「胸が痛む」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
胸部には肺・心臓・脊椎と重要な器官が集中しているため、痛みがあるということはそのどこかに異常がある可能性が高いということになります。
痛みを感じた際、迷うのが救急車を呼ぶべきなのかということです。どういう痛みを感じた時に救急車を呼ぶべきなのかを知っておくと、いざという時に役に立つかもしれません。
ここでは、胸の痛みの原因と対処法を症状別に解説します。また、救急車を呼ぶべき症状についても解説するのでいざという時の参考にしてください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
胸の痛みの原因と対処法
胸の痛みの原因として考えられるのは、胸部の皮膚や筋膜などの表面的な器官か、心臓などの内臓のどちらかです。どちらが原因かは、胸の痛みがどんな痛みに感じられるかである程度の判断ができます。ここでは、胸の痛み方を5つに分けて原因と対処法について解説します。
締め付けられるような胸の痛みの原因と対処法
まず、締め付けられるような胸の痛みがある場合です。この場合恐ろしいのが狭心症または心筋梗塞が原因である時でしょう。狭心症は動脈硬化が原因で起きる病気で、発作が起こるのは階段を上がるなど血圧や脈拍が上がる場面に多くみられます。特徴的な胸の締め付けられるような痛みや圧迫感は、ほとんどが数分で治まってしまいます。発作が起きたらなるべく呼吸がしやすいように上衣のボタンを外し、その場で安静にしましょう。ただし、数分で発作が治まったからといって放置しても良いわけではありません。また再発する恐れが十分にあるため、医療機関で検査を受けるようにしましょう。心筋梗塞、特に急性心筋梗塞は血栓が急にできて冠動脈が詰まることで起こります。狭心症は一時的な発作が多いのに対して心筋梗塞は30分以上安静にしていても症状が治まりません。心筋梗塞が疑われる場合には、早急に救急外来を受診してください。
ピリピリした局所的な胸の痛みの原因と対処法
ピリピリとした電気のような痛みが起きた場合は、肋間神経痛が起きている可能性があります。肋間神経痛は、肋骨に沿って走る肋間神経が痛んでいる時に出る痛みのことです。内臓の痛みと違い、肋骨に沿った鋭いピリピリとした痛みが特徴的です。また、上半身のどちらかだけに起き、胸の両側が痛いということはあまりありません。肋間神経痛はさまざまな病気の症状の1つに過ぎず、治療にはまず原因となる病気を治さなければいけません。原因となる病気は胸椎椎間板ヘルニアや脊椎腫瘍などの脊椎に関する病気と、帯状疱疹です。また、外傷によって肋骨を骨折した際にも肋間神経痛が起こる可能性があります。
食後に胸が痛む症状の原因と対処法
食後にだけ胸が痛む症状の原因として、逆流性食道炎という病気があります。逆流性食道炎というと、胸が痛むという症状はあまり聞き慣れないかもしれません。しかし、逆流性食道炎でも胸の痛みを感じることがあります。逆流性食道炎が進行すると、食道の粘膜が胃酸によって炎症を起こします。その状態で食物が通ると、食道が痛むことで食後にのみ痛むという仕組みです。食後に口の中に酸っぱさがこみ上げてきたり、胸が焼けたりするような感覚がある場合は逆流性食道炎の疑いがあるため、医療機関を受診するようにしましょう。
左右に胸の痛みがある症状の原因と対処法
心臓や食道など胸に位置する臓器が原因の場合、胸のどちらかだけが痛む場合が多いです。しかし左右両方に胸の痛みがある場合、両方の肺を覆う薄い膜に炎症が起きている可能性があります。これを胸膜炎と呼びます。原因は細菌やウイルス感染が多く、抗菌薬での治療が多いです。
胸の真ん中が痛む症状の原因と対処法
胸の真ん中には臓器・神経・骨など様々な器官が集中しています。そのため、胸の真ん中が痛む場合、心疾患・神経痛・肋骨の骨折など様々な病気の可能性があります。自覚症状だけでは判断がつきにくい場合が多いです。深刻な病気の初期症状が隠れている疑いがあるため、医療機関を受診するようにしましょう。
救急車を呼ぶべき目安とは?
胸が痛むからといって、救急車を呼ぶべきかどうか迷うかもしれません。基本的に胸痛が起きた場合は救急車を呼ぶべきですが、中でも救急車を呼ぶべき胸痛の症状があります。
- 激しい痛み
- 締め付けられる・圧迫される痛みが30分以上
- 突然息切れや呼吸困難
- 痛む部分が移動した
- 気を失った
これらの症状は、胸痛の中でも深刻な病気である心筋梗塞・大動脈解離・肺血栓塞栓症の症状の可能性が高いでしょう。すぐに救急車を呼ぶようにしましょう。
胸の痛みが出やすい病気
ここからは胸の痛みが症状として出やすい代表的な病気を4つ解説します。中でもすぐに治療を受けるべき重大な病気は心筋梗塞と大動脈解離です。
心筋梗塞
心筋梗塞の原因は、成人病の1つである動脈硬化です。突然激しい胸の痛みが20分以上続くという大きな特徴があるため、この症状が出たら必ず救急車を呼ぶべきでしょう。また、この痛みは数時間経つと引いていきます。しかしこれは症状が治まったのではなく、心筋細胞が壊死してしまい痛みを感じることができなくなったからです。壊死の範囲が広がってしまうと心不全を起こし、場合によっては死に至ります。激しい胸の痛みを感じたら、すぐに救急車を呼ぶようにしましょう。
狭心症
狭心症は、心臓に十分な酸素が行き届かなくなることで起きる病気です。仕組みとしては心筋梗塞に似ていますが、心筋梗塞は血流が塞がった状態です。狭心症はまだ血流があるため、心筋細胞は壊死していません。しかし、十分な酸素が行き届かないことは確かです。この状態では心筋が血液を送り出すために活発に働くことができません。そのため、階段を上がったり心拍数が上がったりすると発作を起こしてしまいます。また就寝中などに発作が起こる安静時狭心症や、心筋梗塞の前ぶれともいえる不安定性狭心症など運動の有無にかかわらず発症する狭心症もあります。
大動脈解離
大動脈解離の主な症状は胸と背中の痛みです。大動脈の中膜が破れ、血管壁に血液が流れ込み通り道が2つできた状態になります。これによって前触れ無く胸と背中が激しく痛み、動脈の血管壁が破裂しやすい状態になります。また、血管壁が破裂し血流障害が起きる影響で、あらゆる臓器への血流が滞り多くの症状をきたすこともあるため、他の病気だと疑われることもあり注意が必要です。大きな特徴である胸と背中の激しい痛みを感じたら、必ず救急車を呼ぶようにしましょう。
肋間神経痛
肋間神経痛は、肋骨に走る肋間神経が何らかの病気もしくは外傷によって痛むことで起こります。原因がある場合は「症候性肋間神経痛」と呼ばれ、特に原因がわからないものが「突発性肋間神経痛」と呼ばれています。症候性肋間神経痛の原因は、変形性脊椎症・胸椎椎間板ヘルニア・脊椎腫瘍などの脊椎に関する病気です。これらの原因を治療しないと肋間神経痛の症状は治まりません。ただし、肋間神経痛の症状自体は、消炎鎮痛薬を内服し対処することで和らげることができるでしょう。
胸の痛みを伴う女性特有の病気
胸の痛みにも女性特有の病気があります。ホルモンバランスが崩れたり、乳腺炎が起こっていたりという症状で胸が痛むことがあります。この場合痛むことが多いのが乳房の周辺です。代表的なのが乳腺炎や乳腺症で、乳腺炎は主に授乳中の妊婦に多く放置すると発熱や倦怠感などの症状を併発する可能性があります。授乳中に胸の痛みを感じた場合は、婦人科の担当医に相談するようにしましょう。乳腺症は胸を触った際にしこりを伴う事が多いです。乳房の痛みと共にこういった特徴がある場合は、婦人科や乳腺科を受診するようにしましょう。もししこりなどがなく、生理前に乳房周辺が痛くなる場合はホルモンバランスの影響の可能性が高いです。生理が終わると症状が治まることが多いため、ほとんどの方は気にしないことが多いですが、気になる方は婦人科に相談してみると良いでしょう。
まとめ
胸には生命維持に重要な臓器や器官が位置しています。そのため、胸に痛みを生じた場合は、程度に関わらず医療機関を受診するようにしましょう。
激しい痛みを伴う場合は、救急車を呼ぶようにしましょう。心筋梗塞など命に関わる病気の可能性が高いです。
もし周りにいる方で明らかに通常とは違う胸の痛みを訴えている場合は、救急車を呼んであげてください。本人だけでは救急車を呼べない可能性があります。