「妊娠中にお腹に赤い斑点」ができる原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
妊娠中のお腹の赤い斑点で、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)
「妊娠中のお腹の赤い斑点」の症状で考えられる病気と対処法
妊娠中、お腹に赤い斑点が出たことはありませんか。斑点もかゆみのあるものとないものが存在して、それぞれ考えられる疾患が異なってきます。これからそれらの病気について解説いたします。
妊娠中のお腹のかゆい赤い斑点の症状で考えられる原因と対処法
妊娠中、お腹にかゆみを伴い赤い斑点が出現した場合、妊娠性痒疹の可能性が考えられます。痒疹(ようしん)とは強い痒みを伴う盛り上がった皮疹のことを指す医学用語です。痒疹は様々な原因で出現しますが、特に妊娠期間中に特異的に出現した痒疹を妊娠性痒疹と言います。
強いかゆみが特徴的ですが、出産後には消退することが多いです。痒疹は非常にかゆみが強く、命にかかわらなくても生活の質を著しく下げますので、早めに受診しましょう。専門科は皮膚科です。ステロイドの塗り薬を使用することが多いです。緊急性はありませんので日中に受診しましょう。
妊娠中のお腹のかゆくない赤い斑点の症状で考えられる原因と対処法
妊娠中にお腹に痒くない赤い斑点が出現した場合、梅毒の可能性を考える必要があります。梅毒は性感染症の一つであり、近年激増している感染症です。症状の特徴は、皮膚、粘膜に発疹(赤い斑点や盛り上がったもの)やびらん(じゅくじゅくした傷)、潰瘍(びらんより傷が深いもの)、硬結(硬いしこりのような病変)といった皮膚症状が出現することとされていますが、無症状の場合もあります。この際、かゆみがないことも多いです。
梅毒は無症状であったり、皮膚症状が出現しても一定時間が経過すると自然に消えることがあるため放置されがちですが、決して自然治癒したわけではなく徐々に神経まで蝕まれていく恐ろしい病気です。また妊娠中に感染していると、胎児への感染も起こってしまいます。妊娠中であれば初期にスクリーニングで検査をしていますが、妊娠期間中に性的接触があり、疑わしい場合は再度検査を行う必要があります。
受診すべきはかかりつけの産婦人科です。感染が判明した場合は早急に治療を開始する必要がありますので、早めに受診、検査を行うようにしましょう。
すぐに病院へ行くべき「妊娠中のお腹の赤い斑点」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
痒いだけでなく痛みや発熱が見られた場合は、皮膚科へ
激しい痒みからかきむしったところを中心に赤く熱を持って皮膚が腫れ上がり、痛みや発熱を伴う場合、蜂窩織炎[龍中1] の可能性が考えられます。痒みを和らげようと、皮膚を引っ掻いてしまった時にできた傷から、皮膚の常在菌(健康な人でも常に存在する菌;普段は病気を引き起こすことはない)が侵入し、皮下組織まで感染を引き起こした状態です。頻度はそこまで多くはありませんが、妊娠中は免疫力が低下していることが多く注意が必要な疾患です。
自然に治る病気ではありませんので、できるだけ早く病院を受診することを勧めます。
主な診療科は皮膚科です。膿が溜まっている場合は、皮膚を切開して膿を排出し、抗菌薬投与を行います。もし高熱が続き、病変が急速に広がっている場合は、ガス壊疽や壊死性筋膜炎という緊急疾患の可能性がありますので、夜間でも医療機関を受診するようにしてください。
受診・予防の目安となる「妊娠中のお腹の赤い斑点」のセルフチェック法
- 妊娠中のお腹の赤い斑点以外にかゆみがある場合
- 妊娠中のお腹の赤い斑点以外に手足にも赤い斑点がある場合
- 妊娠中のお腹の赤い斑点以外にリンパ節の腫れがある場合
「妊娠中のお腹の赤い斑点」の症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「妊娠中のお腹の赤い斑点」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
妊娠性皮膚掻痒症
皮膚掻痒症とは、発疹が認められないにもかかわらず痒みを訴える疾患と定義されています。この病気自体、なぜかゆみが出現するのか詳しいメカニズムは判明していませんが、妊娠中に生じた場合は妊娠性皮膚掻痒症と分類されます。
治療法は、乾燥肌がある場合は保湿とスキンケアが有効とされていますが、特に乾燥していない場合は明確な治療法がないのが現状です。他の蕁麻疹などで有効なステロイドの塗り薬や抗アレルギー薬の内服なども、十分に効果があるという根拠はありません。しかしかゆみのために日常生活の質は著しく下がってしまう疾患ですので、我慢できない場合は早めに医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科は皮膚科です。緊急性はありませんので日中に受診してください。
妊娠性痒疹
妊娠性痒疹とは、妊娠初期から中期にかけて発症する原因不明の皮膚疾患です。手足や体幹に痒みを伴った盛り上がった皮疹が多数見られます。アトピー性皮膚炎との関連が指摘される場合もありますが、現時点では関連は認められておらず、アトピー素因がある人もない人も発症する可能性があります。かゆみは非常に強いため、発症するとかきむしってしまう方も多いですが、それによって皮膚は乾燥してしまい余計にかゆい、という悪循環に陥ります。皮膚をかきむしってしまうと皮膚バリアが壊れ、体表にいる常在菌の侵入を許すことになり、膿痂疹(とびひ)につながる場合もあります。
ご自身で出来る対処法は、皮膚の乾燥を防ぐために十分に保湿すること、痒くても冷やすなどして掻かないよう徹底することです。
その上で皮膚科を受診して、適切な塗り薬を処方してもらいましょう。
緊急性はありませんので日中に受診してください。
「妊娠中のお腹の赤い斑点」の正しい対処法は?
赤い斑点にかゆみがある場合、まずはスキンケアを行ってみましょう。特に保湿が重要です。また掻きむしってしまうとさらに悪化することになりますので、一時的に冷やすなど別の痒みを和らげる方法がおすすめです。
市販薬の内服に関しては、妊娠中に使用できないものも多くあるため、あまり推奨できません。塗り薬はそれほど大きな影響はないとされていますが、胎児への影響が心配な場合はしっかりと医療機関で処方してもらいましょう。
「妊娠中のお腹の赤い斑点」の症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「妊娠中のお腹の赤い斑点」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
妊娠中のお腹の赤い斑点は病院に行くべきですか?
中川 龍太郎(医師)
これまで紹介した妊娠性痒疹や梅毒など、いずれの疾患であっても適切な診断と治療が重要ですので、一度は受診することを勧めます。
妊娠中のお腹の赤い斑点は胎児に影響はないですか?
中川 龍太郎(医師)
痒疹によるものであれば影響はないとされていますが、梅毒であれば大いに影響があります。
妊娠中にお腹の赤い斑点があるときの対処法を教えてください。
中川 龍太郎(医師)
まずは医療機関で詳細な検査を受けることを勧めます。
まとめ 妊娠中のお腹の赤い斑点は梅毒の可能性あり
お腹の赤い斑点はただの湿疹と捉えがちですが、近年激増中の梅毒の可能性は要注意です。特に妊娠中では胎児への感染が起こり得るため、早期発見、早期治療が欠かせません。疑わしい場合は、かかりつけの産婦人科で相談してみてくださいね。
「妊娠中のお腹の赤い斑点」症状で考えられる病気
「妊娠中のお腹の赤い斑点」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
婦人科の病気
- 妊娠性皮膚掻痒症
- 妊娠性痒疹
感染症内科の病気
皮膚科の病気
赤い斑点(紅斑)という皮膚症状ですが、原因として感染症も考えられます。痒みを伴わない場合や、様々な症状が出現している場合は医療機関を受診してください。
「妊娠中のお腹の赤い斑点」に似ている症状・関連する症状
「妊娠中のお腹の赤い斑点」と関連している、似ている症状は2個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- お腹がかゆい
- 手足に湿疹が出ている
「妊娠中のお腹の赤い斑点」以外にこれらの症状がある場合も、妊娠性痒疹や梅毒などの疾患が候補に上がり、精査が必要です。複数の症状が該当する場合は早めに受診しましょう。