「喉がかゆい」原因はご存知ですか?医師が監修!
喉のかゆみは風邪の初期症状やアレルギーによるものと軽視しがちですが、市販の薬だけでは対処しにくい病気の合図であることも考えられます。
症状が軽い段階では適正な判断ができないことがあるものの、併発する咳や痰などの原因を探っていくと対処法が絞りやすいです。
そこで以下では症状別に喉がかゆくなる原因を踏まえ、正しい対処方法をご紹介していきます。おすすめの市販薬や受診のタイミングも参考にしてください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
症状からみる喉がかゆい原因とその対処法は?
喉はあらゆる病気や症状の発生源となりやすいですが、かゆみと共に付随する症状を調べると原因が特定しやすくなります。ここでは喉のかゆみと併発しやすい症状ごとに場合分けをして、根本の原因と対処法をご紹介していきます。
喉の奥がかゆい原因と対処法
喉のかゆみだけが現れている場合は、風邪・アレルギー・感染症などの引き始めであることが考えられます。症状が進んでくると熱っぽさや痛みを伴うことがありますが、軽度な段階では特定の病気だと判断することは困難です。花粉や食べ物によるアレルギーであれば対処は行いやすいですが、特に根本原因がわからないときは喉を安静にし、水分を多くとるようにしましょう。
咳(せき)を伴う喉のかゆみの原因と対処法
咳が一時的に出るときは、特定のアレルゲンを取り込んでしまうことが原因となるケースが多いです。一方で断続的に咳が出てくる場合は、ウイルス性の炎症が起きている可能性が高くなってきます。基本的にはアレルギー性のときは「抗ヒスタミン剤」を服用することで炎症を抑えることが可能です。ただしウイルス性の場合は注意が必要で、一部のウイルスが脳や肝臓に影響を及ぼす「ライ症候群」の発症リスクが高まります。咳が出る原因が不明瞭であれば自己判断はせず、すぐに専門医を受診することをおすすめします。
痰を伴う喉のかゆみの原因と対処法
喉のかゆみと同時に痰にも悩まされる場合は副鼻腔炎を疑うのが一般的です。副鼻腔は鼻と喉をつないでいる部分で、鼻からウイルスや細菌が侵入したときに炎症を起こします。鼻水が喉のほうに流れ、粘膜を傷つけてしまうためかゆみが生じる仕組みです。程度にはよりますが、侵入した細菌を殺滅する抗菌薬と、溜まった痰を取り除く去痰剤を服用することで対処できます。一時的な症状であれば2週間程度で完治していきます。
喉がかゆい症状が現れる代表的な病気
喉のかゆみはウイルスや細菌によるアレルギー性のものから、何らかの病気の前触れとして発症するものなどさまざまなサインになっています。特に風邪と感じてやや軽視することも多いですが、喉のかゆみ以外に現れる症状へ目を向けると原因を特定しやすいです。ここでは代表的な病気を5つご紹介していきます。
食物アレルギー
食後30分以内に喉のかゆみが出てきたら、真っ先に食物アレルギーを疑いましょう。もともと血液検査などで、特定の食材にアレルギーがあることを把握している人であればすぐに反応を示します。ただし明確なアレルギーを持っていなくても、花粉症の人が野菜や果実を食べたときに誘発する「口腔アレルギー症候群」を発症する恐れがあります。これは食物のたんぱく質の構造が花粉の粒子と似ていることが原因です。特にトマト・りんご・スイカなどが危険とされています。もし発症した場合には原因の食材を摂取せず、抗アレルギー薬を服用して症状を抑えていきます。万が一呼吸が苦しくなり、意識が遠のくような感覚があればアナフィラキシーショックの可能性が非常に高いです。救急車を呼ぶなど、早急に治療を行ってください。
その他のアレルギー
もともと喘息持ちだったり、ハウスダストやダニなどに鼻炎の反応を示したりする人は、環境によって喉のかゆみを訴えることがあります。食物アレルギーと異なり通年症状を引き起こす可能性があるので、普段の生活環境からどれだけアレルゲンを排除できるかが重要です。また喉は消化器や呼吸器に関わる重要な器官なので、アレルギー反応を示しやすい部位でもあります。長期間喉のかゆみ・咳・鼻炎などに悩まされる場合は「抗ヒスタミン薬」が有効なので、精密なアレルギー検査のもと処方してもらうことをおすすめします。
咽頭炎
咽頭炎は鼻の奥から喉にかけて細菌性の炎症を起こしている状態を指します。喉のかゆみの他にも、痛み・腫れ・赤みなどさまざまな症状が見られます。通常喉の風邪を意味することが多いですが、突然食べ物を飲み込みづらくなったり、声を発しにくくなったりしたら急性咽頭炎を疑いましょう。症状が軽い段階で抗菌薬を投与すれば1週間以内に解消していくものの、慢性化していくと治療も厄介です。完治まで数か月必要とするケースもあるので、できるだけ早めの対処を心がけてください。また咽頭炎は過度なストレスや疲労によっても発症することが知られています。身体を酷使している人は、肉体的、精神的な休養も十分に確保しましょう。
扁桃炎
扁桃炎は喉のかゆみよりも、風邪のような発熱や倦怠感が強く現れる病気です。感染源がウイルスであるため、喉のかゆみだけではアレルギー性の反応だと軽視してしまうことがあります。しかし徐々に扁桃腺が肥大化していき、高熱が出る頃には全身の関節痛を引き起こすほど重症化してしまうので注意が必要です。また扁桃炎は人から人へ感染してしまうことから、看病の際もしっかりと対策を施さなければなりません。予防としては日頃から免疫力をつけてウイルスに負けないことが一番です。扁桃炎は特に慢性化しやすいので、少しでも喉に違和感を覚えたら耳鼻咽喉科や内科を受診するようにしてください。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は胃酸の逆流を防いでいる「下部食道括約筋」の機能が低下することで、喉の炎症を引き起こしています。これまでご紹介した病気と異なり、ウイルス性ではありません。根本の原因は食後すぐに横になることや、肥満や猫背などの体型によるものです。そのため対処法としては生活習慣を見直すことにあり、日常的にリスクを排除していく必要があります。脂っこいものを好んで食べて、よく胸焼けを起こす人は食生活を見直し、前傾姿勢の人は正しい姿勢を獲得することに注力していきましょう。診断では胃カメラを用いて食道の様子をうかがうことが一般的で、状況に応じて胃酸の分泌を抑える「PPI」という抑制薬を投与します。非常に再発しやすいので、できるだけ薬に頼らないような解消法を身に着けてください。
喉がかゆいときに使用できる市販薬は?
市販の薬で喉のかゆみを抑えたいときは、アレルギー性かウイルス性かを判断できるときに使用しましょう。アレルギー性のかゆみや咳に対しては、抗ヒスタミン剤が多く含まれた「アレグラ」が有名です。眠くなる副作用が軽減されているので、市販薬のなかでは安心して服用できます。同様に「アレジオン」もおすすめできますが、これらは風邪薬や酔い止め薬と合わせて服用しないようにしましょう。どの薬局でも購入できるので、発生初期の対応に取り入れてみてください。一方で原因がウイルス性だと疑われる際は、専門医を受診して適切な薬を処方してもらうことが最も安全です。市販では抗炎症作用のあるロキソプロフェンが配合された「ロキソニン」などが販売されていますが、ウイルス性感染症の場合には内服に注意との記載があります。これはウイルスが他の病気を併発しやすいこと、自己判断では誤った対処になりやすいことが理由です。そのためご自身のアレルギー症状を自覚しており、普段から対処方法が明確になっている場合のみ市販薬を用いましょう。
喉がかゆいときに受診する目安
喉がかゆいだけでは病名の判断がつきにくいですが、咳や痰が出て1週間以上改善が見込めないときは早めに受診することをおすすめします。診察は耳鼻咽喉科か内科で受けるのが一般的です。ただし食物アレルギーの場合は例外で、食後30分以内に喉のかゆみや息切れ、嘔吐などを起こしたら救急での対応が必要です。アナフィラキシーショックが疑われるときは命に関わってくるため、迷わず救急車を呼ぶようにしてください。
まとめ
喉のかゆみは花粉症やハウスダストなどの、アレルギーを抱えている人は頻繁に発症しやすいものです。また風邪の引き始めと判断し軽視しがちなこともありますが、重症化しやすい病気の前兆であることも想定されるため、簡単に見逃してはいけません。
なかには治療が遅れてしまうと慢性化しやすい「咽頭炎」や「扁桃炎」の可能性もあります。これらは喉のかゆみだけでなく、発熱・咳・倦怠感など併発する症状がより重くなってきます。
かゆみの原因が特定できないときは市販の薬に頼らず、早めに耳鼻咽喉科や内科を受診するようにしてください。