「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」原因と対処法はご存知ですか?医師が解説!


監修医師:
佐治 なぎさ(なぎさスキンクリニック尾山台)
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昭和大学医学部卒業。昭和大学病院皮膚科病棟医長、イデリアスキンクリニック代官山院長などを歴任後の2023年、東京都世田谷区等々力に「なぎさスキンクリニック尾山台」開院。皮膚科も美容皮膚科もかかりつけを、の理念のもと自費診療から保険診療まで皮膚をフルコースで診療。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、抗加齢医学会専門医、医学博士。昭和大学皮膚科学教室兼任講師。医師だけでなくイラストレーターとして医学情報を漫画で発信するなどの啓蒙活動も行う。
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「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」原因と対処法
やけどを負ったとき、直後はびっくりして焦ってしまいますよね。誰でもやけどは起こりうるもの。そしてやけどの治療に関しては、初期対応がとても大切と言われています。少しでも悪化させずに済むよう、適切な対処法をマスターしておきましょう。やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い原因と対処法
やけどには、以下の3種があります。- 1度熱傷:水疱にならずに赤くなるだけのもの(表皮まで)
- 2度熱傷:水疱になるもの(真皮まで)
- 3度熱傷:皮膚の表面が焦げたり黄色い壊死物質といって取り除かないと改善が望めないほど深くまで損傷をうけるもの(皮下組織まで)
やけどを負った指を冷やしてないと痛い原因と対処法
やけどを受傷した直後は、患部に熱がたまり組織障害と炎症が進行している状態です。もともと炎症自体も冷却により軽快しますが、やけどの場合はとくに直後のクーリングが有効です。 指などの場合は特に、そのまま15分以上水道の水を流しっぱなしにしながら冷却をすると、過度な冷却にならず患部の清潔も保てるため有効です。また30分ぐらい流水で冷やしたあとは、冷やしすぎて痛くならない範囲で保冷材などをタオルで包んでクーリングを続けましょう。 また一時期やけどに対するラップ療法が流行しましたが、実際は不適切な方法で逆に感染をおこし悪化するケースが多くみられます。必ず医師の診察のもと指示を受けるようにしてください。 また、指のような関節部の多い部位で、表面が黒く焦げたようになる場合も。また、水疱が多発しているような場合はきずあとやひきつれが生じて手の機能が障害されることもあります。こうした場合は早めに医療機関を受診するようにしましょう。やけどを負った箇所を冷やしてないと痛く、寝れない原因と対処法
患部が痛くて眠れない場合、市販の鎮痛剤を用いることができます。また冷やしていた方が痛みが引く場合は、保冷材などで冷やしながら休んでも構いません。ただし冷やしすぎて逆に凍傷にならないよう、直接触れずにタオルなどでくるんで冷却を続けて下さい。 またお風呂や飲酒など、血流が良くなる状態になるとやけどの部分がジンジンと痛むことがあります。やけども炎症が起きている状態なので、痛みのある間は血流が良くなることは避けましょう。 またやけどを受傷した場合のお風呂ですが、患部の状態にもよりますが水疱形成がない場合はぬるめのシャワー程度は可能です。シャワーで洗い流すことは患部を清潔に保つことにもつながり、痛みが悪化しない範囲では問題ありません。ただし、患部を消毒液で消毒することは避けて下さい。傷に関しては消毒よりもシャワーで流した方が組織の障害が少なく、かぶれなどのリスクも生じません。すぐに病院へ行くべき「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。 応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。鼻毛が焦げる・声が枯れているなどの症状がある場合は、救急外来へ
まず、顔を火傷してしまい鼻毛が焦げているような場合や、熱い空気を吸って声が枯れている場合は要注意です。軽いように見えても「気道熱傷」といって、目に見えない部分の気道までやけどを起こして呼吸困難をきたし生命に関わることがあります。この場合は全身管理が可能な救急病院に早めに受診することをお勧めします。 また、以下のような場合には熱傷性ショックをおこす可能性もあるため、原則的には入院して治療を行います。- やけどの範囲が広く、水疱をきたすやけどが全身の皮膚の15%を超える場合
- 明らかに深いやけどが全身の2%を超える場合
- 深さを問わず全身の皮膚の30%にやけどを負っている場合
緊急で総合病院受診の目安となる「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」のセルフチェック法
- 鼻毛が焦げている症状がある場合
- 声が枯れているような症状がある場合
- 広範囲に症状がある場合
- 糖尿病や免疫抑制薬治療中など基礎疾患のある場合
「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」症状の特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。水ぶくれ
水ぶくれ(水疱)が起きている段階では2度熱傷になります。その中でも、二つに分けられます。一つは、多くの場合傷あとを残さない「浅達性2度熱傷」です。もう一つは、それよりも深く1か月以上かかって傷あとやひきつれを残して治癒する「深達性2度熱傷」です。 いずれの場合も水疱は自分で潰さず、早いうちに医療機関を受診しましょう。両者は混在することも多く、深さや症状の変化を見ながら治療薬を変更していく必要があります。 受診までの対処法としては、水疱をつぶさずそっと清潔なガーゼなどで覆うこと、つぶれてしまった場合はなるべく水疱の皮(水疱蓋:すいほうがい)をはがさず、同様にガーゼで覆いましょう。浸出液が乾いてガーゼが固着してしまうことを避けるため、ワセリンを厚めにガーゼに伸ばしてから貼っても構いません。ただしその場合は1日1回は取り換える必要があるため、あくまで病院に受診するまでの応急処置として用いましょう。 ただし、一時期流行した患部を食品用ラップで覆う「ラップ療法」はおすすめしません。なぜなら皮膚には常在菌が多く、不適切に密封することで感染のリスクが高まります。また手や足の指など角層の厚い部位は、ラップなどで密封してしまうと角層がふやけてしまい傷の治りを遅くしてしまうことも。また医療機関で密封療法をする場合、専用の機械で滅菌した無菌状態のものを用います。市販の食品用ラップは不適切ですので絶対に行わないようにしましょう。 また水ぶくれができた時点で、ある程度あとが残る可能性があるため、皮膚科専門医または形成外科専門医の在籍するクリニックを選ぶようにしましょう。「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」時の正しい対処法は?
やけどを早く治すには、受傷直後のクーリングが第一です。しかし受傷の深さによってはそれだけでは改善しないことも。1日程度冷やしても改善のない場合は受診をおすすめします。また水疱を起こした場合は赤みや色素沈着のリスク、また感染のリスクなどを考慮し病院に受診する方が良いでしょう。医師が薦める「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」時の市販薬は?
やけどは受傷の深さや広さによって対応が変わります。安易に市販薬を使用し治療のタイミングを逸してしまうと、ひきつれややけどあとなどになる可能性も。 どうしてもすぐ受診できない場合は、ワセリンをしっかり塗布したうえ、ガーゼなどで患部を保護するのは問題ありません。ステロイド外用に関しては、漫然と使うと感染のリスクや傷の治りが悪くなる場合があります。またある研究ではステロイド外用での改善の有意差が乏しかった報告もあり、皮膚科医の間でも意見が分かれるところではあります。現状としては、受傷ごく早期(1-2日)の間は状態を見ながら使用する医師が多いようです。ただし自己判断で適切な治療のタイミングを逸してしまう可能性があるため、応急処置的に使用しても病院は受診するようにしましょう。 また痛みがある場合は市販の痛み止めを使用することは差し支えありません。「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い症状はいつまで続きますか?
佐治 なぎさ(医師)
基本的には患部に熱で生じたダメージが残る間は続きます。やけどは「受傷した温度」×「皮膚に触れた時間の長さ」により重症度が変わってきます。しかし、基本的には熱による組織障害が進行している間は冷やせば痛みが軽減します。そのため、その間はクーリングを行いましょう。
まとめ
やけどは日常的にありふれたものです。熱い飲み物をこぼしたりヘアアイロンが当たったりするなどの比較的軽症のものもあります。しかし、気道熱傷など生命を脅かす可能性のある重症のもの、またひきつれややけど跡を残すような深いものまでさまざまです。 何よりも大事なのはまず受傷直後にすぐ水で冷やすことです。特に熱湯をあびるなど衣類の上から受傷した場合は服を脱がさずそのまま水で冷やすことが大切です。その後1‐2日はあとから水疱がおきるなど症状が進行する可能性があることを知っておきましょう。そして状況に応じて適切な医療機関に受診することが重要です。「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」で考えられる病気
「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。皮膚科の病気
- 二次感染
- 電撃症
- 凍傷
- 皮膚潰瘍
- 瘢痕
- 熱傷瘢痕
- ケロイド
「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」に似ている症状・関連する症状
「やけどを負った箇所を冷やしてないと痛い」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 水ぶくれ
- 赤み
- ひきつれ
- きずあと
- 皮膚がえぐれている
- 汁が出ている
- 皮膚が白くなっている
- 皮膚が黒くなっている
【参考文献】
・創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン2023
・熱傷診療ガイドライン(改訂第2版)