「脇にしこり」ができる原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
日頃乳がんなどのセルフチェックで脇を触っていたらしこりを発見した、という女性は多いかもしれません。
この場合、すぐに病院に行くべきなのでしょうか?それとも乳がんとは関係のない良性腫瘍なのでしょうか?
しこりは、しこり自体に痛みを感じるかどうかや、しこりの状態でも簡易的な判断が可能です。
ここでは、脇にできたしこりの原因や対処法について解説します。診療科の選び方・受診すべきしこり・検査方法についてもご紹介します。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
脇にしこりがあるときの原因・対処法・診療科の選び方
しこりには痛いものと痛くないものがあります。また痛みの度合いも、押すと痛かったり常に痛かったりと違いがみられます。脇にできたしこりはそれぞれどんな意味があるのでしょうか?ここでは、脇のしこりの症状を3つに分けて解説します。
脇のしこりがある症状の原因・対処法・診療科の選び方
脇のしこりができる原因には様々なものがあります。脇には腋窩リンパ節や汗腺などの器官が多く、それらが原因で元々しこりができやすい場所です。感染症などでリンパ節が腫れることでもしこりが生じることがあります。粉瘤や脂肪腫などの他の場所にもできやすいしこりも脇に発生します。比較的やわらかいしこりとして表れる脂肪腫は特に脇にできやすいため、一番よくみられる症状です。脂肪腫の場合、通常は放置していても問題ありません。服に引っかかったりあまりに大きくなったりして気になる場合は、皮膚科を受診するようにしましょう。
脇にしこりがあり、痛い症状の原因・対処法・診療科の選び方
痛みのあるしこりの中で、脇にできる可能性の高いしこりは2種類あります。異物肉芽腫とおできです。おできというと大したことのないように見えますが、細菌感染して起こるものです。そのため、なるべく皮膚科を受診するようにしましょう。また、脇毛が皮膚に入り込むことにより毛巣洞という疾患が引き起こされることがあります。毛巣洞が起こった結果として、異物肉芽腫が形成されるのです。脇毛のお手入れをした時にできた小さな傷に脇毛が入り込んでしまい、そのまま皮膚が治る過程で異物反応を起こし、最終的にしこりになってしまいます。しこりが生じた部分を清潔にすれば自然と治りますが、もし違和感や痛みが強い場合は形成外科を受診するようにしましょう。
脇のしこりを押すと痛い症状の原因・対処法・診療科の選び方
10代~30代の女性で脇に押すと痛いしこりができた場合、線維腺腫の可能性があります。この年代の女性に多くみられる症状です。良性腫瘍なので通常は経過観察で大丈夫ですが、しこりが段々と大きくなってきた場合は乳腺外科を受診してください。ただし、しこりがゴツゴツしていたり動かなかったりなどの特徴があり、なおかつ乳房自体にもしこりができている場合は乳がんなどの病気が隠れている場合があります。併発症状によっては早めの受診が必要です。
病院を受診すべき症状
痛いしこりや痛くないしこりなど、しこりにも様々なタイプがあると同時に、良性腫瘍であるしこりと悪性腫瘍であるしこりもあります。悪性腫瘍の場合、後に命に関わる症状が起きる可能性もあるため、非常に気になるところです。ここでは、病院を受診すべきしこりのタイプについてご紹介します。ポイントは痛み・固さ・感触です。
痛みがある
まずは痛みがあるかどうかです。痛みがあるしこりには粉瘤やおできがあります。いずれも良性腫瘍ですが、腫れたり悪臭を放つ膿が溜まったりして非常に不快な思いをすることがあります。特に気にならない大きさであれば受診は必要ないでしょう。ただし、女性の場合は乳腺症などの乳房に関わる病気の可能性があります。念のため乳腺科を受診しましょう。また、痛みを伴うしこりにはアレルギーが原因で起きる皮膚炎も含まれます。もしアレルギーの自覚がないようなら、一度アレルギーの検査をすると良いでしょう。
固くて動かない
しこりには触って揺らそうとしても固くて動かないものがあります。それは良性腫瘍と違い、注視すべきしこりです。もし乳房にもしこりや張りがある場合、乳がんの可能性もあります。固くて動かないしこりの場合は念のため数日観察してから医療機関を受診するようにしましょう。また、男性の場合でも乳がんにかかる場合があります。60歳以上になると乳がんの可能性が上がるという研究結果も出ています。もし男性であっても、脇に気になるしこりができたらなるべく医療機関を受診するようにしてください。
ごつごつしている
ごつごつしているしこりにも注意が必要です。脂肪腫やおできなどのしこりは、やわらかい場合が多いです。乳がんなどでできるしこりは、ごつごつしているという特徴をもつことが多いため、特に女性の場合は観察ののち医療機関を受診しましょう。男性の場合でも60歳以上になると乳がんにかかる方がいらっしゃいます。男性でも脇にごつごつしたしこりができたら、放置せず医療機関を受診するようにしてください。
脇のしこりで考えられる病気
ここでは、脇のしこりができる病気について解説します。脇にしこりができる代表的な病気は乳がん・リンパ腫・粉瘤の3種類です。
乳がん
乳がんの指標にもなるしこりは、皮膚表面すぐ近くで発生するため、比較的自力での発見がしやすいがんでもあります。そのためセルフチェックが推奨されています。そのセルフチェックには乳房のしこりの他にも、脇のしこりのチェックも含まれているのです。乳がんでも脇にしこりができることがあり、そのほとんどがごつごつとした動きにくいしこりという特徴があります。これと同時に乳房の他の場所にもしこりが確認された場合は、念のため乳腺科を受診するようにしてください。
リンパ腫
リンパ腫のしこりは、ゴムのような腫れが特徴です。大抵は押しても特に痛みを感じません。脇には腋窩リンパ節という重要なリンパ節があるため、免疫反応で腫れることがあります。通常は時間の経過でおさまっていきますが、悪性リンパ腫の場合は少しずつ大きくなっていきます。進行すると腫れがひどくなり脇が突っ張って閉まらないなどの症状が起きることもあるため、注意が必要です。もし脇の下に痛くないゴムのようなしこりが生じた場合は医療機関を受診するようにしましょう。
粉瘤
粉瘤は体中のどこでもできる可能性のあるしこりです。毛穴がめくれ、中に皮脂などの老廃物が溜まって徐々に大きくなっていきます。気になるからと強く押すとたまに強い匂いのする膿のようなものが出てくることがありますが、中身が出てきたからといってしこりがなくなるわけではありません。袋状になっている部分を切除しなければ内容物はまた溜まりだします。気になるのであれば医療機関を受診し切除してもらいましょう。小さいうちに対処できれば目立つ痕が残らず治療できるでしょう。
脇しこりがある場合の検査方法
まずは、脇のしこりがリンパ節かを調べる必要があります。問診・視診・触診を行い、必要に応じて超音波検査(エコー検査)で詳しく検査を行ってリンパ節かどうかの判断を行うことが多いです。超音波検査で不十分なところがあれば細胞診(細胞を採取する検査)や組織診(しこり自体の組織を採取する検査)を行い、さらに詳細に調べることもあります。リンパ節がただ腫れているだけであれば、医師が診察すれば判断できる場合が多いです。しかし、念のため細胞診を行うというケースもあります。
まとめ
脇のしこりには重大な病気が隠れている場合があります。しかし、中には脂肪腫や粉瘤などの良性腫瘍もあるため、判断が難しいことがあるかもしれません。
医療機関で検査をしてもらったほうが良いしこりは、固くて動かなかったり、ごつごつしていたりという特徴を持っています。
これらの特徴があるしこりができた場合は、念のため医療機関を受診するようにしましょう。
また、しこりができても引っ掻かないようにしましょう。脇は、特に服や下着で引っ掛けやすい場所です。十分に気を配ってケアするようにしてください。