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「耳の前を押すと痛い」のは「おたふくかぜ」や「顎関節症」が原因?医師が解説!

「耳の前を押すと痛い」のは「おたふくかぜ」や「顎関節症」が原因?医師が解説!

耳の前を押すと痛いとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

中川 龍太郎

監修医師
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)

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奈良県立医科大学卒業。臨床研修を経て、医療法人やわらぎ会、医療法人資生会南川医院に勤務。生活習慣病や肥満治療、予防医学、ヘルスメンテナンスに注力すると同時に、訪問診療にも従事している。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医療連合学会、日本旅行医学会の各会員。オンライン診療研修受講。

「耳の前を押すと痛い」症状で考えられる病気と対処法

耳の前を押すと痛い症状で悩まれたことはありませんか?耳の前と言っても、その原因は耳ではないかもしれません。考えられる病気について解説いたします。

耳の前を押すと痛い症状で考えられる原因と対処法

耳の間を押すと痛みを感じる場合を指します。このような場合、耳下腺炎の可能性があります。耳下腺炎(流行性耳下腺炎)は通称“おたふくかぜ”と言われています。子供がかかることの多い病気ですが、実は大人でもかかってしまうことがあります。そして大人がかかった方が、症状は重いことが多いです。
この病気はムンプスウイルスというウイルス感染によって引き起こされます。主に耳の前にある耳下腺に炎症が生じ、腫れや痛みを伴うことが特徴的です。初期の症状として、発熱や倦怠感、食欲不振なども見られます。
病気の進行とともに、耳の前部が腫れて痛みを感じることが増えてきます。また頻度は少なくなりますが、成人男性では睾丸の腫れや痛み、女性では卵巣の炎症が生じることもあります。
ご自身でできる対応は、できる限り水分補給をして安静を保つことです。またかかる前にワクチン接種をしておくことが重要です。
治療は基本的に対症療法(しんどい症状を和らげながら、時間経過とともに自己免疫力で治す方法)ですが、あまりにも脱水が見られると点滴治療が必要になります。高熱が続き脱水に至って意識や受け答えが朦朧としている場合は、緊急性が高いので医療機関を早めに受診しましょう。

耳の前のリンパを押すと痛い症状で考えられる原因と対処法

耳の前のリンパを押すと痛い症状の場合、リンパ節腫脹という状態になっている可能性があります。耳の前のリンパ節は、正式には耳介前(じかいぜん)リンパ節、もしくは耳下腺(じかせん)リンパ節といいます。この部分のリンパ節は、前頭部や顔面上部のリンパ節を受けています。後に紹介する外耳炎やニキビ、アトピー性皮膚炎など、顔に炎症がある場合に、このリンパ節にも炎症が広がって腫れることがあります。
ご自身でできる対応はほとんどありません。腫れている部分を冷やすことで一時的に症状は落ち着くかもしれませんが、基本的に他の部分の炎症が広がってきたものと考えられるため、根本的な治療とは言えません。
リンパ節が腫れている原因を医療機関でしっかり調べましょう。
受診すべき診療科は、耳鼻咽喉科や皮膚科です。緊急性はありませんので日中に受診してください。

耳の前の骨を押すと痛い症状で考えられる原因と対処法

耳の前の骨を押すと痛い症状の場合、顎関節症の可能性が考えられます。顎関節症の詳細は後述しますが、顎関節とその周囲の筋肉がうまく動かない状態のことを指します。
特徴的な症状は開口障害(口を開けることが難しい)、噛合障害(噛む行為が難しい)、顎関節の雑音(クリック音:顎関節から鳴るカクカクとした音のこと)の出現、といったものです。また、耳の前あたりや頬の部分に軽い痛みや違和感が現れることが多いです。
原因はさまざまですが、噛み合わせの不具合や、歯ぎしり、顎を食いしばる癖、外傷やストレスが関与することも考えられます。
ご自身でできる対応としては、硬い食物の摂取を避ける、顎のマッサージやストレッチ、ストレスの軽減などが効果的です。しかし、症状が続く場合や改善しない場合は、歯科や口腔外科への受診をおすすめします。緊急性はありませんので日中に受診してください。

耳の前が腫れていて押すと痛い症状で考えられる原因と対処法

耳の前が腫れていて押すと痛みが出る症状の場合、親知らずが原因となっている可能性があります。厳密には親知らずのせいで歯磨きできていない部分が虫歯、歯周病になり、炎症を起こす、という流れです。親知らずは「智歯」とも呼ばれ、この状態を智歯周囲炎といいます。
親知らずが半分ほどしか生えていなかったり、歯並びが悪かったりすると(真横に向いて生えるなど)、歯の周囲を清潔に保てなくなり、智歯周囲炎につながります。
ご自身でできる対応として、こまめに口をゆすいだり、歯ブラシだけでなくフロスも利用して親知らずの周囲の磨き残しを減らすことが重要です。
しかし、生え方によってはどうしても完璧には磨けない場合もあります。その場合は歯科医による定期的な歯のクリーニングが重要です。もちろん痛みや腫れといった症状が続く場合や改善しない場合も、歯科や口腔外科への受診が必要です。特に痛みや腫れが強くなっている場合は、抗生剤投与や抜歯が必要になるケースもありますので、早めに受診しましょう。

耳の前のしこりを押すと痛い症状で考えられる原因と対処法

耳の前のしこりを押すと痛い症状の場合、外耳炎の可能性があります。
ここでいう耳の前のしこりというのは、多くの場合、耳の穴の前方にある出っ張り(耳珠;じじゅ)をさして訴えられることが多いので、ここからは耳珠を押すと痛い場合として解説します。
外耳炎とは耳の外側から鼓膜までの部分で細菌感染が起きた状態です。特徴的な症状は、耳たぶを引っ張る、耳珠を圧迫すると痛みが出ることです。感染・炎症が強いと、独特な匂いの悪臭のある耳だれ(膿み)が見られます。
原因には、耳掃除を過剰に行っていること、アレルギー、脂漏性皮膚炎、イヤホンによる閉塞刺激などがあります。
治療は抗菌薬やステロイドの塗り薬を使うことが効果的です。ご自身でできることは、外耳炎にならないようにする予防のみであり、なってしまった場合は速やかに医療機関を受診しましょう。専門の診療科は耳鼻咽喉科です。
緊急性はありませんが、できるだけ早い日程で受診してください。

片方の耳の前を押すと痛い症状で考えられる原因と対処法

片方の耳の前を押すと、より痛みが出てくる症状を指します。このような場合、蜂窩織炎の可能性が考えられます。
蜂窩織炎とは、皮膚にできた傷から、皮膚の常在菌(健康な人でも常に存在する菌;普段は病気を引き起こすことはない)が侵入し、皮下組織まで感染を引き起こした状態です。どこでも蜂窩織炎はできてしまう可能性があり、耳の前あたりの皮膚で蜂窩織炎が起こることもあります。蜂窩織炎は基本的に、そのまま放置して治る病気ではありませんので、できるだけ早く病院を受診することを勧めます。
主な診療科は皮膚科です。膿が溜まっている場合は、皮膚を切開して膿を排出し、抗菌薬投与を行います。もし高熱が続き、病変が急速に広がっている場合は、ガス壊疽や壊死性筋膜炎という緊急疾患の可能性があります。夜間でも医療機関を受診するようにしてください。

すぐに病院へ行くべき「耳の前を押すと痛い」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

高熱が出て体が震えてしまう場合は、救急科へ

耳の前が腫れて押すと痛いだけでなく、さらに高熱も出て体が震えてしまう場合を指します。このような場合、先述の蜂窩織炎から炎症が全身に広がった可能性が考えられます。
基本的に耳の前が痛いだけでは、その部分に感染や炎症が限られていると考えますが、高熱や全身の震えまで発生していると、全身に広がってしまったと考えるのが一般的です。
この場合は、より緊急性が高く高度な治療を必要とすることが多いです。様子を見るのではなく救急外来を受診するようにしましょう。

受診・予防の目安となる「耳の前を押すと痛い」ときのセルフチェック法

  • 耳の前を押すと痛い以外に耳だれがある場合
  • 耳の前を押すと痛い以外に発熱がある場合
  • 耳の前を押すと痛い以外に歯茎の痛みがある場合

「耳の前を押すと痛い」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「耳の前を押すと痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

顎関節症

顎関節症とは、口を開け閉めする際の関節である顎関節や、その周辺の筋肉に起こる障害を指します。この疾患は、口を開ける、噛む、話すといった日常的な動作で、痛みや違和感を感じることが特徴的です。初期の段階では、耳の前あたりや頬の部分に軽い痛みや違和感が現れることが多いです。
顎関節症の原因はさまざまですが、歯の噛み合わせの不調、過度な歯ぎしりや顎を食いしばる癖、怪我や事故、さらにはストレスが関与することも考えられます。
症状が進行すると、口を大きく開けることが難しくなったり、顎の位置がずれてしまう場合もあります。また、耳鳴りや頭痛の原因にもなり得ます。
日常生活でのセルフケアとしては、硬い食物の摂取を避ける、顎のマッサージやストレッチ、ストレスの軽減などが効果的です。しかし、症状が続く場合や改善しない場合は、歯科や口腔外科への受診をおすすめします。緊急性はありませんので日中に受診してください。

親知らず

親知らずは「智歯」とも呼ばれます。最も後ろに生える大臼歯(奥歯)のことを指します。特に20代前後で生え始めることからこの名がつきました。しかし、成人してから生える位置やスペースの問題から、正常に生えることが難しくなることが多いです。
親知らずで頬や耳の前が痛くなる原因は、智歯周囲炎という状態に至っていることが多いです。親知らずが半分ほどしか生えていない状態や歯並びの問題で、歯の周囲に食べ物などが詰まりやすくなり、虫歯や歯茎の炎症につながりやすくなります。このため激しい痛みや腫れ、口の開きにくさなどの症状が現れることがあります。
この病気の原因は、当然親知らずの生え方や、口内が不衛生であることが挙げられます。
ご自身でできる対応としては、食事の際に詰まりやすい食材を避け、こまめに口をゆすぐことが効果的です。歯ブラシだけでなくフロスなども活用することも効果的です。
しかし、症状が続く場合や改善しない場合は、歯科や口腔外科への受診が必要です。特に痛みや腫れが強い場合、早めの治療(抗生剤投与や抜歯など)が重要ですので、早めに医療機関を受診しましょう。

耳下腺炎

耳下腺炎(流行性耳下腺炎)は、一般的には“おたふくかぜ”と呼ばれています。子供がかかるイメージが強いですが、大人でもかかることはあり、そして大人がかかった方が症状は重いです。
原因はムンプスウイルスというウイルス感染です。耳の前にある耳下腺に炎症が生じ、腫れや痛みを伴うことが特徴的です。両側の耳下腺の腫れが強いと、ほっぺたが大きく下方向に膨れたような形になるため、おたふくかぜと言われています。
ご自身でできる対応は、できる限り水分補給を安静にしておくことです。また、ワクチン接種をして予防しておくことも重要です。なぜなら治療が基本的に対症療法(辛い症状を和らげながら、時間経過とともに自己免疫力で治す方法)になるためです。あまりにも脱水症状が見られる場合は、点滴治療が必要になります。
高熱が続き脱水になって意識や受け答えが朦朧としている場合は、緊急性が高いので医療機関を早めに受診しましょう。

「耳の前を押すと痛い」ときの正しい対処法は?

耳の前を押すと痛い場合、ご自身でできる対処法というのは、実はありません。これまで紹介したうちでは、顎関節症を除いて基本的には医師や歯科医師の診察のもと、適切な対応が重要になります。自己判断や様子見をしてしまうと症状がより進行してしまう恐れがありますので、早めに医療機関で相談してみましょう。

「耳の前を押すと痛い」症状についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「耳の前を押すと痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

耳の前を押すと痛いときは何科の病院を受診すればいいですか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

まずは耳鼻科を受診しましょう。

耳の前を押すと痛いのですが自分でできる対処法はありますか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

ほとんどないです。顎関節症の場合は自分でのケアも重要になりますが、顎関節症の診断の際には、他の疾患でないことがわかっていることが条件になりますので、結局医療機関での診断が必要になります。

まとめ

耳の前を押すと痛い症状について解説しました。耳の前ということで耳鼻科疾患であることが多いですが、口腔疾患や皮膚疾患の可能性もあります。自己判断は非常に難しいので、早めに医療機関を受診するようにしてください。

「耳の前を押すと痛い」症状で考えられる病気

「耳の前を押すと痛い」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

耳鼻咽喉科の病気

皮膚科の病気

口腔外科、歯科の病気

耳の前の痛みといっても、口腔外科や皮膚科の病気も隠れています。症状が続く場合は早めに病院を受診してください。

「耳の前を押すと痛い」に似ている症状・関連する症状

「耳の前を押すと痛い」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 耳だれがある
  • 耳たぶを引っ張ると痛い
  • 顎の付け根を押すと痛い

耳の前の痛み以外にこれらの症状がある場合でも、外耳炎や耳下腺炎の可能性はあります。複数認める場合は一度医療機関で詳細に調べてもらいましょう。