気
- 刺激性接触皮膚炎
- アレルギー性接触皮膚炎
- 光接触皮膚炎
- 全身性接触皮膚炎
湿布によるかぶれは、接触皮膚炎の状態と考えられます。まれではありますが、重症化することもあります。なかなか治らない場合には、医療機関を受診しましょう。
「湿布によるかぶれ」に似ている症状・関連する症状
「湿布によるかぶれ」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 皮膚のかゆみ
- 皮膚の赤み
- 皮膚のブツブツ
- 水ぶくれ
- 皮膚がゴワゴワする
- 皮膚の色が変わる
皮膚のかぶれが起こると、これらのような皮膚の変化が生じ得ます。




